「少年が復讐を果たして、星を脱する話」
人類が惑星を飛び出し、すでに1000年以上たっており、地球がどういうところかオレは知らないが、とてもいいところだとは聞いた。
オレには到底、手が出せないが地球への旅行資金をためて、苦労してる母に訪れさせてやりたい。
まぁ、そんなの夢のまた夢、スペースオックスの牧場暮らしに過ぎないオレは日々の仕事に忙しくて、とてもそんな余裕はないが。
死んだオヤジはかつては宇宙船乗りだったけど、今は埃をかぶったスペースガンしか残っちゃいない。
遺産を残してくれりゃ楽だったんだがな……かつてにあった個人用宇宙船も売り払って牧場の資金にしちまったらしい。
最近、俺たちの星域にもスペースゴブリン団が現れだしているようで、物価も高くなってきている。
おかげでスペースオックスの餌やら食料、燃料などが高くなったおかげで、こちらも資金繰りが厳しくなってきた。
しかも、質の悪い無法者たちまで村に流れてきたから困ったもんだ……。
一組でも厄介なのに、複数組まで流れてきやがった。
おかげで、村の連中も家の中にこもって出てこない……活気のあった村も静かなものだ。
俺も荷物を下ろしたので足早に牧場に戻ることにした。
†
――ある日、母が死んだ。
オレが風邪をひいて寝込んでいたから代わりに町へ荷下ろしにいってもらったとき無法者たちの撃ちあいに巻き込まれたからだ。
そのうえ、牧場に強盗が入り、大事なスペースオックスも盗まれちまった。
買い戻すための金もない……。
オレは隠していたスペースガンを持ち出した。
もうオレには何もない……だが、せめてあいつ等を殺さないと気が済まない。
それからのことはあまり覚えていない。
オレはあいつらがたむろっている酒場に残りこみ、夢中のまま銃を撃ち、勝った。
たなんで勝てたかはわからない。
あいつらが油断していたためか、オレが夢中で撃ったのがよかったのか。
オレは撃たれた脚を抑えながら、牧場へと帰りついた。
すべてが終わってから、ズボンが濡れていることに気づいた……どうやら漏らしていたようだ。
いまさらながら手足が震え、コスモガンが酷く重い。
思わずコスモガンを落として、へたり込んでしまった。
歯の根がかみ合わない。
もう死んでもいいと思ってたけど、……やっぱり怖い。
一通り震えたオレは、これからのことについて考えた。
ここにいたらやつらの仲間が追ってくるだろう。
捕まったらどうなるか、考えるのすら恐ろしい。
かといって、ここで生活するには資金もなにもない……。
死ぬのは……怖い。
もう残された手は1つ……物資輸送用の宇宙船に乗ってこの星を脱出するしかない。
でも、ここから去っていくのもやはり怖い……。
震えてる手元に視線を落とすと、スペースガンがあった。
「あんたの父ちゃんは立派な宇宙船乗りだったの」
母の言葉を思い出す。
そうだ、オレの父は宇宙船乗りだ。
ならば、オレだってその血が流れているんだ、きっと子ことを旅立ってやっていける。
オレは自分の頬を張り直し、応急処置を施すと、荷物をまとめて牧場を後にするのだった。