ep2.運命の巡り合わせ
前任の魔王が退き、
ウヨシンテに、新たな魔王が任命した。
これは、一人の悪魔族と、
一人の人間が出会う
遠い遠い、昔の記録であるー
✳︎other side✳︎
これは遠い遠い、昔の話。
ウヨシンテの魔王になった、一人の女性がいた。
悪魔族の女性、ディアボロスだ。
「ディアボロス様、魔王就任おめでとうございます!」
「あんなに小さかったディアボロスちゃんが、こんなに立派になって……わたし……わたし……」
「ねえねえ、せっかくだからその王冠被らしてよー!」
「あーずるいっ! 僕もほしいー!」
彼女は魔族にとことん好かれていた。
男勝りな性格とは裏腹に、種族身分関係なく、自分の家族のように接する。
人間や人魚族など、異質だと思われていた者たちへも手を差し伸べる姿は、まさに共存を謳うこの国にふさわしい。
それが彼女が魔王に選ばれた所以だった。
「こら、体に乗っかるな。危ないだろ」
「フォッフォッフォッ、相変わらず人気者じゃのう」
「笑っていないで、子供たちをどうにかしてください国王陛下」
魔族と人間が共存する。
その決まりが実現したのも、おそらくディアボロスの人柄あってのことだろう。
彼女の魔王就任は、共存国づくりの第一歩でもあった。
「………そういえば、あわせたい人がいる、と聞いていましたが」
「ああ、そうそう。わしには娘がいるんじゃが、本当に可愛くて可愛くて。ぜひ妻にしてほしいのじゃ」
「………私は一応女ですが」
「女同士の結婚がダメという決まりはないであろう?」
「そうかもしれませんが、生憎結婚とかは興味がないので」
「まあまあ、魔王として跡取りを考えるのも悪くないじゃろ? 娘は城の図書館にいるから、一度会ってみてくれ」
ディアボロスは、恋愛ごとに興味がない。
彼女はそれ相応に美しく、人を惹きつけやすい。
それ故近づく男は少なからず存在した。魔王になる自分の身分を、利用する者も。
そのせいか、好意という感情に苦手意識さえ抱いていた。
自分を慕ってくれる人がいる、それだけで十分ー
そう、思っていたのにー
「こうして、二人は幸せに暮らしました、ですってぇ。きゃぁっ〜素敵ぃ〜」
甲高い声がする。図書室とかかれた部屋にいたのは、本を読んでいる一人の女性だった。
うっとりと目を細める横顔はどこか、国王に似ていてー
「やっぱり、いいわぁ。特に、王子様がお姫様をお迎えに来てくれるシーン。素敵よねぇ、素敵すぎて何度も読んじゃう……ね、あなたもそう思うでしょ?」
短い金髪カールが、こちらに振り向く。
お人形のような、くりくりとした瞳だった。
声も、一言も発していない。
それなのに、彼女は自分の存在に気づいていた。
最初からここにくると、わかっているようにー
「初めまして〜衣通巳胡でぇす。あなたが、ディアボロスさん?」
「……何故、我の名を?」
「ふふっ、わかるわよぉ〜有名人だもの〜魔族も人間も関係ない、誰よりも優しく、誰よりも強い……人呼んで、魔族たらしのディアボロス!!」
「その名前で呼ぶのだけはやめてくれ」
「巳胡、あなたとお話ししてみたかったの! 一緒にお話ししましょ!」
そこから、彼女達の関係は始まった。
魔王と人間という異質な間柄ながら、そんなこと関係ないとばかりに、来る日も来る日も会話を交わし、仲を深めてゆく。
彼女、衣通巳胡はかわっている。
穏やかでのんびりしていると思いきや、たまにその者の気持ちを見透かしているようなことをいう。
優しい人柄は、魔族や人間関係なく心を掴んでしまう。
それは、ディアボロスも例外ではなかった。
「お前は、変わってるな。人間なのに、魔族の我と話すなど」
「あら、そうなの?」
「国王と親交を交わしたとしても、受け入れられない人間の方が未だ多い……我と言葉を交わすのは、魔族くらいだ」
「ってことは、ディアちゃんと人間で仲良いのって私だけってこと?? やだっ、嬉しい!!」
「………嬉しい、だと?」
「あっ、ごめんなさい! 違うわよね! ディアちゃんはみんなと仲良くしたいのに……それを知るのが、私だけだったらいいのになぁ、なんて、巳胡ったら、悪い子ね……」
巳胡はとにかく、素直で純粋だ。
一緒にいるだけで、自分が自然とリラックスしているのがわかる。
魔王業で常に気を張っていないといけないのに、巳胡と会うだけで癒されてゆく。
その気持ちがなんなのかわからぬまま、月日を重ねるごとに日に日に強く、そしてかけがえないものになってゆきー
「……なら、お前を我の特別にしてやろうか」
「え?」
「巳胡、我はお前が好きだ。お前の残りの人生を、我にくれないか?」
人間と魔族が結ばれる、それは未だかつてない事例だった。
魔王である自分が人間を妻にしたいなど、周りに何を言われるかわからない。
それでもいい。自分は、これほどまでに彼女を愛し、必要としているのだから。
誰になんと言われても、我は巳胡をー
「……巳胡ね、占いで見たの。いつかあなたに、これだと思える運命の出会いがあるでしょうって。それがいつかはわからなかったけど、ディアちゃんを初めて見た時に、わかった。ああ、この人だなぁって」
「巳胡……」
「こんな巳胡でよければ、よろしくお願いします」
二人の恋は、偶然か必然か。
そうして二人は、やむなくして結婚した。
もちろん、周囲から反感はあった。しかし二人は、その反感をものともしない。
なぜなら、二人は互いに愛し、思い合っていたのだからー
「ねえディアちゃん! みて! あのお伽話作家さん、新作をかいたの!」
「ああ、あの時の本か……随分と懐かしいな」
「でね、よかったらディアちゃんと一緒に読みたいなぁって」
「すまない、まだ片付いてない仕事があるんだ。それが終わってからでよければ……」
「あら、じゃあ手伝うわ! その方が早く終わるでしょう?」
魔王として、それを支える妻として。
二人の人生は、永遠に続いてゆくー
(本編へつづく!!!)
昔話編、2番目はまさかの
魔王夫婦馴れ初め話です。
以前後書きで書けたら書く、と言ったと思いますが
ぶっちゃけていうと、本当は書くつもりがなくて
裏話でプロポーズだけ明かしました。
が、逆にそれを読んだ友達がみたがってしまって笑
結果的にこうなりました。
めちゃくちゃ頑張ったんです、褒めてください……
告白の仕方が男前すぎて、
只者じゃない感半端ないですが
告白に至るまで、彼女なりにめちゃくちゃ
悩んでそうだな、って思ってます。
あえて書きませんでしたが、
絶対ディアボロスは不器用です。可愛いですね。
次回ですが、実は何の話書くか迷ってます笑
何かあればコメントしてくれるとありがたいです♪




