ep6,5.君と僕らはunico e solo
マヒル、サヨ、アサカは他人嫌いである。
そのことを気にしたユウナギは、意を決して
リンネに相談する。
そこで、彼女が提案したのは
ユサ、アミ、ルシェの3人と、
ゲームを介して仲良くなることだった。
紆余曲折あったものの、なんやかんやで
距離を縮めた彼女達。
これは、その後のとある日の話ー……
*ユウナギSide*
なんだか、ぼーっとする。
そう思ったのは、みんなが話している時だった。
「ねえねえ〜マヒル〜最近サヨとどお? イチャラブしてないのぉ〜?」
「ああ、もううっさい!!! そんな毎日いちゃつくわけないでしょ!?」
「あーーー百合がほしい〜百合がたりん〜だれか、だれか百合を……」
「相変わらず、リンはぶれないわね」
「どんなに懇願しても、お嬢様のお眼鏡にかなうものは出てこないと思いますよ」
台所ごし故、なのか。みんなの話が、うまくききとれない。
調理をしていても、物が二重、三重にみえるような……
「ねぇ〜ユウナギはなんかないの? ……ん? ユウナギ、ちょっと顔赤くない?」
お嬢の呼びかけに、思わずハッとする。
ダメだな、オレは。調理中にぼーっとするとは……
「そう、かな? いつもと変わらないと思うけど。それより、どうしたお嬢」
「あれ? 聞こえてなかった?? てかお料理、全然できてないじゃん!」
「あ、ごめん、すぐ作るから。座って待って……」
「ユウナギ、ちょっと失礼するわよ」
サヨがふいに台所へ入ってくる。
すると彼女はオレの頭に、自分の頭をあてる。
彼女の額からはほんのり冷たい感触が伝わってくるー
「………やっぱり。あなた、熱があるでしょ」
「うぇ!!? 熱!!? 大丈夫なの!?」
「あー……確かにぼーっとするなぁとは思ったけど……けどこれくらい、たいしたことないよ。オレのことは気にせず……」
「バカね。気にしないわけないでしょ」
今度はマヒルが、オレの後ろからやってくる。
すると何を思ったのか、彼女はオレを軽々抱えて……
「ま、マヒル!? おまっ、何して……」
「何って姫様抱っこに決まってるじゃない。そんなに驚くこと?」
「驚くだろ! サヨもいるってのに!」
「緊急事態だからいいじゃない。それとも、愛しの白馬の王子様にして欲しかった?」
「だ、だれが!!!」
「とにかく迷惑なのよ!! 病気のままウロウロされると!!」
そういうと彼女は無理矢理にでも部屋に押し込み、オレをベッドに投げられる。
でてくるな、とばかりにドアに鍵までかけられて。
やられた、まさか気づかれるなんて。
正直、風邪をひいていることくらい、なんとなく気づいていた。
でも認めてしまえば、またみんなに迷惑をかけてしまうと思って……
風邪なんか嫌いだ。必ずと言っていいほど、誰かに迷惑をかけてしまう。
だから、我慢してきた。これまでも、これからも。
「……バカだな、オレは。結局迷惑だって言われてるくらいなら、おとなしく寝とけばよかった……」
朦朧とする意識の中、オレは届かない独り言を呟きながら、深い眠りについたのだったー
「……本当にこれで元気になる、のよね?」
「虫や野草、薬に必要なものはバッチリ揃っていました。アミの錬金術で作ったので、治ること間違いなしです」
「でも、ユウナギらしいわね。風邪を引いたなら引いたって、素直に言えばいいのに」
声が聞こえる。
どこか困っているような、そんな声。
重い瞼を開けると、そこには四天王3人ではなく、ユサがいてー
「やあ、ナギ」
「……ユサ……? なんで、ここに……オレ、どれくらい寝て……」
「まだ熱があるんだ、起き上がらないほうがいい。リンネちゃんに呼ばれてね、君が倒れたと聞いていてもたってもいられなかったのさ」
「そっ、か……迷惑、かけたな……」
「何、君のためならたとえ、火の中でも水の中でもかけつけるさ。おかゆを作ったんだ、食べれるかい?」
「……あきれてただろ? オレが風邪ひいたこと」
「え?」
「ほんと、情けないよな。風邪ひいたことで、みんなに嫌われるんじゃないかって思ったら、不安で言い出せなくて……でも、結局迷惑かけてりゃ、嫌われても当然だよな」
あの3人は、強い。
この前なんてあっという間に、ユサやアミさん、それにルシェ様とまで仲良くなってしまった。
オレの、余計なお世話でしかなかったのに。
「いつ誰が、君を嫌いだと言ったのかい?」
「……え」
「君はもう少し、他人に好かれてる自覚を持ったほうがいい。でなければ、こんな薬やおかゆを、僕に持っていけなんて言わないよ」
言われて初めて、おかゆにしてはずいぶん硬いことに気がつく。
といた卵も乱雑で、乗っかっているネギも大雑把。
確かユサは、それなりに料理できる気がする。
ということは……これって、あの3人が作ったのか?オレの、ために……?
「リンネちゃんが言ってたよ。ナギがいなければ、この家は破滅だ。洗濯も家事もほとんど任せきりだったから、三人が反省しているって。迷惑だって言ったのも、早く休んで元気になってほしい裏返し……なんて、共に時間を過ごしてきた君が、一番理解しているんじゃないかい?」
ああ、そうか。あいつらはそういう奴だった。
何をやるにも喧嘩ばかりで、けど心のどこかでは認めてはいて、それを口には決して出さない。
きっと部屋の向こうは、とんでもない大惨事になってそう、なんて思ってしまう。
お嬢が、大変だったんだよなんて泣き喚いたり。
オレが風邪なんか引くから、とばかりにみんなが文句ばっかり言ってきたり。
……でも、不思議なことに悪い気はしない。
誰かに頼られることで、自分が必要とされているって実感できるからー
「………本当素直じゃないなぁ、あいつらは」
「ふふっ、それが彼女たちだろう? さあ、冷めないうちに食べてくれ。それとも、僕が口移しで飲ませてあげようか?」
「……そうだな、お願いしようかな。こういう時くらい」
早く、元気になりたい。
元気になったら、たまには言ってみようかな。
四天王に、みんなに会えてよかったって。
fin
unico e soloは、唯一無二という意味で、
四天王達の関係性を表しています。
今回の話は、前回の延長戦みたいなものです。
三人分一気に投稿した後、発起人とはいえ、
ユウナギだけないのは、不公平かな?と思ったので
そして、今回の話を思いつきました。
個人的には三人の看病だけで、
面白おかしくかけそうだったんですけど
風邪ネタというネタ柄、妄想で留めておきました。
個人的には心配する三人もツボですが
ユサを呼んだリンネが一番仕事したと思ってます。
次回からは、
本編や特別版よりすこぉし未来の話になりそうです。
百合が見れると思いますので
最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします!




