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皇后として


王太子の誕生で表向きは平穏なヴァレイアル王国に。

突如として訪れる危機

王宮に帝国軍が乱入し、王が捕らえられたと警護兵からの知らせが王妃宮に電光石火もたらされた。


メヌエットは大慌てで身支度を整え、王女の部屋に入った。

寝ている王女の衣装を手早く寝間着から部屋着に着替えさせる。

王女はまだ夢の中でなすがまま、いつものいやいや攻撃はなりをひそめかえって、支度がしやすくほっとする。

その時王女の部屋の扉が乱暴に開けられる。


おそかったか!

メヌエットは動くを止め、寝ている王女の抱え込み、腕には短剣を忍ばせてなんとか王女を守ろうとした。

しかし目に飛び込んだのは王妃と女官長、護衛であろう騎士のマクシミリアンだった。


助かった!


「さあ~~早く。

 ここを出るのです。」


王妃に続きメヌエットは王女を抱き上げて皆で王妃の寝室へ向かう。

都合よく隣部屋で素早く移動できた事も幸いした。


王妃は寝台の横に置かれたテーブルの引き出しを外し、手を奥への差し入れる。

一番奥をめいいっぱい指で押すと、テーブルの左側が右へ移動した。

その先に下へと下る階段が見える。 


「さあぁ早く。

 ここから逃げるのです。」


人が一人ようやく通れる階段を四人は落ちないように下っていく。

時に螺旋、一直線になる階段の最後に巨大な岩が塞いでいる。

もうだめか!メヌエットとマクシミリアンは覚悟した。

しかしここで王妃は自分のネックレスの装飾の中で小さな鍵型の細工を乱暴に引きちぎると岩の割れ目に差し込んだ。


ぎいィ~~~~という音と共に岩がガタッと外れ人が通れる隙間が現れた。


「この先は二人で王女を連れていきなさい。

 後のことは任せなさい。

 王女を頼みましたよ」


「王妃陛下!共に参りましょう」


こんな状況で滅亡した国の王妃など何をされるかわからない。


処刑かよくて貴人の慰め者にされるかだ。

妾妃か臣下の妾か平民に降格か、実家に戻されるかだが王妃の実家はもはやない。

二つに一つの選択肢かないのは世の王朝の常だからだ。

メヌエットは懇願する。

「まだ国王陛下と王太子殿下が逃げられていません。

 大丈夫です。後に続きますから」


そう言い残すと来た道をアルビラと共に引き返しいってしまった。


「王妃様!」


メヌエットが絶叫するが王妃は振り返らない。全て任せたと言わんばかりに。



**********************************************



エルミエ王女を逃亡させた後、王妃派いつも間にか雨が振り激しい風の中にいた。


あの子は二人が守るから大丈夫。

私からのいいつけを厳守して必ず再会出来る。

パルミラルは確信していた。

あの子の強運と二人の忠義心を。



間違いなく目的を果たすため足早に宮殿に戻り、女官を総動員して身支度を整える。

宝冠を被り正装した王妃の美しさに傍に仕えた全ての使用人は息をのんだ。

走ったために高揚した頬、白い磁器の様な肌に豪華な装飾品が飾られる。

自身も着替え終わったアルビラが伝えた。


「王妃陛下参りましょう。 

 皇帝陛下がお待ちです。」


アルビラが急がせる。

皇帝陛下が入場して一時が過ぎていた。今回の総仕上げの劇の幕があがる。

今までなんども通った謁見の間への廊下が長く感じた。

同じ道のり、同じ風景なのにこんなに長かったのか。

これはこれからの重責のためかもしれないわ。

パルラミルは思う。


「王妃陛下御入場」 


高らかに帝国の宣言者により呼ばれる。

重い扉が開かれてその場にいる全ての注目を集める。

静かに靴の踵の音が響き渡る。ゆっくりと玉座へ進みよる。


「皇帝陛下にご挨拶申し上げす。」


目の前にほぼ2年ぶりの皇帝が熱い眼差しで自分を見つめている。勝者である自分をかみしめる。


「王妃よ。いや我が皇后よ。

 皆ここに宣言するかの人こそ我が皇后である。」


その時その一言で宮廷人はざわつきはじめた。

それは当然だ。


滅亡された国の王妃を滅亡させた国の皇后にするのは利にかなわない。

皇帝は色香に惑わされたとしか思えない。

そう考えた者が多かった。

しかしセヴェイはさらに美しくなったパルミラルに満足している。

どんなに家臣に反対されようがしない選択肢はなかった。


手をとりその白い手に口つけ、隣にある皇后の玉座に座らせる。

静かに威厳を持ちそこに座った。


その時、寝ている王太子は乳母の腕に抱かれ玉座に運ばれ皇帝の前に差し出された。


皇帝が乳母から腕に抱き愛しそうに眺めている。

この場の目撃者全員が知るこの王太子は皇帝の息子であることを認識するには十分すぎる演出だった。


皇帝と腕にいる王太子の顔に瓜二つであるの事実を知ったのだった。


「我が皇太子である。」

「王国帝国の繁栄に万歳!!!」


臣下は声を揃えたたえた。


皇帝皇后の二人は自分たちの計画が見事に成功したことを実感しお互いを愛おしそうに微笑んだ。


その時アルフォンスが皇帝に耳打ちする。


「国王を確保し目を覚ましたので、このままガイゼディア峡谷にあるガイゼ城の地下監獄に監禁いたします。

 あえて暗殺や処刑はしないほうがよいでしょう。病死が一番最適です。」


事務的に報告する。

「お前を敵にしなくて本当によかったよ。」

皇帝は安堵するようにつぶやく。

「当然です。」

生意気な口調も彼は許されている信頼度が垣間見れる。

皇帝はすでに計画を皇后に報告済なのであえて伝言しなかったし、本人もまったく問題視していなかった。 


翌早朝反王妃派の貴族、聖職者、役人事前にリストアップされた人物は裁判もなく、即日処刑されてしまった。

その害は親族にも及び多くの惨劇が繰り広げられた。


取り上げられた権利と金品はただちに次の権力者に引き継がれ、宮廷の混乱はまったくおこらなかったし隣国も無関心を装った。


次は我が国そんな恐ろしい想像が出きるのは当然なものだった。

多くの血が流され帝国はさらなる発展を進めることに成功する。

その実績は皇帝皇后がもたらしたもので民衆は歓喜する。

すべては問題なく終え、皇帝はしばらく王宮に滞在する事になった。


「さて皇后。王女はどうしたのだ?

 そういえば王女の事は何一つ聞いていないな。」


今は主の変わった王の寝室で二人っきりで葡萄酒を飲んで歓談していた皇帝はふと気になり皇后に問う。


「あの子は隠しました。

 絶対に探せない。

 自分自身が誰の子であったか。

 存在しないように。

 大丈夫ですわ。すべて。」


余裕のある様子で、少し違和感はあったがすでに皇后を評価していた皇帝はあまり気に留めなかった。 


「君のする事に不都合はないさ。」


二人は二年ぶりの再会に溺れるかの様に激しく口つけをかわし求め合った。


混乱の一か月後前皇后は離宮を離れいくつかの私邸を手放し、一つ地方に残した屋敷で一人寂しく世を去った。

死因は自殺であった。

終焉の地の村人は病弱だが優しい皇后に涙し、村の教会に埋葬すると手を合わせ名もない花を具え魂の鎮魂を行ったという。



その後クーデターの後しばらくはヴェレイアル王国で皇帝と共に滞在し指揮を執った。


しかしすでにある程度寵臣を確保していたので、引き継ぎ事項だけで済んだおかげで6か月で帝都へ入宮出来た。

そのあとが大変だ。

突如現れた皇太子と隣国の元王妃が帝国の皇后陛になって現れたのだ。


しかも皇后に御前会議、政務に参加させると皇帝が宣言したのだからしばらくは粛清に大変だった。


反対する貴族達を宮廷内で孤立させて、それでも敵意を隠そうとしない勢力には徹底的に排除した。

つまり処刑した。

それは内宮も同じで、女官から召使、下女にいたるまで皇后の権威を誇示し、服従した者には最大の利益も約束した。

そのため統制には時間はかからなかった。


半年後には内宮のほぼ全てはアルビラが統率し、ある程度の采配を許可していた。

その分政務に専念できるので動きやすく、宮廷内外に影響力は巨大になる。アルビラはついに帝国の内宮の女官長に出世したのだ。


執務室の扉から

「女官長 アルビラ・ディラ・ファルラン伯爵夫人」


扉が開き、美しく着飾ったアルビラが入場すると深々と皇后に礼をする。

王国の男爵夫人から帝国の伯爵夫人へ昇進していた。


「この度は皇后陛下におかれまして、多分な恩寵を真にありがとうございます。

 一族このうえない幸せに感謝申し上げます。


 なお一層の帝国の繁栄に貢献したく存じます」

皇后は少し微笑んでアルビラを見る。

椅子から立ち、アルビラの傍に寄っていく。


「乳母

 あなたがいなければ、何事も出来なかった。

 私こそ感謝しています。

 そこでその労をねぎらいたいので、東部の保養地

 ヴェロナスに城を購入しました。

 十日ほど休暇を与えます。

ゆっくりしてきてください」


十日間ほどこの十日という日数は見事な日数だった。

長すぎず短すぎず、これは本当に労をねぎらうという意図が見える。

皇后のアルビラを知り尽くしたものだった。


「皇后陛下

 感謝いたします。

 それと例のお子様はいかがお過ごしですか?」


皇后の目は節目がちになり、その目を細めながらゆっくりと少し軽蔑を籠めながら。


「旧ファルキアの子爵家で苦労しているようですよ」

と何事もないとばかりに答えた。

アルビラはこれまで見せた事のないほど、にっこりと微笑んで皇后のスカートに手に口づけした。


「これほどの幸せは感じた事はありません

 皇后陛下に幸あれ」


アルビラが宮廷から保養地へ移動した後、皇后はすばやく自身はいつも通りの日常を過ごした。


しかし速やかに行動に出る。

まずは女官達に慰労の贈物を用意にその中で、最もアルビラの懐柔を受けていない下位の女官の中から事前に手引した者に手紙を入れておく。

手紙は女官から諜報員に渡され、足がつかないように何度も人の手を通す。

伝書鳩を最終の送り手にしメヌエットに届けされた。


気をつける村での行動、注意すべき人物の行動と言動、、王女の近況、何度もお茶を嗜む事が綴られていた。


アルビラには王女は敵対するドディア皇国の悪名高いランドルフ子爵家で下女として働いている。

子爵家は使用人に対しては少しの失態も許さず、過失があるとそれがどのような理由でも体罰を加える。

時に激しすぎて絶命しても病死と称し死体が家族の元に届けられるも少なくなかった。

そんな悪名は帝国でも知られる。

近況を知りたいはずだから、必ず獅子家に諜報員を派遣するはず。

皇后はアルビラが激しく王女を憎んでいたのは知っていた。

なので間違いなく探すだろうと、皇后は抜かりなく対策を講じた。


アルフォンスに秘密裏の命じ同じ年の少女で面立ちの似た者を探し出し、瞳の色と神の色を薬で変えて出国させた。


当然行先はドディア皇国の悪名高いランドルフ子爵家だ。

少女の親は十三人もの子をかかえ、父親には仕事はなく今日の食事にも困るありさまだった。

両親は一度は拒否したが、あくまで取引条件を釣り上げる方法によるものだ。


皇后はこの一家にスラムからの脱出、地方への移住、毎日の生活、親兄弟の面倒を見るという条件を承諾した。

*********************************************


一方のアルビラは

アルビラはヴェロナスの保養地から十日後に宮廷に戻った。

「なんだか。戻ってきてからお肌の艶が増して若返りましね。

 それともあちらで良い方が出来たのかしら?」


 珍しく皇后がアルビラを冷やかしている。


 「皇后様

  確かにヴェロナスの湯は体に良く体調はよいで

  すが。

  そういうものではありません。

  ただ私も亡き夫との子供達は皆独立し、皇帝皇

  后さまの厚いご厚意でそれぞれの人生を送って

  おります。私は年寄りの独り身。これからが心

   配です。

  保養地でよくしてくれた伯爵の推薦で、後継者

  を一人養子を迎えたいと存じます。

  まずは皇后様のご意見を頂きたく。

  いかがでしょうか?」


 皇后は不意を突かれたような顔をして、一瞬顔をしかめる。

 少し頭を傾けてから、静かに答えた。


 「皇帝陛下には私がお伝えしましょう。

 アルビラがそういうならきっと素晴らしい人材な

 のでしょう。

  陛下にも頃あいを見て、取り立てていただける

 ように計らいましょう。」


 アルビラは大笑いしそうな口元を固く結び、権力を手に入れた勝者だけが見せる笑いを浮かべながら深々とお辞儀をした。

 屋敷に戻ったアルビラは待たせていたベルナード・ディア・ファルランとなった息子ベルナードに皇后から後継者としてほぼ確定した事、これから宮廷の公職も得られる旨を報告した。

 ベルナードはアルビラが亡き夫との間に出来た長男だった。

 外見は夫に似たためアルビラの子とは考えにくく、どちらかというと愛人に間違えられるような

 色気があった。

  実際高級娼婦やヴェレイアル王国の貴族婦人の愛人になり、賭け事に酒に溺れていたヴェロナスでアルビラの愛人となるべく近付いた時に再会したのだった。

 皇后に報告したように当地の領地を持つ伯爵に金を積み後見人を頼んだのだ。

王女エルミエは王宮を逃れ命を繋ぐ。

その後皇后の思惑は?


本編はムーンライトで公開中すでに完結です。

https://novel18.syosetu.com/n7622ip/

お立ち寄りくださいませ。

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