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幻想は程遠く  作者: しばしば星
嫌いな世界を愛すため
12/16

骨を刺すもう一つの世界

目覚めの悪い朝を何とか乗り切りルニアに感謝の言葉の1つくらい伝えてまた旅に出ようとして部屋を出ると夜とは違って、怪獣や機械などいろいろなものが廊下を走り笑顔を浮かべていた。


(ライムはこの場所を知ってるか?)

(さぁな、俺も初めてここを見たよ)


大悪魔や信徒をまとめていた人間ならルニアの家の場所くらい分かっていても当たり前と思っていたがその本人であるライムが覚えていないらしく最近できた施設なのだろうか?


「おはよう!」

「おはようございます!」


スーツを着たルニアが数人の子供をどこかに連れて行くのだろう、ただ今のエネスは子供のことよりスーツを着た可愛すぎるルニアに目が釘付けになっていたがきっとこれで会う事はないだろうと考えると寂しくもあった。


「今回は泊めていただきありがとうございました」

「そういえば今日行っちゃうんだもんね、またいつか会えたら泊まってね!」

「その時はありがたく泊めさせてもらいます」


ルニアが微笑みを浮かべ廊下を進んで手を振っていた、自分も帰ろうと思ったがここからどうやって帰ればいいのか悩んでいると猫耳丸機械が自分のズボンを引っ張り今度はどこかに連れて行ってくれるのかと流されるようについていった。


到着した場所はたったひとつの扉が置かれた庭だった、猫耳丸機械が扉を開きエネスの事を魔力が辺りを照らす幻想的な洞窟に突き飛ばした。


「いきなりなんだよ!」


無言で扉を勢いよく閉められ扉が光と共に消えてしまった、まずはここがどこなのか地図の所有者であるライムに聞いてみる事にした。


「ここどこか分かるか?」

(ここは深淵第二層だ……)


まず深淵とは何かと思うだろうがこの世界には秘境や魔境と言えるような場所が存在していて、ここは一度入れば出るのは不可能と言われた魔物の召喚でできた大穴である。


悲しい事にここは王都から近くはあるがもう外には出られないと言う事だ、深淵に来た人間達は自殺願望を持つ人間か深淵第6層に住まう冥王:ミミックを拝むか実力のあるものは殺して何かを手にするかのどちらかだろう。


「は!?陸ホタテ一緒に探してくれ!」

(見つかった時には深淵の毒で死んでるだろ)

「そんなこと言ってたらマジで死ぬからな!」


深淵の魔物を一掃するために地球の今は存在しない国がミサイルをこの大穴の奥深くへと打ったがそれが魔物達の逆鱗に触れここからそう遠くない国が滅ぼされた歴史がある。


その核汚染を和らげるために使うのが一度その場に生まれたらそこで一生を過ごす陸ホタテを持っている布マスクの中に詰め使うのどちらかで毒を無効化させる事ができる。


「深淵は来たことある?」

(信徒は言ったことあるらしいよ、深淵三層で道に迷って化け物の溜まり場に迷い込んだらしいけど)

「うわマジか、あ!いたいた!」


陸ホタテがスライムに突かれていてすぐにそっちへ向かいスライムをどかして中身を開けてみると、何だか予想してた中身とは違ってまるで鉱石のようだった。


(これがホタテなのか?)


陸ホタテの間であるはずの部分を取ってスライムの体から粘液を少し取り身にスライム粘液を付けフードの中に入れた、この身はとても強力で半径3メートル以内なら全ての核汚染を無効化する。


「完成したぞ!」

(でもこの後どこに行くの?)

「とりあえずそこらへん歩き回るよ」


深淵は地球にいた最後の勇者と深く関わりがあるとも言われていて第一層の汚染は酷いものではなく、国が勇者に関わる書物や勇者の魔力塊などの貴重な物は全て持って行ったので第二層からは未開拓の地とも言える。


「スライムって踏んでも痛みは感じない?」

(あいつらは物理攻撃に強いし痛みは感じないよ)


スライムが何十匹も溜まった人工的に広げられたような空間の奥にある狭い道の奥には何かある気がして、スライムを踏みながらそこまで行くと滝が流れていてここの空気中の魔力は濃いが空気に圧が流れるように突然体が重く感じた。


この狭い洞窟の道を進むと前に見えたのはとても広い部屋でそこには地球の勇者が使っていた勇者の剣を持った小さな黒い翼を生やした何かが何十匹もいてこちらに気づくと全員が青白い熱線を放ってきた。


(あの剣って本物なの!?)

(オーラからして本物をコピーする能力を持った奴が間違えて勇者の剣を大量に作りだしあそこに捨てたら魔物が湧いたんだろ)


結局生態系を壊すのはいつも人間であるがあの魔物の集団はずっとあの部屋に留まっている気がして何らかの理由か、コピー能力を持った奴が捨てる時に剣に対して制約をかけ魔物があそこに留まっているかのどちらかであろう。


しばらく走ると洞窟なのに向日葵に限りなく近い花の畑がありその中へ入り込み隠れるとアニメなどのあるあるでは魔物たちは去っていくはずだった、だが現実的に考えたのか剣から火焔を放射してエネスの服の端が少し焦げてしまった。


(第二層なのにこんな危ないのか……)

(勇者がこの大穴に訪れては魔物や魔族に戦い方を教えてたらしいからな)


エネスも勇者同様地球の日本出身だったがまさか勇者がそんな反国的な人間だとは思わず少し呆れたが、どこかの小説には勇者の今までを直接インタビューしたものがあり人間の味方をしないのも頷けはする。


だがゆだ(優香)の思いは皆が争わない事であるのにそんな魔物を育てるという矛盾じみた考えは一体どこから生まれたのだろう。


※カオスハート-dawnに優香パーティーの全てと勇者の作り上げたく今も求めた平和の世界が書かれている。


近くに滝が流れる深淵の中の川がありその中に飛び込んだ、剣の魔物は畑を燃やすのに忙しく見つけられなくなり諦めて帰ったようだ。


「帰り方知らないんだよね?」

(一度入れば出られないからね)


深淵は第1層までなら上がって帰れるが二層から一層のゾーンに入ると核や魔力融合など様々な物が混ざり脳を腐らせ死んでしまうのだ。


「こんな事ならついて行かなければ良かった……」


今になって初めてあの猫を殺したくなってきた、いやあれは機械だから殺さないがただ殺したいの一言しか今はなかった。


(深淵の魔族に帰る方法聞いてみれば)

(そいつはどこなんすかね……)


魔族がこんな所で生きていられるとは思えないし、生きていたとしたら理性のない半分化け物のようなものになっているだろう、ライムは簡単に言うが場所を知ってから言って欲しいものだ。


「くかわろ?」


以前出会った異形と同じ言葉を発していてまた何かを訴えているようだが今回の異形は敵意があり手に噛み付いてきた。


これは大悪魔に姿を歪められたのではなく奈落で死んだ後に魂が奈落の魔力により人ならざるものへと変わり果ててしまったのだろう、だが帰れぬ旅を望んだ人間なのだからこれも一つの運命であると自分の人生に悔いは残さずに来たのだろうから殺しやすい。


(あんま痛くないな)


手が噛まれているような状態だが牙と言える歯が見当たらなくたまに痛いな程度で苦しむ要素はなかった、一撃で頭から真っ二つにして手の怪我を確認してみたが唾液が付いた程度で済んでいた。


(逃げてくな)


異形が飛び跳ねるようにどこかへ逃げていくと自分の腕が腫れてきている気がした。


「痛くはないのになんかおかしいな」


何気ないことのように思った2秒後に自分の手が破裂した、それは恐ろしく突然の出来事で悲鳴を上げる気がしたのだが痛みよりも痺れの方が大きくなり、もしかしたら蚊と同じで痛みをなくすような何かを注入されたのだろう。


相手は異形で元は人間だから能力でやられた可能性が高くあり、治すのはとても困難であるのに加えここが深淵というのも重なりエネスの不死で一度死ぬのが一番の最善策だが死ぬのは怖いという単純すぎる理由が自分の死を拒む。


(痛くないのかよ!)

(痛くないけど、痺れてて動かないんだよね)

(うわぁ……麻酔が切れたらめっちゃ痛いだろうな)


ライムは理由を何となく理解してこの後の事を考えると見ていられないような惨状を目にする事を覚悟していた。


体に浅く毒が回り始めたのか脚に力が入らなくなりその場に座った、息も苦しくなるとだんだん視界が血に染まり気づけば身体中の穴から血が垂れ出て内臓が溶け始めていた。


(俺は死ぬのか?)

(かもな……でも痛みがないまま死ねればまだ幸運だろ)

(死ぬのはどちらかというと不幸だろ……)


ライムと話しているがもう考える気力も出なくなり耳からどろっとした肉が流れ出始めるとやっと痛みを感じてきたがこの段階まできて仕舞えば、叫ぶなんてことも忘れてしまっていた。


この様子を見た異形が好奇に思いこちらへ忍足で寄ると腹を抉るように食事始め最悪な光景を見ようと思ったが目が溶け始めもう何も見えなくなったがまだ意識がある。


しばらく経つとやっと死ぬことができ不死の能力が発動すると反射的に敵の頭を剣で跳ね飛ばした。


「もう絶対油断しないからなぁ!」


異形を炎で焼き尽くすと骨が見えたが元は人だとは思えないような骨が見えてきて気味が悪くなり大穴の下を目指した。


道中魔力と核に汚染された黒い花が錆びた人工物である何かを覆っていたり、カビが人型の魔物を覆いその状態から崩れぬように骨の栄養までも吸い取ろうとしている口径が良く見えた。


空から降る光は辺りを薄く照らし太陽の光が周りに飛ぶ物質が交わり白色へと微妙に変化しているのが見えた、これは第三層へと突入した合図である。


(勇者が今も滞在してるで噂の第三層か)

(その勇者って地球の?それともリンワットの?)

(地球の勇者だね)


地球の勇者は元々1000年は生きることができるとされる長寿の者であるが、地球とリンワットの融合が起きた時に能力を手に入れ不老持ちなのだとか。


地球の勇者の名はフォレンで、そのフォレンは人間の信用を無くし深淵に長いこと留まり核を受けてもなお生き続ける人間の敵として有名だ。


だが敵になった理由は勇者のくせに戦わないからという酷い理由で勝手に敵にされてしまったのだがそもそも勇者が今まで戦ってきたのは人間しかいなくそれこそ勇者からすれば人間は敵だ。


辺りを眺めていると頭上からあたりの光を吸収するような純黒の鎧を中途半端に着たスライムが落ちてきた。


「あなたは人ですか?」

「え?あぁ……はい」


魔物が喋るのは珍しい事じゃないからと言ってもこんな質問には驚いてしまうだろう、どこからどう見ても外見は人間なのに魔物なのかと聞かれれば馬鹿にしているのかとも思える。


「そうですか、ならば4層に入ったばかりの所に扉を用意しますのでそちらへ入ってください」

「行かないとダメなんですか?」

「行かないならば最悪な目に遭いますよ、もちろん不死のあなたが恐れるようなことが起きます」


もう自分の能力はバレているようでそれを踏まえた上で恐ろしい事をされるのだから行かなければならない、きっと爪剥ぎや苦悩の梨または歯を抜かれるのどちらか全ての可能性だって捨て切れない。


(行かないとダメなやつ?)

(当たり前だ)

「じゃあ行きますよ」


スライムが笑顔を見せ自分の着ていた鎧を砕き体の中に入れ地面の中へ溶けるようにどこかへ行ってしまった。


仕方なくため息を吐き下へと向かうのだが、何か大きな歯車を回したような気がして今も逃げ出したいの一心が自分の中でぐるぐると回っていた。


「何で行かないとダメなんだよ〜」

(審判のスライムに逆らえば何されるかなんて考えたくもない)

「強いって事なのか……」


脅されてはいなかったようだが実質脅しのようなものだったらしく、先ほどの返答は最善だったらしい。


この大穴に朝夜の時間の概念が薄れているのか時間がかなり経っても暗くはならないし、場所によっては上の光を見てみると空間が歪み少し明るさを失っているように見える、このもう一つの世界には混沌という言葉がお似合いだ。


「何で勇者は深淵に住んでるんだ?」


勇者という肩書きを持っているだけで国からの補助金だとか自分で魔物を殺せば殺すほど金をもらえるだろうに何故自分から危なく人の立ち入らないような場所へ飛び込んだのかよく分からなかった。


(いろんな説があるが……俺も納得できる情報は何一つとして聞いたことがない、例えば自国賛美動画作ってる奴らの動画では隣国を滅ぼすためだとか、リーデデモ隊は世界を滅ぼすためだとか)

「うわぁ……そういう奴らってめっちゃいるけど、俺の転生する前にいた国でもその賛美動画の全て信じる奴らいたよ」

(やっぱネットは怖いなぁ)


今はそんな動画を作る知識があってもアプリもないし容量もない、だから動画を撮ってZで投稿する程度のことしかできない。


だがそれはそれで自国を賛美する代わりに他国を批判することなく今のネット内ではとても良い感じに均衡が保たれ、もう一生あの時代には戻りたくないとも思えるほど平和になっている。


階段を降りていると光が地面を目指し突き刺すような場所の近くにイカの触手を緑色に染めたような何かがうねりその中心では目玉が辺りを見渡し食べ物が来るのを探しているのだろう。


そいつはこちらを見ると触手を目では追いかけられないようなスピードでいつの間にか目の前まで触手を突き立て今にも自分を殺そうとして走馬灯が見えかけた、だが剣でその触手を切ったのだが剣が溶けたのだった。


物理でダメなら魔法をと思い火球を放とうとするとライムに止められた。


(あいつは俺が作り出した悪魔のうち一匹だ!そいつら全員に魔法耐性を最大までかけてある!)

(何やってんだよ!)


ライムの事を殴ってやりたかったが魂から出られないという事もあり今も目玉とは睨み合っている。


(逃げるんだ!)


この階段を降りるというよりかは落ちるを主にイメージしながら下ると触手が自分の足元から生え、避けようと体を捻ったが横から触手が飛んできて押し潰された。


だがこれくらいで死ぬほど自分もやわじゃないと心の中では思い目玉が見えなくなるくらいまで必死に降りると、今度はスケルトンキングが5体も自分がここまで来る事を待ち侘びていたかのように襲いかかってきた。


「どうなってんだぁ!」


地上にいた時はこんなに連続で化け物に会う事も戦った事もなくまさしく最悪を具現化したような光景だった、スケルトンキング達の後ろに階段がありそこまで飛び跳ねている最中下から砂の刃が飛んできて腕が切られ地面に音を立てて落ちた。


エネスは痛さに負けて階段に落ちると転がり落ち骨が折れる音と何かをぐしゃぐしゃと踏む音が聞こえ悲鳴をあげて涙を流し家に帰りたいと願った……これは人の本能なのかエネスには家があるが家族はもう離れ離れと言って良い状態で、それでいてもまだ帰りたいと願っていた。


今回は痛みがはっきりと身体中に流れるように渡りライムが何かを言うが全く聞き取れないしそれどころではなかった。


痛さが治り始めると体の隅々が筋肉痛と骨折さらには風を引いたりなどの様々な不幸が自分を襲い、不幸の波に疲れたのかその悲惨な目にあった痛みも辛さも一度寝て忘れる事にした。


疲れていると良く寝ることができて夢の後半は集団で清志郎の取り巻きに集団で暴力を振るわれると言う最悪なシーンだった。


目を覚ますと誰かが自分を助けてくれていた〜等のあるあるは起きていなく一度誰かに呪い殺され眠るように死んだのか体の痛みが消えて再生していた。


「これでまた再開できるな」

(そうだけどな……)

「え?」

(いや、この話は地上に出たら話すよ)


深刻な何かというわけではない何か些細な事だろう、そんな気がしたので今はまだ聞かない事にしておいた。


狭い階段を降り続けるとそこには赤い雫が凍らせられたかのように閉じ込められた結晶でできた大きな道であり、伝説によるとクリスタルドラゴンがいるようないないような。


この輝かしい道を過ぎると第四層がすぐ目の前にあるのだがクリスタルドラゴンが闇属性と超臨界流体を魔力暴走状態の空間に起きる周囲の物体に吸い付く一言で表すとヤバいものを纏っていた、こんなヤバいものを纏っていながらも痛がる素振りも見せず強がっているように見えなかった。


まず勝てるわけもないので様子を見てから奥の第四層を通る事にした、周りを見ても何か踏んで音が立つ事もないし他の生物は食われたのか見当たらず、クリスタルドラゴンは自分の魔力量が多すぎ制御もできないせいで自分の事を見つける事はできないだろう。


(障害物もないし静かに行けば大丈夫だなぁ……簡単すぎないか?ラッキー♪)


今まで出会った魔物の中で一番強く桁外れな者でも幸運が訪れればなんとか絶体絶命をひっくり返せるもんなんやなぁ、と思い魔力を抑えに抑えクラスの影が薄過ぎるやつのようになり隣を通り過ぎようとした。


すると上からこの前出会ったスライムが落ちてきてクリスタルドラゴンの頭を棒で叩き起こした、次に会う機会があったら絶対に殺す事にした。


(は?)


クリスタルドラゴンが口から結晶を粉々にした粒子を吐き出してこれは有名なクリスタルブレスで、吸い込めば結晶の魔力で自分の魔力が使えなくなり肺が破け時間が経てば体が動かせなくなる。


この知識は昔にこの世界をまとめた1000ページは超える図鑑で見たことがあり鼻を手で押さえ口を塞ぎ目を閉じた、何も見えはしないがこのまま真っ直ぐ走れば第四層なので全魔力を足に注ぐよう意識して走ると背中を結晶でできた尻尾で切り裂かれたが浅く、まだ悲鳴をあげて苦痛に耐える必要を無くした。


なんとか第四層に入るとクリスタルドラゴンは小さい獲物を狙うのがめんどくさくなったのかまた眠りについた。


「死ぬかと思ったぁ!」

(いつも死にかけてて大変そうだな)

「全部猫のせいだ!」


まだあの丸機械猫を忘れてはおらず壊してやりたかったがルニアの仲間で手出しができず悔しいまま終わりそうだった。


「おめでとうございます!そしてすみませんでした」

「おう死ね」


スライムが地面から生えるように現れると謝ってはくれて敵意はないようだがあんな酷い目に合わせてくれたのだからこれくらい言われる覚悟は持っているだろう、と格上の相手に文句を言ったが全く動じていなくもっと文句を言ってやりたかった。


「本当にすみませんでした、ちゃんとこちらも誠意を見せるべくプレゼントを用意しておりますのでどうかお許しください」

(潔すぎじゃね?)

「別に良いですけど」


こんなに何かを計画しているのかと疑うような潔さには驚かされたが、謝り以外で罪を償わせる理由もないだろうし許す事にした。


「そう言ってくれるとありがたいです、それでは私についてきてください」

(なんなんあいつ?)

(何したいんだろうな)


2人は心の中で愚痴を言っているが強い魔物からのプレゼントだ、きっと良いものが貰えるに違いないと着いていくと小さな灰色に染まった道を通り始めた。


この道を通っていると徐々に道が大きくなり始め白くなって死んだようなチューリップや彼岸花が咲き乱れていた、幻想的な光景はいつ見ても癒され嫌な事を忘れられる良い場所であった。


スライムが止まると目の前にはレッドワイン色の木でできた扉が洞窟に嵌めたように付けられてあり、裏ボスへの扉を見ているようでワクワクしてスライムに感謝の気持ちも現れたがまださっきのことは完全には許せていなかった。


スライムの頭から触手が生え始めて扉を開けるとベットに鎧を着たまま寝転がっている人間がいたのだが顔が隠れていて見ることができない。


「初めまして」

「君が人間だね?初めまして」


本棚には日記だけが大量に入っていて長い時を過ごしてきたのがよくわかった、こんな最低で残酷な世界を長い時の中で生きてきたと言うのならばこのスライムよりも強い事は確かだろう。


「あ、はい」

「一つ聞きたいんだ、君はモンスターという存在をどう思っている?」


きっとこの質問で自分の生死を決められるのをなんとなく察して何千年も生きてきたライムにどう答えれば良いか聞いて見る事にした。


(なんて答えれば良いんだ!?)

(あいつは勇者だろうし……敵って答えれば良いんじゃね?)

(やっぱり勇者だったんか)


まず鎧を一目見て勇者なんだろうなとは思っていたが本当にそうだとは思っていなく焦ったが答えは決まったも同然敵と答えるしかなかった。


「敵っす!」

「……じゃあ君はもし子供が目の前で殺されそうになっていたら助けるか?」

「助けますね」


この重圧感漂う質問は少し長引くかもしれないが必ず相手の思う正解を当てる事にした、今のところ勇者は怒っている様子も見せていないしまだ大丈夫であろうはずだ。


「もしそれが魔物だったら助けるか?」

「いえ助けません」

「…………正直な回答ありがとう、同族を助けたいと願う思いはあるようだ」


勇者が魔物の味方でも勇者にとって今の同族、いや味方は魔物でありどうしても味方が殺されそうになれば必ず助けてしまうのは仕方のないことと理解しているようだ。


「最後の質問だ、君は人間と魔物どっちが好きだ」

「え……」


この質問をしてくる事は予想していなくともなんとか答えようとしたが自分的にはどちらにも良いところはありどちらも最悪の種族と知っていて、なんだか選ぶことができずに悩んでしまっていた。


今までいじめられ虐待も受けてきたのだからその反応は当然の事だろう。


「君はさっき人を助けるとは言ったが自分の中ではどちらも嫌いでどちらも好きと言う、結局は決めることのできない心を持っているのだろう?」

「まぁ、そうですけど」


勇者はエネスの反応を見ると無反応であったが隣にいたスライムは笑顔だった。


「君では少し不安だが一緒にA/1のデータを消してはくれないか?」

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