生まれ変わった穢れ
次の50年へ踏み込もうとNo.1に言われた、すぐに分かったことは300年ほど前に起きたデモ隊と国同士の戦いが50年続いたことだけ、だがそれをまた見ようとでも言っているのだろうか?
「いや〜……俺は差別への復讐とかそういうのはさ」
「周りはそれを見たいらしいけど、僕は違う!あえていうなら僕も裏切り者だよ」
「言ってる意味がわかんねぇし、それに俺はあんたの仲間になる気はない!」
楽ができるなら話は別だがこの流れだといつもみたいに涙流して拷問並みの痛み、もしくは大きな何かを失うかもしれない。
と決めつけたのが一番の過ちだった、後悔は時間も何も返してはくれないものだと実感する。
「やっぱこっちのが君にとって幸せかな?」
手をこちらに向けて何故かにやけた、今の俺は魔力があるのかもわからないので殺そうと思えばいつでも殺されてしまうような状態だ、そもそも何でこんなに弱くなったかもわからない。
「おい、せめて話し合わないか?」
話に応じる気もないようでもう俺は死ぬのを我慢するしかない、だって不死があるんだから。
数秒間すると俺の魂というものが存在している感覚が消えたのと同時に、転生する前の過去が頭に流れてから悪趣味であるせいか記憶が食われた。
過去に何故ハートが起きたのか明かされぬまま地球は平穏を迎えていたが、あの時地球では能力を持っていたのは大統領だけでなくNo.1もだったのだ。
「ちょ、何するんですか」
突然肩を掴まれたかと思えば転移する時の黒い魔力が二人を飲み込んだ、気づけばここは王都の井戸近くだった。
「君実はさっき敵に記憶を消されちゃったんだ!簡潔に話して良いよね?」
困惑の中必死に出したものが一度の頷きだった、それをしてからは笑顔で話してくれるようになった。
「僕は妹の骨を見つけるため長期的な戦いをしているんだ」
「はい」
「それで君は色々あって仲間になったんだ、そこまでは覚えて欲しい」
「うん」
「偉いぞ」
頭を撫でられると不意にも嬉しいと感じた、ずっと褒められることがなかったから本能的に求めていたことをされて嬉しいのだろう。
「あの目標を叶えるにはラヴィニアファミリーに会いに行く必要がある」
「そうなんですね」
今エネスはラヴィニアのボスと結婚しているがその記憶も忘れてしまっている、なので結婚相手との交渉は上手く進むか分からない。
「とりあえず話を合わせればいいですか?」
「泣かないで黙り込んでてくれれば良いよ」
「この目標は全体的に……どれくらいで終わるんですか?」
「五日」
(それくらい簡単なことなのかな)
内容は面白そうで長そうだったのにたったの五日かよ、と思って話も終わるとまた二人は魔力に包まれ転移した。
気づけばそこはこの前自分を攫ったラヴィニアファミリーの館であった、最初は門番にライフルを向けられたが俺の顔を見たら一礼して通してくれた。
「なにか縁があるのかな?」
「ほんの少しですよ」
部屋の位置を知っているかのようにNo.1がどんどん進んでいく、最後に辿り着いたのは服装は変わらないが顔はこの前と大きく異なったラヴィニアがいたが、記憶もないのでそれが普通なのだと思っている。
「おぉ!エネスか!」
「俺はエネスの連れだ、話をしたい」
「は?……まぁいいよ、内容言えよ」
最初は機嫌のいいラヴィニアだがやはり予想外だったのか初めて現れた名前も知らないやつが話しかけてきたもんで、きっと興味がないまたは連れなのはいいが対価を求めづらいと言う点が気に食わないのだろう。
「そこの狼借りていいか?」
「何を企んでる?内容によっちゃ敵に回すことになる」
「名前だけ伝えるよ、僕は盛江 秀治」
ラヴィニアが黙り込み突然魔力壁を秀治以外に張ると獣人の耳元で何かを伝えると、明るい笑顔になった。
「そういうことか、伝説でも作ってこいよ」
「当たり前だ」
二人は何話しているんだ?あんな何かを察したような目だとか伝説を作るだとか、自分のことをどれほど脇役だと思っているかよく分かる。
「それじゃあこれをもう一つ作ってくれ」
獣人がNo.1の出した大きな銃のようなものを複製してくれた、もしかしたらあの奈落にいた勇者の剣を持つ大量の魔物たちは、こいつに?
言った通り獣人はちゃんと複製してくれたが、数を言ってないのに2個分と分かったのは普通にすごいと思う。
「次は牢獄に行く」
「何をするんですか?」
「価値のない者を、役に立たせてあげるんだ」
完璧な悪のセリフを放っていたが、こいつからしたら完全に悪以上でも以下でもないものと言ったら妹以外の全てなのかもしれない。
またあの黒い魔力が二人を飲み込むと天界の牢獄の最下層にいた、ここは鉄を背負ったあの魔族がいる場所だ。
案の定あの魔族を誘っていた。
「よぉ剛鉄」
「やっとこの時が来たか!長いんだよお前はー!それと久しぶり」
まだ内容も聞いていないのにこちらもすぐに承諾してきた、まさか自分の知らないところで全てのことは回っているのじゃないのか?と思ったがそれよりもエネスに久しぶりと魔族は聞いているのでそちらを見てみようじゃないか。
「……初めまして」
やはりエネスはハートという正体不明の病として語られたものにかかった、というよりかはかけられていた。
さすがはNo.1というべきか、事の進みかたが尋常じゃない。
「容赦ないな!まだこんな……」
「どうせ不死だ、この年から見た目は変わらなくなる」
「はぁ……シスコンなのは悪くないが、妹が今のお前を見たら泣くぜ?」
そう言われるとNo.1は複製してもらった銃のような何かを向けた、それに怯えて手を上げて諦めたように頷いた。
「明日の夜、僕は王都の英雄像で待つことにするよ」
魔族は頷くとスマホを取り出し誰かに焦って連絡した、それに気づいていながら二人は止めずに次の目的地に飛んだ。
場所はどこかの聖堂の中だった。
「さっきからこの少しの出来事に追いつけてないだろ?」
「それは、そうですね」
「君はこれだけ覚えてくれ、地球の勇者を殺せ」
「はぁ……」
地球の勇者がどんな見た目だったかも忘れてしまっているのでかなり高難易度でありそもそも今は見つける方法すらも忘れてしまっているので無理難題だ。
実際今地球の勇者はA/1というミサイル処理のため王都にある軍事基地にいるがその情報は教えられるのだろうか。
「もし出会えばでいい、どうせ……誰も勝てやしない」
「そんな相手を?やれるとこまで頑張りますけども」
俺はその目で地球の勇者の実力を見たが本気すらも出さず深淵にいる冥王:ミミックにランダム転移魔法を使わせた、あの一国を滅ぼせる魔物をあんなに恐れさせるということはと考えれば力は良くわかるはずだ。
今この世界で覚えてる人間はいないに等しいほどだが、地球の勇者がNo.1を見たら激怒してしまうだろう、理由は昔に起きた全世界の命を巻き込んだ無差別な殺生や目的を見失った最高司令官などなど、国側の問題とデモ隊側の矛盾に怒りを覚えていてそぬ全ての始まりは地球に現れた魔法使い。
まぁそれは大統領が全て悪かったが今生きてるのはデモ隊の中でも最古参のNo.1と、No.2の人造天使だけで全てのきっかけはデモ隊の思想にあると決めた、それが地球の勇者だ。
「あと四日後の夕暮れ、その時に君は王都西門にある塔鐘にシールドをずっと張ってくれ、余裕があれば軍人を殺して欲しい」
「分かりましたよ、もう大丈夫ですか?」
「いいぞ、またな」
地面に吸い込まれるように溶けるように消えていく、それを俺は見終わった後聖堂の扉を開けるとハンマーのように棒の先に丸い鉄のついた兵士が俺に襲いかかってきた。
「脱獄犯!今なら痛みも与えない、大人しく死ね!」
まだ名前すらも思い出せていない俺に対してこの世界はあまりにも無常だった、自分が脱獄犯だということに疑問を持ちながらもなんとか言い返そうとしたが、言い訳すらも思いつかない。
少しずつ離れて思いっきり後ろへ走って逃げると案外簡単に撒くことができた、これは作戦のうちでもないのだろうし追いかける気もなかったんじゃないのかと感じた。
「もう、なんなんだよ」
きっと人違いで殺されかけていたのだと、そういうことにして大きな王都を歩いた。
途中で腹が空いたので何か買って食べようとしたが、金をかけたくなかったので路地裏にあるゴミ箱の中に手を突っ込んでレストランの残飯を食った。
いつもならこうではないが過去の記憶しかないからこんなになってしまったのだ、そのせいで今はなんとも思わなくなっている。
自分はなんとなく路地裏を歩いているとやはり獣人目当てに体を食わせ生きながらえるやつや、黄奈立で作られた合成麻薬など犯罪ではないがあまりいい印象は貰えないようなことをしてる人間がよくいる場所だった。
俺の見た目は16歳で止まったが舐められ俺に合成麻薬を脅すような形で売るクズはいなかった、きっと昔に俺TUEEでこういうやつらを倒したことがあるのだろう、否定はできない説だ。
「よぉ、旅人だろ?それも遠くから来た……一体どこの血筋の人間だ?」
興味を示して柄の悪い男がそう聞いてきたもんで答えてやろうとした、俺はルペラ家の者だと普通なら答えられていたのだろうがそれすらも思い出せない。
「……分からないです」
「ははーん、そういうことなら俺も深くは聞かないさ」
多分だが俺は孤児と勘違いされていて少し気の毒な奴だとでも思われているのだろう、だがそれも否定はできない脳になってしまっている。
(誰も俺を教えてくれないのか?)
寝ても覚めても殺し合いが広がる世界で、それに加えて旅人のことを覚えている人間なんて仲間か親友または親だけだ、案外覚えてくれてる人はいるがエネスの村は時間停止を使う少年に皆が殺されているので父親とライム以外誰も生きてはいない。
そしてそのライムは何故か俺から隠れるように何かの研究を魔力暴走が永遠に起こる地でしているらしく、父であるリデス・ルペラは大遠征で昔王都周辺で幻影竜を一時的に封印するために最前線で戦わされていた、そのため二人とも生きている確率はとても少ないのであった。
「まぁそんな顔すんなって、頑張れよ」
「……」
黙り込みながらまた歩き始めた、自分の心の中では暴れるように憂鬱という言葉をなにかが繰り返し吐けというかのように呟く。
才能も何もない俺はこの世界から省かれるような存在で当然なんだと自分で自分を責めるように考えてしまう、理由はきっと過去にたいする覚えてはいないが実際に体験したという事実へだろう。
まったく、自分はどこまで行ってもどれだけ時間が経とうとこんな生産性のないゴミなのだろうか。
(奴隷売ってないかな〜)
昔に格安のすぐに死んでしまうような、何か与えても死んでしまう奴隷を買っては数日喋って見殺しにしていた記憶がある、いつもあいつらを買って話していたのは火葬場近くだった。
それを軽く思い出すだけで結局今に繋がって生きていけるような脳ではなかった、やはり奴隷は人権がなくても自分と似た存在なのだと気づく。
「おっ……あったあった」
昔はよく獣人しか並んでいなかったが今となれば人も奴隷として売られているのかと謎の感心があった、ここがどこなのかもあまり分からないがあぁいう即席牢を見るとまだ現実なのだと再確認できた。
(あれマジな半竜じゃね?)
半竜つまりは竜人という完全なドラゴンよりも弱いが人間の10倍は強い人種が奴隷として売られていた、王都で売れば何億と出すやつは少なくは無いだろうし俺にあれは荷が重いし買えない。
他のやつを買おうと見てみると人魚や半狼などの安い人種がいた、皆目を合わせると怯えてそれでも殺されないために買って欲しそうな目をする、まるで躾がなってない。
(あー……買う気になれん)
性奴隷という通常より高いが余裕で買えるのもいたが、どれだけ質がよくても昔の記憶しか残っていなくても何かが自分を止める、ライムと一緒にいた時よくあったこのままだと自分じゃなくなる気がするというそれだった。
よくそんなでここまで旅を進められたものだ。
(ていうか、戦争って続いてるのか?まぁすぐ分かるか)
10何年前かに今の人生の父親に戦争は続いているか聞いたことがある、あの時戦争はもう終わっていると言っていたが一応天使と悪魔の戦争が今も行われている、そろそろ終盤に差し掛かっている頃だろう。
何をしようにも何も好きになれていない、そのせいで何かをする気にもなれない。
ずっと歩いていると今度は苔が少し生えた噴水近くに軍人がいつもとは違って完全に武装した状態で警備をしていた、ちなみに軍人一人で子竜は殺せるほどの強さを持っている。
「対象チェック、相撃D班構え!」
突然皆が俺を睨んだと思えば皆が銃を下におろし三歩下がる、すると何かのゴーグルをつけた。
「え、何ですか急に?」
「牽制!」
戸惑いつつも質問すると空から人が俺の頭を降下しながらライフルで撃ち抜き、最後に俺の腹をハンマーで叩き砕いた。
声も出さずに死ぬと周りは冷たい目で俺を見て去った、すぐに死体処理をする者が来るだろうと察したので蘇生した。
「全鬼一弾ずつ時計回りに放て!」
そうリーダーである者が命令すると建物の隙間から一発ライフルの弾が飛び、また俺の頭を撃ち抜き殺した。
そして蘇生というのを繰り返すとようやく魔力壁を張ることができた、殺されてる最中は怒り以外の感情は生まれてこなかった。
天使であろうが人であろうがいつも俺を突然殺してくるし、理由は全て自分の国のためだとか何だとかで殺すのはダメだと言われる方が無理がある。
「白髪の軍人さん、これ以上の攻撃はやめてください」
次攻撃してきたら皆を何があっても殺すことになってしまう、人を殺したことはないがここだけはどんな罪を被せられようとも逃げられないのだし正しい判断をしたことになる。
誰かに批判されようとも自分がそれを許すんだから別に俺は何とも思わなかった。
「血撃層閻魔!」
白髪のリーダーがそういうと今度は……とうとう封印魔法を使ってきた。
前は下位の封印魔法だったからすぐに壊せたが今回は上手くいかずという感じだった、封印されている間は何も感じることはないが時は感じるという拷問に変わりはない、封印はそもそも封印をした人間が死ぬまで続くと考えたら気が狂いそうだ。
(……)
目は白目をむき封印された空間の中をふよふよと漂う、まるで埃のような存在になっていた時外では今こうなっていた。
「デモ隊の切り札は本当にこの人だったんでしょうか……」
「この者かNo.3のどちらかだ、もしくは」
「こんな争いに大悪魔は来ませんよ」
「そうですよね」
No.3といえばあの超怪力のどんなものも殴り飛ばしていたあのハゲ男だ、あいつのせいで囚人はほとんどが逃げていった、そして大悪魔は皆覚えていると思うがライムが任命した始まりの司教達である大罪を広めるために生まれたもの達だ。
だが大悪魔達は自由になりすぎたせいで悍ましいことをする奴もいれば行き場を失った者を救うやつがいるらしい、エネスが今まで出会ったのは暴食と傲慢だけだった。
暴食を殺したのはゼーレだが本当の力も自分の武器も使わずだったので二人の本当の力は見ることができなかった。
大罪の大悪魔がこの件に関わるとしたら面白半分できたか、自分に深く関わるようなことだろう。
「国も苦労するよな、王族の血を引いているからと言って死体を奪いにくる奴がいて、渡したいが渡せないという国民によるただの強欲さが身を滅ぼすのだから」
「隊長、やっぱり他の国にも加勢してもらった方がいいかと」
「そんなものはいらん、相手は想定3人だぞ?」
まさかこちらの味方の数まで把握されているとは思っていなかった、エネスに声は聞こえていないが何故3人と分かったのか知りたいくらいであった。
3人に対して他の国から加勢をしてもらった方がいいと言ったやつは馬鹿なのか?この王都はそこらの国と違って何年も訓練され実戦した者しか集められない軍もありとにかく強いのだ。
「ですがもう一人の勇者の前例だってありますよ?」
「それは勇者だ、まぁ今までNo.1は正当なことしかしなかったのだし、今回は何かの手違いだろう」
「じゃあ先ほど封印したのに意味はないのでは?」
「国からの命令は全て意味がある」
勇者の前例は数えきれないほどあるのは分かるが俺をそんなのと比べたりしないでほしい、それに国からの命令であんなことをするのは軍人としてどうなのだろうかと存在意義をもう一度聞いてみたいくらいだ。
ほんのうっすらと見えていた光景が徐々に黒へと染まっていく、もう外の光景は見れなくってしまうのだと考えたら寂しさもあるがそれはつまりあと少しで考え事ができなくなると言うこと、何も感じないでこの空間に閉じ込められると言うことは痛みもその分感じないのだ。
前なら悲しんでいたが今となるとこれが幸せに変換されたような気分だった。
目を閉じようとすると突然目の前からまた光が現れ始めた、そこにはノナカ・ハルトが現れ皆に何かを話すと笑顔で俺の封印を解いた。
「久しぶり!と話をしたいけど時間がない」
「え、いや名前も知らないし突然なんですか?」
「は?」
「もういいですか?」
「……」
ノナカはとても急いで俺に話をしたかったのだろうが俺の記憶の欠陥を知らない、それには気づけていなく俺の言葉にフリーズしたままだ、本当の俺だったら全て覚えていたのに。
エネスの言葉を聞いて目には色がなくなり絶望したようだった。
「いやいや、何言って……」
「僕は帰りますね」
「……俺はお前のために頑張った、でもお前はどうだ?何も知らずに人に迷惑をかけて生きて、何かこの人生で成し遂げた事はあったか?ゼーレのようになれるようなことを」
「いきなりなんですか?そもそもゼーレって誰ですか……人違いですってば!」
俺からしたら訳のわからないことを言われたがノナカは今にも泣きそうな顔をしてそう言う、きっともうノハカは俺のために何回も死んでやり直しやっと俺の封印を解けたのだろうが、俺の反応はこれだ。
さらにはゼーレという俺の冤罪を晴らして俺のために大悪魔を倒してくれた英雄の存在も忘れてしまっていて、軍人達も少し引いてヤバすぎだろみたいな白い目を向けてくる。
俺は思った、本当はあの時No.1の言っていた無くした記憶の内容は嘘なんじゃないのかと、俺はただ利用されてるだけにすぎないんじゃないのかと。
「何でですか!俺は何もしてませんって!」
皆の目がエネスは気に入らなかった、これは当然の理不尽な結果であり見ず知らずの人間を信用してここまで来た自分のせいだ。
「なぁ、エネス……本当に……本当に覚えてないのかよ!」
「エネスって、そもそも誰ですか?」
俺のこの言葉がやっと皆に自分が記憶を無くされたことに気づかせることができた、この言葉を聞くと数人が涙を流してノナカは部屋に置いていた仮面を被り地面に倒れるように仰向けになり黙り込んだ。
本当なら自分はなんて愚かなんだろうと考えていたが何でこいつからが泣くんだよ、と相手に哀れみをかけるような困惑があった。
「なんか、すみません」
エネスはこの一件で裏で軍人達はNo.一を止めるために何十人と犠牲が出てノナカは40回死んだ、それを知る事は今後もなかったが初めてエネスを見た軍人が泣いている理由はそれだった。
どうしてあんなに仲の良かった戦友がこんな何も知らない奴に命をかけて勝てるはずもない相手に……何でこんな奴に、と後悔よりも思い絶望よりもさらに深く自分に刺さる悲しみが皆の心を苦しませていた。