ep3.レガーロデーに愛を込めて
おっす、おらリンネ!!
ひょんなことから、魔王の娘に転生した私は、
前世の記憶を頼りに、
四天王の百合を叶えてきました!!!
そんな私と、四天王のお話、
とくとご覧あれ!!!
異世界。それは、私ら人間が住んでいる世界とは別の世界。
剣や魔法などの世界観は、小説や漫画の世界でしか体験することがない、まさに憧れの舞台。
そしてここ、ウヨシンテは戦いもなければ、魔族と人間の諍いすらない平和な世界。
そんな世界に、「魔王の娘」として転生した人物がいたー
「みんなーーーー!!!! ちゅーーーーもーーーーーく!!!」
はい!! リンネです!!!
魔王にはならなくていいというお達しから、現在やりたいことに向け少しずーつ行動中!
四天王と一緒に、今日も今日とてのんびり暮らしてます!
そんな私が、何を彼女らにいうのか。そんなの、決まっている。
「四天王みんなで愛を伝えましょう!!!!」
無論、百合じゃ!!!!!
「……はぁ……また始まったわ」
クールなお澄まし人魚族、サヨが呆れたように呟く。
せっかく視線を向けてくれたというのに、なぜか彼女はすぐに雑誌を読み出してー
「ってちょっと!! 無視するなんて酷くない!? あからさまに聞こえてたよね!?」
「聞こえてたから無視してるのよ。どうせまた、くだらないことでしょ?」
「サヨの言うとおり。あたし達はあんたに付き合うほど暇じゃないの! 何回言えばわかるのかしら」
ツンデレ鬼族マヒルが、ふんっと鼻で笑う。
正直、二人が塩対応してくるは予想の範囲内である。
つまり、考えがない状態で私が言うわけがない! ということでー
「ダメだね〜これだからお堅い人たちは。お母さん達からきいたよぉ? この世界にはレガーロデーなるものが存在するって」
「あー…………あの面倒なイベントね」
「……そんなイベントがあるの?」
「年一回行われる催事ですね。好きな人への思いや、大切な人に感謝を伝えるため、お菓子や日用品などを贈る日と言われています」
催事のすべて、とかかれた本を片手に持ちながら、勤勉人形アサカがいう。
それを初めて聞いたとき、さながらバレンタインデーに似ているな、と思った。
この世界には、私の世界のような季節行事がほとんどない。
そのせいで百合が足りんの何の……
だから思った!! この四人にさせるために人肌脱ごうと!
「その反応的に、マヒルもサヨもイベント系に無頓着でしょ? アサカは人形だったし、参加したくてもできなかったと思うんだよね。だから、この機会に大切な人や好きな人に、みんなであげない!? なんてたって私達には、天下の味方ユウナギがいるし!!」
「またえらく持ち上げた言い方だな。確かにこの中じゃ、オレが一番詳しいかもしれないけど」
四天王唯一の良心、ハーフエルフのユウナギが言う。
話してくれた我が両親は、何を渡そうか、どう渡そうかと、それはそれは楽しそうに本や店で選んでいた。
こーーーんな百合イベント、四天王にしてもらわない手はないでしょ!!?
なんてたってこの四人には、愛すべき相手が……
「お嬢もこういってることだし、せっかくだしみんなで一緒にやらないか? 日頃の感謝を伝えるいい機会だし」
「それなら、渡す相手は魔王様で決まったも同然ですね」
……あれ??
「マスターに、か……それなら、お菓子がいいかもな。チヨコライトとか、ケエキとか」
「意外ね。魔王さんってお菓子食べるの?」
「ああみえて甘党とのことで、私が入れる紅茶や珈琲にも砂糖を頼まれます。ちなみに女王様は辛党です」
「聞いてないわよ、そんなこと。……あたしもディアボロスに渡さなきゃだめ?」
「そんな露骨に嫌そうな顔しなくても……マヒルはマスターに感謝してないのか?」
「感謝も何も、あいつは倒すべき敵なの!! そんな奴に贈り物なんて、死んでもお断……」
「ですがマヒル様は、魔王様を襲ったという前科があります。にも関わらず、今や四天王のトップの座……本当に恩がないと言いきれますか?」
「そ、それは……!」
「うちらがこうしてここにいられるのも、あの人が四天王に任命してもらったおかげでもあるし。ここは、やるしかないんじゃない?」
あれあれあれ???
「え、えっとぉ、確かにママに感謝するのもわかるんだけど……す、好きな人に対して、とかは……」
「愚問ね。やるわけないでしょ」
がーーーん!!
「ご存知の通り、私は人形故器用ではありません。2人3人と相手を増やすより、魔王様お一人に絞って気持ちを込めた方が効率的と判断しました」
「そ、そんなぁ! じ、じゃあママには私からやるとして、みんなはそれぞれ好きな人に……」
「やっぱり、最初からそれが目的だったんじゃない! レガーロデーを知ってた時点で、怪しいと思ったのよあたしは!」
「そもそもうち、恋人がここにいるじゃない。わかってる状態で渡すなんて、やる意味がわからないわね。一人一人に言えばよかったのに」
ががーーーーーーーーん!!!!
「ま、まあまあお嬢。余裕があったら好きな人にも渡すってことで……渡すもの決めたいし、お嬢も一緒に考えよ。な?」
こうして私の百合計画は、魔王への感謝という予想の斜め上の方向性として実行された。
話し合いの結果、魔王に渡すものはチョコになり、紆余曲折ありながらも無事に完成。
渡された当人であるママは大層驚きながらも、嬉しそうにして。
それをみた巳胡さんが、お母さんにはないのぉ? って、すごい絡んできて。
うん。やっぱ、いいな。こういうの。
残念ながら、百合は見ることはできなかったけど…… よくよく考えたら、結果的に万々歳じゃないか。
嬉しそうな2人と、満更でもなさそうな四天王を見れたんだから。
これはこれで大成功、私の作戦は無事終了〜〜
……なんて、思っていた。
甘かった……まさか、彼女達が密かに行動していたなんて。
話は遡ること、この一件から一週間前。
なんともあろうことか、私の知らないところで、百合が繰り広げられたのだ!!
(後半につづく!!!)
昔話編も終わり、今回からは
ショートエピソード的な感じです!
レガーロの意味は贈り物、つまり現世界でいうバレンタインです。
何の話をかこうかなぁ、と悩んでいた際、
カレンダーを見たら、次回の更新日が
ちょうどバレンタインだったのでこの話になりました
それでもリンネの思い通りに進まないのが四天王。
書いていて本当に楽しかったです。
というわけで次回は、バレンタイン当日!
二人ずつお届けしますので
お楽しみに♪




