きっと行くから待っててね
今日はクリスマス。
目覚めた子供たちの枕元にはサンタさんからのプレゼント。箱を開けて喜ぶ声が、あちこちから聞こえてくる。そんな朝のこと。
仕事を終えて眠るサンタさんのおうちでは、ちょっと変わった子が窓の外をじっと見ていた。
体は雪、両手は木の枝で出来ていて、氷のマントを身につけた彼の頭は、かぼちゃだった。
彼の名前は「らんたん」。
かつてはハロウィンの飾りだった彼。今は雪だるまになり、サンタ見習いとして一緒に暮らしているのだ。
(しくしく……しくしく)
誰だろう?
どこかから子供の泣き声が聞こえてくる。
小さな小さな声に耳をすますと……
(ボクのところにはサンタさんが来てくれなかったよ〜)
いけない。プレゼントを届けわすれてしまったようだ。
あわてて地下の倉庫へ見に行くと、リボンで飾り付けられた箱が1つ残っていた。
「あれ?おうちがないぞ。引っ越してしまったのかな?」
昨夜のサンタさんの言葉を思い出す。
家がみつからず持ち帰ったプレゼントだった。急いで届けてあげないと。
でも、寝ているサンタさんを起こすのはかわいそう。そう思ったらんたんは、プレゼントを持つと家を飛び出した。
ところが、外はあいにくの吹雪。体の小さならんたんは、風に飛ばされそうになったり、雪に埋もれたり……となかなか前へ進めない。
あぶないよ、と心配で追いかけてきたトナカイが、らんたんのマントをくわえて引きとめる。それでも先へ行こうともがく姿にやれやれと首を振ったトナカイは、背中に彼を乗せると空にむかって走り出した。
吹雪の雪山、雪の空。
ヒントは声だけ、地図は無し。
危険がいっぱい、未知の旅。
まだソリに乗ることが出来ないサンタ見習いのらんたんだけど、トナカイと一緒に空を駆け、声を頼りにプレゼントを届ける旅に出かけたのだった。
久しぶりの「らんたん」シリーズ最新作です。
「冬の童話」に向けた作品で、いつもより少し長いお話になっています。
楽しんでいただけたら幸いです。