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妹よ、その侯爵家令息は間諜です ~家門を断罪された姉、のその後~   作者: ユタニ


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40.お茶会(1)


やっと両想いになったシンシアとアラン。ここで誰よりも早く動いたのはキリンジ侯爵夫人のクリスティナだった。


クリスティナはアランよりも早く、夫であり家長であるキリンジ侯爵に早馬でシンシアの事を知らせた。


公園デートの四日後には、シンシアに式の日取りが相談され、ウェディングドレス用に遠い島国のシルクの買い付けを既に済ました旨が伝えられる。

クリスティナが言うには、その島国のシルクは光沢が全く違うのだとか。


シンシアは驚いて止めた。

貴族会議での決着もまだで、ヨハンソン家の爵位は保留の状態なのだ。課せられる罰金の総額も、はっきりとは分かっていない。

そんな状況で、家同士の婚姻を進めるのは早急過ぎる、ちょっと待ってほしいと訴える。


自分とアランはまだやっと気持ちを通わせた段階だ、ヨハンソン家には此度の問題もあるし、シンシアは近い内に領地に戻る予定でもある。

まずは落ち着いて見守ってほしい、急がなくてもクリスティナとの縁がなくなるものではない、と伝える。

たまたま訪れていたステラも一緒に諌めてくれた事もあり、クリスティナは渋々ではあるが引いてくれた。

やれやれ、とシンシアは胸を撫で下ろす。

クリスティナは話せば聞いてはくれる人なのだ。島国のシルクも一旦保留にしてもらえた。


ステラによると、クリスティナは最近、これと同じような事をキリンジ家の三男の想い人にしたらしい。

相手のご令嬢はさぞかし怖かっただろうな、とシンシアは思う。


シンシアは先にクリスティナと親しくなっていたので、驚いただけで怖さはなかったが、初対面のクリスティナは冷たくきつい印象を与える人だ。

三男の想い人はさる男爵家のご令嬢で、それをお茶会に呼んでこれをやったようだ。

話の流れや雰囲気によっては「あなたが、最近うちの息子に言い寄っている方かしら? 見上げた度胸だこと」みたいな脅しに取られた可能性もある、というか実際、そのように取られて令嬢は怯えまくった。

どうやら、三男は遠目で眺めるだけの淡い恋だったようで、何もしてないのにこれ以降は相手から徹底的に避けられているらしい。


「アランがお詫びの品を持って相手のお家に行ってたはずよ」

とステラは言う。

頭を抱えるシンシア。三男も相手のご令嬢も可哀想だ。


「こういう事になるから、アランはクリスティナとあなたの接触を止めてたのよねえ」

確かにこれを侯爵邸に来た当初にされていたら、いろいろ誤解して場合によっては屋敷を飛び出していたかもしれない。

シンシアは今、クリスティナがシンシアとハリーが居る別棟に立ち入り禁止だった事情を完全に理解した。


そうして早速に先走ったクリスティナの話を聞いて、その日はアランが慌てて帰ってきた。


「全力で口説くと言いましたが、急かすつもりはないんです。父には私からも手紙を送りました。母の先走りはよくある事なので、本気にはしてなかったようです。

父は元々、私の結婚相手に関与はしないと言っていますし、どんな結論になろうとシンシアは気にしなくていい。結婚はしたいですが無理強いしませんし、急かしもしません」

帰ってくるなり心配そうに告げてくる。

シンシアが、気にしていないと伝えると、すごくほっとされた。


「よかった」

安心したいのか、シンシアの手が握られる。

ここ数日は、夕食の後に部屋に送られていて、その際は必ず「お休みなさい」と手に口付けされるのだが、口付けも、手を取られる事にもシンシアはまだまだ慣れない。


「触れるのは、不快ですか?」

シンシアの強張りに気付いてアランが聞く。

「慣れなくて、恥ずかしいだけです。不快ではなくて、その、ふわっとします」

むしろ、アランに触れられるのは嬉しい。

でも嬉しいとはさすがに言えないので、シンシアは耳を赤くしながらぼかして答えた。


シンシアの答えにアランが大きく息を吐く。

呆れてしまっただろうか。


「すみません、はしたなかったでしょうか?」

「いえ」

アランが親指で、すり、とシンシアの手のひらを撫でる。色めいた手つきにびっくりしてアランを見ると、すぐに手が離された。

ほっとしたような、名残惜しいような、複雑な気分だ。


「明後日のお茶会ですが、茶会終わりに王太子殿下があなたと話す時間が欲しいと言っています。お時間をいただいてもよろしいでしょうか? もちろん私も同席します。ハリーはケイティに来てもらって先に帰そうと思っています」

アランからの問いかけにシンシアは頷いた。王太子の話とはタイミング的に子爵家の爵位を残す条件についてだろう。


「分かりました。そのつもりでいます」

「お茶会の主催者の王太子妃殿下は、基本的には良識ある方です。参加者はそのご友人ばかりなので、不安に思わなくても大丈夫です。お茶会の最中は、私があなたとハリーから離れる事はないので、安心してください」

「はい」


そうしてその二日後、シンシアはアランのエスコートで城のお茶会へと参加した。




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