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公女から王妃に皇后へ

ムーンライトで執筆し完結した「皇后の愛と復讐と…それは 全てはこの日のために」の部分切り張りして編集したものをUPしました。


本編は

https://novel18.syosetu.com/n7622ip/で是非お立ち寄りくださいませ

その夜帝都フェレは雪が深々と降り積もり欲望と堕落、嫉妬あらゆる負の言葉を覆い尽くさんとばかりに全てを隠そうとしていた。

ヴァレン川西域に佇む皇帝の宮殿は闇夜の中でも存在感を主張し、この世の富が注がれた様な豪華な装飾で飾られ皇帝の権威を誇示している。


その宮殿の皇族が使用するプライベートルームの一室の寝台は月明かりに照らされ、淫らに体を寄せある二つの影がほのかに揺れている。

深紅で整えられた女性用の寝台に天蓋がかけられ薄いベールに閉ざされていたが、中から吐息とシーツの動く音が闇夜を裂く。


「ふぁあ~へ・・陛…」


女が声にならない声

男はその赤い唇を己のそれで閉ざした。

女は吐息を塞がれ欲望を吐き出す事が出来ず、体中に電流が流れているのかと思えたほど激しく痙攣する。

男は貪りつくそうとばかり欲望の限りを女にぶつける。

月明かりに男女二人の姿がわずかに照らさる。

女の淡いブロンドの長い髪は乱れ、白い肌に汗に濡れて密着していて、一切まとわない姿で男にしがみついている。

男は筋肉質でありながらすらりとし白い体を女に押し当てている。

ひんやりとした女の肌に熱い男の肌がその温度を移して同化していく。

のどの奥で二人の吐息が一体となり、体の奥の強い欲望を共有する。

男はその唇を女から外し、意地悪く微笑んだ。


「ヴェレイアル王妃素晴らしい。余はこれほどの欲情を感じられる事はなかったな」


男の声は重厚で心地いいもののわずかに怒りを感じるものだった。


「陛下。私たち夫婦はすでにそういう関係ではございません。あくまで…」

女はいたずらっぽく、魅惑的な蜜を浴びた音で答える。


「陛下か。あなたにはセヴェイと呼んでほしい」

セヴェイと名乗った男は真剣な眼差しで女の柔らかな髪を手で救い上げその髪にキスをする。

女はいたずら好きな子供が見せるくすっとした微笑みをしたかと思うと、セヴィエの腹に乗って体位を替えちょうど騎乗したような態勢になり唇を近づける。


「御心のままにセヴェイ」

差し出された深紅の唇を舌を堪能し、王妃の体は上下に激しく揺らし時折上半身は弓なりにピクピクと痙攣する。


その豊かな乳房に淡いピンク色の乳首、首筋、胸元、鎖骨、指先、そして女のあらわな部分で最も過敏な秘所に己の唇を手で探り女の快楽を誘う。


セヴィエは二人の体を再び体勢を変えて女を自分の前に後ろ向きに抱え込む。


「はあ・・・・・・・・セヴィ・・・あぁ~~」

その声に誘導されて己が自身をさらに激しく女の中のさらに深い部分をこじ開ける。


「nん~~」


突き立てられる体勢になった女の中はセヴィエがより深く侵入して女の最も性感な部分を激しく刺激する。


「そなたとの契約が早く終わるのが待ちどおしいような。残念なような複雑だ。」

まるで時間がないとばかり何度もセヴェイは女をせめて続け、女は何度達したかもはや覚えられなかったが。

今回こそは望みを達成したいと欲望のままセヴェイのされるがまま体を預けた。


女の名はパルミラル。

帝国の同盟国で東の隣国の現王の王妃であった。

達したセヴェイがパルミラルを離すと二人は抱き寄せ温もりを感じあった。


「ああ~君との約束も忘れそうだ。君は素晴らしいまさにヴェレイアルの至宝だ。我が妃に相応しい」


心の中で。


「落ちた」

パルミラルは確信した。


帝都を訪問する度に深まる関係は長かったがその夜は自身も疑う事もないほど成果に確信を持った。


「陛下。いえセヴェイ。お約束通りしばらくは…悲しまないでください。すべては私たちのため。我が国のためでございます」

寝台での女としてのパルミラルも好みだが、権力に躊躇なく欲望をむき出す姿も美しいとセヴェイが感じている。


まさに恋する男の末路は皆同じに思える夜であった。

二人は名残惜しそうに夜明け前にそうそう寝台を抜け出した。




翌朝ヴェレイアル国王夫妻はフェレディンの皇帝に帰国する報告の為に謁見の間に通される。

高貴な貴族たちが贅の限りをつくしそれぞれを牽制するかのように謁見の間を埋め尽くしていた。

王妃は淡いエメラルドグリーンの瞳、目元のほくろが色っぽさをさらに引き立てる。

鼻筋の通った高い鼻と切れ長の目元には知的さと狡猾さ、自尊心の高さが垣間見れる。

デコルテは深く開かれ、豊かな胸元には瞳と同じ大粒のエメラルドネックレスとイヤリングをつけ頭には真珠とプラチナの宝冠が差し込む太陽の日差しに輝いていた。


パルミラルの妖精と国内外に知られた王妃はその場のあらゆる人を魅了した。

王妃の手をとり隣を歩くのはヴェレイアル国王だ。

今年五十歳を向かえ瘦せ型で白い肌、黒曜石を思わせる黒髪は肩ほどで切り揃えられ所所白い物が目立つ。

瞳はやや青みのある黒だったが少し生気が乏しくどことなく落ち着きがない瞳はキョロキョロとせわしない。繊細ながらも生まれの良さはあったがどう見ても精神的な弱さが不安視されるもは明らかだった。

「ヴェレイアル国王夫妻でいらっしゃいますね。王妃陛下はまぶしいほどお美しい、生家の公国家でも知られるほどの美女で賢汝、お生まれの良さ。女神はすべてをあの方に捧げられたようです。」

何人もの淑女が扇で口元を隠しながら王妃を評価している。

宮廷のお約束事、王妃はもう少し聞こえないように話すべきだと軽くため息をつく。

「国王陛下を手の中で転がし婚礼以来国王は王妃なしでは日常を穏やかに過ごせないらしいですわ」


「ヴァレイアル王家の血は近親婚を繰り返すあまり近年では後継に相応しい子が恵まれないようです。夫が申しておりました。」

そう話したのは帝国のヴァレイアル王国付き大使侯爵夫人だ。


「まあ、帝国からすると仲良くすべき王国ですね。何せ土壌がよく農業が盛んで、北部は多くの鉱物の金脈がございます」

一同その場で頷いた。


ここにいるほぼ全ての裕福な貴族達はその恩恵に授かろうと自分たちが持つ特権を惜しみなく王国に提供していた。

金、金に替わる宝飾品、美しい令嬢と令息諜報工作に長けた人材をを宮廷に送り込んでいた。

いまかいまかと今までの投資を取り返せるかそればかりを切望していた。

まったくギラギラとした野心を見けられた王妃はくすッと笑う。優越感と軽蔑の証に。

国王夫妻は玉座に座る皇帝に退出の儀のために一礼する。


「ヴァレイアル国王夫妻真訪問をありがとう。永く両国の栄が永遠であるように強く望み共に導かん。」

ヴェレイアル王は聞き取りずらいほどの小さな声でこれに答えた。

「皇帝陛下のご健康と帝国の繁栄が長く続きますように帝国連合の繁栄を。」

列席した王族、貴族達が大きくその言葉を叫び部屋中に木霊する。


皇帝は満足そうに微笑みながら右手を掲げる。


「皆の繁栄と女神ヴェアの加護が永遠に続くよう共に…。」

その場にいた全員はその言葉が永遠に続くことを確信していたし疑問さえ抱かなかった。


*********************************************


帝国訪問後の三か月後ヴァレイアル王国では王妃の懐妊が発表され、国中が世継ぎの誕生を待ちわびた。

その後七か月後明け方に王宮の王妃の部屋で赤子のけたたましい泣き声が響きわたる。 


王妃付きの侍従が王妃の部屋の扉を廊下へ開け高らかに宣言する。

「王子殿下誕生。ヴァレイアル王国万歳、国王陛下夫妻万歳、王子殿下万歳!」

侍従の涙声が廊下に響き渡る。

出産の報告を扉の外で待ち構えていた貴族達はざわざわと祝いの間へ移動し用意された祝賀会の宴を楽しんでいた。

長い陣痛に耐えた王妃の顔を侍女がぬぐい髪は軽く束ねられる。

「私の子は?元気なのか?男子か?」

珍しく心配そうに産婆に問いかける。

王妃に促され産婆が血まみれだった赤子はきれいに洗われ、真っ白な絹の布に包まれ王妃の隣に寝かされた。

丸々と太った赤子。

細い日の光のブロンドの髪は艶々として、王妃と同じエメラルドグリーンの瞳は大きく開かれている。

明らかに生命力の強さと、生まれのよさを具えた王国の未来がそこに存在していた。

「王妃陛下。大変元気な王子様です。

健康でどこにも問題はございません。これからの健やかにお育ちになるでしょう。

王室医師長が断言いたします。おめでとうございます」

「おめでとうございます」

その場にいた全員から祝賀を受ける。

王妃の乳母で女官長のコーディル男爵夫人が軽く礼をし祝いの言葉を贈る。

まさに重責を果たしたという安堵感とわずかな怪しい微笑みも奥底に隠しながら。

王室で無事に王子が誕生するのは五十年ぶりであった。

王族の数を入れてもその長い間男子は死産や幼児のうちに死亡する事が多く、現王が誕生して以降誕生はなかった。

現王も誕生はしたものの何度も生死をさまよい現在も精神的に安定せず一進一退であった。

王妃は安心しきった様子で、珍しく涙さえ流す。

しかしすぐに現実へと引き戻されたのは国王の訪問を受けたからだ。

王妃の出産の報告を受け王は五人の侍従を引き連れ王妃の寝室に入って寝台の前に用意された椅子に腰掛ける。

今日の王は青白い肌に瞳の焦点はあっておらず、普段よりもどことなくそわそわと落ち着きがない。

冷や汗もかいている様子だった。

今日の体調の悪さは隠しようがなかった。

「お…王妃……ありが…う。 」

目を合わせる事無く斜め上を見ながらたどたどしく生まれたばかりの王子の額にキスを贈るお約束通りの儀礼を行う姿には赤子の顔がフェレイデン帝国の皇帝に似ているとも気つきもしていないのがわかる。

「陛下、お加減のよろしくない時に恐れ入ります。

 もう大丈夫でございます。

 無事に王子殿下が誕生いたしました。大変王室医師長が断言しております。どうかお休みくださ

 いませ。後で王子を抱いてあげてくださいませ。」

負担にならないようにやさしく伝え、微笑みながら王のほほを軽く撫でた。

王は頬を紅潮させ満足そうに何度も何度も頷き、王妃に促され椅子を立って部屋を後にした。

十分だ。

これ以上望はない。

すべてはこの日のために。

王妃は心で自分を納得させる。

間を置かず王妃の部屋が開かれると今度はタッタッタと軽やかに登場した5歳くらいの女の子が二人の乳母に付き添われ現れる。

淡いピンク色のふんわりした絹のドレスに所所赤いリボンと鼻の刺繍が施され軽やかに弾む、髪の色肌、瞳の色何をとっても王妃に生き写しで我が子に間違いない子供だった。

寝台に一直線に駆け出し飛び乗る。好奇心いっぱいのきらきらした瞳で母を見る。

「おかあしゃま!お母しゃま!見しぇて!あかしゃん!」

元気いっぱいの姿に苦笑する王妃に皆笑いを抑えることができずにいる。

「王女殿下。なりませんよ。」

王女の乳母が注意する。

王妃は微笑みながら生まれたばかりの王子を抱き寄せ王女に見せた。

「弟が出来て嬉しいのでしょ。よいのですよ。

 エルミエ。弟ですよ可愛がってくださいね。

 ほらかわいいでしょ」


母に抱かれ安心して寝る赤子に王女は興味深々、顔を近づけては頬を指でかるく触る。慎重にそれでいて何度も感触を楽しんでいるようだった。

「王女殿下のお迎えの儀式は無事に終わったようですね」

王女の乳母の一人メヌエットが笑いをこらえ切れずいった。

「なんておねまえ?」

「セヴィル王子殿下ですよ」

王妃は静かに確信を持ってその名を呼ぶ。

と同時に1000発の祝砲が始まる。ここに王国の世継ぎが誕生したことを高らかに告げるのだった。

王妃は瞳を閉じてその音に感無量といった面持ちだ。

周りにいる王女以外皆先ほどまで笑いあっていたにもかかわらず、すすり泣いている。

王妃にかけられていた重圧を共有した瞬間だった。

王女が何度もその名を叫ぶ。

「セビ??・シ・・ベイ・・・・」

皆笑いをこらえるのに一苦労、若い女官はおもわずクスッと笑いが漏れた。

和やかな王室一家のひと時は一瞬、映像の一コマを切り取ったに過ぎず一瞬は王女の退席で場は変化する。

王妃はその場に女官長を残し、産婆、全ての王妃付きの使用人を退席させた。

部屋には王妃、王子、そして女官長の三人しかいなくなった。

「本当に長い月日が経ちました。

 ようやくこの日を迎える事が出来ました」

女官長は静かに語り始めた。

王妃はもっともだと頷く。

「王妃様、計画通りでよろしいのですね」

王妃は頷く、声には出さなかったが強い眼差しが全てを語っていた。

「まだ王妃様がお嬢様でいらした頃おかれた環境を思い出す度悔しく苦痛で、今も胸が痛みます。

 私も王妃様の無念をすぐそばで見て参りました。

 お姫様!あえてそう申し上げます。

 お姫様あの仕打ちを今こそ晴らさなくてはいけません」

「アルビラ。ええ、わかったいます。

 ええ、私のすべてはこの日のためだけに存在していました。」


アルビラと呼ばれたコーディル男爵夫人はハンカチで瞳に映る涙をぬぐった。

「帝国の貴族達からの贈物はその目的のために役立つでしょう。

 いままで新興貴族と古くから使えてきた勢力を牽制できたのもその贈物のおかげです。

 しばらくは古参の貴族たちを刺激します、態度は控えなくてはいけませんね」

 まだ王子殿下も生まれたばかりです。

 一年待ちましょう。

 その間に新興貴族の派閥を強固なものにするのです。王子の健康が確かなものだと知ればおの

 ずと貴族たちの気も緩みます。」

アルビラは同意するように野心と復讐の炎を瞳を隠しもせず深く頷く。

そして自分の育てた王妃の慎重さと狡猾さ自身の養育の成果に酔っていた。


重要な行事を控えて着替えを行っている間に王妃は返す道のりで自身の生い立ちを思い返した。

幼少期すでにあるはずの両親の愛情は惜しげもなくすべて姉に注がれていた。自分には乳母が仕えていただけで両親からは無視され続けた。

姉は生まれつき病弱で子供部屋から出た記憶がなく、いつもそばには両親と乳母、専属の召使にかしずかれた綺麗で清潔な部屋にいた。


淡いグリーンカラーの内装にまとめられ夏は涼しく、冬は暖かく温度管理された中で人形やぬいぐるみ、遊び道具で飾られて幼い子が退屈しないようにという配慮がされたものだった。

パルミラルはまだ自分がいけないのだからと良い子になれば愛されると考えていた頃、幼い頃両親の愛情を求め頻繁に姉の部屋を訪れた。

必ず会えるのは決まって姉の部屋だけだったからだ。

姉の部屋に入っても扉の外には無関心で寝台に寝る姉に二人の眼差しは向けられている。

姉にはその眼差しを愛おしそうに向けられている。

決して自分には向けられた事のない眼差しにパルミラルの心は何度も針を突き刺される。

何故自分にはその微笑みを向かられないのか?何故姉にだけ注がれるのか?何故?

いを決して寝台に駆け寄り懸命に自分を。全てを。両親に投げかける。

「お父様、お母様!見てください」

凍えた様に初めてしっかりと敬称を言えた事に喜んでくれるだろうか?

わずかな望みを持ち二人に視線をあわせようると両親を見る。


二人は声にきずいている距離にいるのに反応さえしてはくれない。

まるで自分はここには存在しないように。

この光景を何度見てきただろうか。

まただめなのね。

失望と焦燥感が体中を支配する。

目の前の両親は二人して失望の瞳を浮かべ、母は父の胸にもたれかけ愚かな娘を生んでしまったといわんばかりの表情を浮かべる。

父は頭を右手にかかえながら、絞り出すように娘に言い放す。静かにだが幼い子には恐怖を与えるには十分な言葉だった。

「あっちへ行っておけ。

 どうして私達を煩わす。

 お姉様が心配ではないのか?

 なんて自分勝手な娘だ。

 自分の部屋で静かにしていなさい。」

娘に話す口調ではない。自分は本当に娘なのかと。

まるで召使にでも言い放す言葉はパルミラルのわずかな自尊心を叩きのめすには十分すぎた。

そこには親子関係ではなく、歴然な支配関係が存在していた。

パルミラルの顔が青ざめてわずかな期待はものの見事に撃破されてしまう。

期待は裏切られ頭を深く下げ、一歩右足をさげそのまま二歩三歩下がりそのまま部屋を出ていく。

いつか両親から優しい言葉をかけてくれるそのためにどんな事もすすんで学んだ。

こんなことを何度も何度も繰り返し続けただろう。

血の滲む努力を重ねた。

睡眠を遊びを食事を生活の全てを勉学に励んだ。

幼い娘は成長しながらも行きついた先は諦めと失望、嫌悪感、憎悪が体中に支配されて育ってしまった。

しかも乳母はその気持ちを押すように両親への憎悪と失望を植え付け続けた。

公国家の召使の関係性は主人の位置に同じだった。

残念ながらパルミラルは公国で最下位であり、乳母もその地位に位置ずかれた。

この乳母は貧しい男爵家の妻でなんとか大公家の息女の乳母の職につきいき怏々と大公家に乗り込んだにもかかわらずおかれた環境はよいものと言えない。召使の間では侮辱さえされてしまう。


男爵夫人という貴族の身で何故平民の召使ごときに馬鹿にされないといけないのかと膨れ上がる怒りの矛先は公女の養育の全てに注がれる。

公女は賢女となりいずれは万民の頂点になるように、ある意味大公夫妻の無関心は都合がよいものでもあった。

その教育に対してある程度報告と希望は「好きにしろ」と答えられる事が多かったからだ。 

アルビラは身分にかかわらず考えるだけの賢者を講師に招く事に成功させる。

パルミラルは始め両親の注目を受けたいという理由で励んだが、それが望めないと悟ると自発的にあらゆる教養と知識の全てを得ようと吸収し身につける。

その才能に講師らを驚愕させる。

アルビラはパルラミルの成長に十分に満足していた。

いずれどうなってもこの公女が大きく自分の運命を変える存在になる事を確信していたからだ。

そして呪いのようにパルミラルに言い聞かせた。


「公女様にいずれ最高の地位に立つ方です。

 その時のために備えるのです。

 ご夫妻に希望を持ってはなりません。

 姫様を導けるのは私しかいないのですから。

 必ずや。

 私の言うとおりにすれば全ては公女様の為です。」


時は過ぎ去り、環境の変わらないまま少女パルミラルは十五歳、姉に対してもあからさまに対立はしなかったが、産まれた憎悪は簡単に消え去りはしなかった。


姉は十八歳でようやく部屋を出る事が出来たもののほんの少しの環境の変化で発熱しては寝込んだ。

命に別状はなかったが両親を常にハラハラさせていた。

そんな頃突然姉にヴェレイアル王国王太子との縁談が舞い込む。

両親は慌てふためいた。

只得さえ病弱な娘、王家に嫁ぐなどしかも精神的に病のある王太子に嫁ぐなどありえなかった。

「どうしたものでしょう。大公様。

 あの子が嫁いでしまえば病がひどくなり死んでしまいます。

 それに二度と会えません。

 そんなことは耐えられません。」

大公妃は支配者に嫁ぐ重責を自身の体験で知っていたし、そんな義務が愛しい我が子に向く事は耐えられないとわかっていた。

大公もその意見には同意するものの断るという選択肢はほぼなかった。

何故なら相手は王家で自分よりも格上の王家への結婚だおいそれと断れない。

どうしたものかと考えたその時、大公家にもう一人公女がいる事とことさら今になってはっきりと思い出す。 

「もう一人いるではないか我が家に公女は。

 健康的で私たちの血を引く間違いない娘が。」

にやりと妻に問いかける。

大公妃ははっとして思いなおす。

そうだ間違いなくもう一人私たちの血を引く娘がいるではない。と今頃思い出すのだった。

「すぐに婚礼の支度をしましょう。

 それと大公様あの子にアフェルキア公国公子との婚約を。

 他の王家に嫁ぐよりアフェルキアは我が実家。

 嫁いでも実家ならば隣国ですし好きな時に会えますわ。

 公子は公国の分家ですし大公妃になるわけではありません。

 私たちから多くの持参金と支度を用意しましょう。

 あの子にはそれが一番の良縁です。」


 大公はこれほどない妻の提案に同意する。

「あの子がやっと私達の役にたつのだな。嬉しい限りだ。

 どこにもだせないと思っておった」

初めて我が子の事で笑ったその顔はとても父親のそれとは違っていた。

まずパルラミルに婚約とヴェレイアル王国への入宮が言い渡される。

「お前の縁談が決まった。ヴェレイアル王国の王太子と婚姻だ。

 お前は何もしなくてよい。

 すべてはこちらで整えるから。

 王太子妃、いずれは王妃になるための勉学でも身につけなさい。」

冷たく言い放つ父の姿を無関心に見つめる無機質な顔の自分に苦笑しそうになるのを抑えた。

「ありがたい心付いに感謝いたします大公殿下。

 出発までご指導をお願いいたします。」 

礼をして父の執務室を出ていく廊下で母と鉢合わす。

パルラミルは礼をして母に向かい合う。

あいかわらず瞳は冷気を帯びて冷たく娘を蔑む様に見ているが言葉は違った。

「この度はおめでとう。

 王家に嫁ぐなど誉高くうれしく思います」

嬉しいそれはそうでしょう。

愛しいお姉さまをとられずにすむのだから、あの病弱な王太子に嫁ぐのは私と決めた張本人が笑える。

笑いたかったがそうもいかない。

「大公様大公妃様に感謝申し上げます。」

無表情に答えたパルミラルに不快感がするが大公妃はそれを問題視しなかった。

少しだけの後ろめたさがあったからかもしれない。しかし可愛げのない娘になったと冷たい目線を送る。


すぐに大公と大公妃は最愛の娘の婚約願をフェルキアに公文書と私文書を送り早々と婚約が整えられた。

しかし実際に嫁ぐには2年先でその間公女は健康に配慮され、その結果は良い方向に向かい無事にその日を迎える事が出来アフェルキア公国公爵家へと嫁いでいった。

豪華な馬車に多くの使用人と支度品を乗せてパルミラルは公国を去る。

さすがの両親もいやいやながらもその日は門の外まで見送った。心はそこになかったが。

もはや娘ではなく王太子の婚約者の出国だったからだ。


そうあの日からあの日を始めに私のすべてが始まったのだ。

王妃は帝国軍が乱入する中、王女エルミエを乳母メヌエットと元皇后の護衛騎士マクシミリアンに託して王宮から逃がす。

自身はフェレイデン帝国の皇后と立后する。

その後の皇后は?

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