ep4,5.Happy Regalo's Day feat.サヨ&ユウナギ
レガーロデー、それは
年一回行われる催事。
好きな人への思いや、大切な人に感謝を伝えるため、
お菓子や日用品などを贈る日ー
これは、カップルとなって初めて
その日を迎えた四天王二人が、
リンネと共に魔王へ贈り物をした、
一週間後の話であるー
*サヨside*
「さ、サヨ!! こここここれ!! う、うけとんなさい!!」
顔を真っ赤にしたマヒルが、うちの顔を見ずに渡してくる。
まるで拒否権はない、とでもいうように、無理やり押し付けるような形で。
綺麗に包装された小さな箱、みるからに贈り物だということがわかる。
けれど自分の誕生日はまだ先。
思考を巡らせても、もらうことに心当たりがなくてー
「今日って何かの記念日? もらうようなこと、したかしら」
「……は??? なんの話?」
「リンが言っていたのだけど、恋人によっては何かをした記念に、特別なことをするそうなの。あなたってそういうタイプだったのね。知らなかったわ」
「そんなわけないでしょ!! レガーロデーよ、レガーロデー!! この間ディアボロスたちに渡したの、もう忘れたの!?」
海での生活が長いせいで、地上のイベントは知らないものが多い。というか、関心がない。
ちょっと前までは、こうして誰かと過ごすなんて思ってもなかったのだから仕方がない。
つい先日、四天王で魔王さんへ感謝をするために作ったから、てっきり終わったものだと思っていたのにー
「意外ね、あなたが用意してるなんて。リンがいる手前、もうないと思っていたわ」
「そ、そりゃあするわよ!! 恋人になって初めてのイベントごと、だし……言っとくけど、気に入らないとか、文句は受け付けないから!! 返品交換一切禁止!!!」
「そんなのしないわよ。だってあなた、リンに言われる一週間前から選んでたでしょ?」
「そ、そそそそそんなことないわよ!!」
彼女はとにかく分かりやすい。
前々からそわそわしたり、何かと落ち着かない様子だったのは意識せずとも目に入る。
もっともうちは、それが一番嬉しいのだけど。
「へぇ、イヤリング……片方しかないけど、これ左耳用は?」
「ルシェが、言ってたわ。イヤリングには守る、って意味があるって。つける側にも意味があるのよ……左が守る、右が守られる……だから、あたしが左を持つわ。あんたを守るのは、あたしの役目だから」
アクセサリーには、それぞれ意味がある。
イヤリングは、「そばにいたい」。そして、彼女が言った「守る」という意味。
彼女なりに色々、手を尽くしてくれたのだろうか。こういうこと、一番苦手なくせに。
「確かにそんな意味もあるけど。確かそれ、異性だったら、の話じゃなかったかしら」
「細かいことはいいのよ! 文句あるなら返して!!」
「返すなって言ったり返せって言ったり、忙しい人ね。でも、ありがとう。必ずお礼させて」
「ふんっ、何もいらないわ。その代わり、これはあたしにつけさせなさい! ほら、耳貸して!」
体ごと強引に、彼女へ引き寄せられる。
不意に近づく距離に、思わず心臓が跳ね上がってしてー
「ちょ、近……! なんであなたにつけてもらわなきゃいけないの? これくらい、自分でつけれるわ」
「はっはーん? さてはあんた、照れてるのね?」
「照れてない。別でお礼するって言ったでしょ」
「あたしがやりたいの。これがお礼でいいから、黙ってやらせなさい」
マヒルの指が、うちの耳に触れる。
感触や匂い、マヒルの全てが、息のかかるほど近くに感じる。
耳がくすぐったくて仕方ない、心臓が張り裂けそうなくらいうるさい。
早く終わってほしいのに、どこかで終わってほしくない気持ちがうちの中に渦巻く。
このままずっと、彼女を近くに感じていれたらー
「………はぁ、やっとつけれたわ。他人の耳ってむっずかしいわね、手間取っちゃった」
「……ねえ、あなたの分のも、ある?」
「え、あるけど……」
「……うちも、あなたのつけたい……つけさせて、くれない?」
マヒルの顔が、赤く染まる。
その後、マヒルの耳につけ終わっても、うちらは一緒にいた。
夕陽が沈む、家に帰る時間まで。
左右につけられたお揃いのイヤリングは、寄り添うように煌めいていたー
*ユウナギside*
「ユサ様っ!! これ、レガーロデーの贈り物です!! お願いしますっ!!!」
ずらりと並んだ女の子3人、いやそれ以上の人数が彼女を取り囲む。
そんな様子に嫌がるそぶりもなく、さぞ嬉しそうに、優しげな微笑みを向ける。
「ありがとう、子猫ちゃんたち。君たちからの愛は、確かに受け取ったよ」
スキバ・ユサ。一応オレの婚約者でもある女。
外見、仕草共に、白馬の王子的存在な彼女の
人気ぶりは、レガーロデーでも余すことなく発揮されていた。
当日から一週間経っているというのに、だ。
恋愛ごとに敏感なお嬢がいる以上、時期をずらすことは計算に入れていた。
彼女が人気者であることは百も承知。当日に渡すなんてもってのほかだとわかっていたから。
だが、甘かった。まさか、過ぎた今でも送る相手がいるとは。
「おや、ナギじゃないか。こんなところで会えるとは奇遇だね」
それでも彼女は、いとも簡単にオレを見つけ出す。
どんなにファンがいても、どんな状況や場所でも、すぐ。
そのことで、どんなにオレの心をかき乱しているかも知らずに。
「運命とは、こういうものを言うんだね……君に会いたい、と思っていたが、まさか君からきてくれるとは」
「会いにきたわけじゃねーし、たまたま通りがかっただけだから。この行列って、例のレガーロデーのやつ、だよな」
「一週間前から、子猫ちゃんが渡したいって聞かなくてね。嗚呼! 我ながら、自分の美しさが恐ろしくて仕方ないよ……!」
「はいはい、よかったなー。じゃ、オレ用があるから……」
「ところでナギ。その手に持つものは、誰に渡すものかな?」
彼女の瞳が、オレの心を覗き込むようにまっすぐ見つめてくる。
その眼力と言葉に、つい自分の手に力がこめられてしまう。
彼女の愛は、昔からまっすぐだ。
今も変わらず揺らぐこともなく、いつも真正面から気持ちを伝えてくれる。
だから、たまには自分から、って思ってつい作ってしまってー
「だ、だって、お前、すんげー貰ってるし……オレのなんていらねーだろ……」
「確かに僕は、子猫ちゃんからに愛を貰っている。十分すぎるほどに……ね。でも、それでは足りないんだ。本当に欲しいものがないからね」
「……そんなに貰った上で欲しいものがないとか、どんだけ強欲なんだよ……」
「当然だよ。僕が欲しいのは、心から愛する君の贈り物、ただ一つだからね」
ああ、まただ。
こいつはいつも、オレの心の壁を溶かそうとする。
例えたくさん愛されていても、誰かに好きと言われても、今の彼女は喜ばない。
オレじゃなきゃ意味がない、と。
「……あー、わかったよ。やるよ、やりゃあいいんだろ」
「ふふ、相変わらず素直じゃない子猫ちゃんだね。さて、ナギからの贈り物は……やはりスイーツか。予想通りだね」
「嫌なら食べなくて結構です。じゃあオレ、かえ……」
「せっかく愛しの子猫ちゃんがきてくれたというのに、僕が黙って逃すと思うかい?」
そんな彼女達から、庇うようにユサはオレを包み込む。
グッと自分の方に引き寄せたかと思うと、軽々と体を持ち上げてしまってー
「ちょっっっ!!! ユサ!? 何して……!」
「君が僕に作ってくれた料理なんだ。君の前で食べたいと思うのは、当然だろう?」
体が、熱い。
これ以上好きになりたくないのに、どんどん好きになってしまう。
みんなの王子様を独り占めするわけにはいかないって、わかってるのにー
「とはいえ、ここだと人が多いね。場所を変えようか。二人きりになりたいしね」
「………いい。移動しなくて、いい。なんなら今、ここで食べさせてやるよ。みんなの前、で……」
ごめんなさい。今日だけは、許してください。
どうかオレに彼女を、みんなの王子様を、独り占めさせてください。
だって彼女は、王子様でもある以前に、オレの婚約者だからー
「嗚呼……君は本当に愛おしいね、ナギ。愛おし過ぎて食べちゃいたいくらいだ」
「洒落にならねー冗談言ってないで、さっさと口開け……」
「冗談じゃない、と言ったら?」
チョコを含めた彼女の唇が、自分の口を重なる。
悲鳴のような黄色の歓声の下、オレは彼女と口づけを交わす。
苦いようでほんのり甘い、チョコレートの味がずっと感触に残っていたー
fin
個人的にこの二組の百合が
強くて仕方ないです。
イヤリングを付け合う、みんなの前でキスする
もう羨ましいシチュエーションしかありません。
そんなバレンタインエピでしたが、
楽しんでいただけましたか?
あ、私このカップリングが好きだなぁ、と
リンネと共に見守っていただければ幸いです。
次回の更新は火曜にできたら行います!
サブキャラメインかなぁって感じです
お楽しみに!!




