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ep1.最悪な出会い

あるところに

行き場をなくした四人の少女達がいた。


それぞれ重い過去を胸に、

自分のため、はたまた誰かのために

己を鍛えてゆく。


そして時は進み、彼女達は選ばれた。

五万といる挑戦者の中、

魔王の側近となる四天王に。


これは、リンネが生まれる前、

四天王四人が初めて出会う話であるー

         ✳︎other side✳︎


昔々、そのまた昔。

ウヨシンテに、人間と結ばれた若い王がいた。

魔王、ディアボロスである。


彼女は人間の王と信仰を結び、その後妻として人間の少女、巳胡を迎えた。

それが、この国が共存となった始まりである。


彼女の行動や言動は、ありとあらゆるものに影響を与える。

今まで異例と思われていた他族同士の交流や交際が、当たり前のようになったのだ。


当然ながら、反感を買うものもいる。

それは彼女が初めて任命した、四天王でも同じことだった。


「……納得いかないわ。せっかくこのあたしが四天王になったってのに、ごちゃごちゃ言う奴らばっかり。全員この斧でぶちのめしてやろうかしら!!」


ハーフツインテールを揺らした少女、マヒルが鼻で笑う。

鬼族は四天王では常連になるほどの強者だった。

しかし彼女、かつては魔王を倒すため、乗り込んだことすらある。

圧倒的強さは四天王選抜でも秀でており、魔王以外は話にならないと自分では思っていた。

もっともそれは、彼女達に出会うまでの話だが。


「なんか、ごめんな……オレが魔法使えないから、みんなにも迷惑がかかっちゃって……」


「はんっ、あんな根も歯もない文句言わせときゃいいのよ! あんたは自分の実力で選ばれた、だったら堂々としてなさいよ!」


「お、オレのは、魔物達がすごいだけだから……みんなの戦い方みて、まだまだなんだなって実感したよ」


この四天王は極めて異端である。

その一人が、ハーフエルフながらに魔法を使えない、ユウナギだ。

魔法が使えないながら、魔物と心を交わす力を持つ唯一無二の力を持つ彼女は、素手の戦いも申し分ない。

はずなのに、彼女は極力控えめで、自分に自信を持つことができなかった。


「そんなに卑屈になることはないと思います。ユウナギ様は魔物を従えるだけでなく、素手で上級魔族とも張り合えてました。充分に、四天王の素質はあります。もっとも、私には劣るかもしれませんが」


「へぇ? たかが人形のくせに、あんたもいうじゃない」


「私はあくまで魔王様の命令に従っただけ。こんな勝敗に興味などありません」


ななめ45度ちょうどにおじぎするのは、人形であるアサカ。

無表情かつ命令通りに動く彼女は、さながら操り人形のようで、どこか不気味さえ抱く。

彼女の全身は機械でできており、その圧倒的な命中率で他の選抜者をいぬいたのだ。


「しかし、ハーフエルフに鬼、それに人形だなんてすごいメンツだよな……みんなが色々言うのも、ちょっとわかるような……」


「それだけじゃないわよ。さっきから人間のフリしてるけど……あんた人魚族でしょ?」


ユウナギの会話を、即座にマヒルが遮る。

この中で一番美しいと言われていた少女、サヨは盗賊さながらに華麗な足捌きを披露した。

相手の姿に変えることもでき、四人の中で一番敵を圧倒し、誰しも文句なしの選出だった。

もっとも、彼女の一族を知らなければ、の話だが。


「……よくわかったわね。うちが人魚族だって」


「わかるわよ、それくらい。どこいっても人魚人魚って、あんたの話ばっかり。気に入らないのよねぇ、せっかくあたしが四天王最強の座を取ったってのに」


「……あなた、喧嘩売ってるの?」


「何? ヤる気? あたしは強いわよ?」


彼女、人魚族は魔族の中でも極めて異端である。

そんな問題児揃いの四天王を、魔族達は認めるわけがなかった。

例えお互いに力をぶつけあった彼女達同士でも、それは例外ではない。

四人の雰囲気は、どこからどうみてもわかるように、最悪だった。


「ふ、二人ともこんなところで喧嘩するなよ……えっと、そろそろ着く頃、だよな?」


「はい。地図で言うと、この辺りなはず……つきました。こちらが、魔王様が用意した四天王専用の家です」


アサカのいう場所に、一軒の家が建っている。

新築という、いかにも彼女達のために作られたものだ。

中は人魚のサヨのため水が入り組んでおり、四人住むこともあって、十二分に広くー


「マスターってすげーんだな……こんないい家用意してくれるなんて……」


「ふーん、荷物置き場くらいにはなりそうね。じゃ、あたし外で修行してくるわ」


「えっ、荷物置き場って、ここに住まないつもりか?」


「はんっ、あたしがおとなしくお仲間ごっこすると思った? 四天王なんて所詮、名前だけの繋がり。悪いけど、あたしは馴れ合う気なんてない。あたしの目的は、魔王を倒して、この世界で最強になること! それ以外のことに、時間を費やす暇なんてないわ!!」


「……さすが野蛮といわれる鬼族なだけあるわね。うち、あなたとだけは合う気がしないわ」


「なんですって?」


「家は狭いし、こんなうるさいのがいるし……生活するのには不向きね。やっぱり、自分の家が一番だわ」


そういうと、サヨは自分の姿を変えてしまう。

魚態となった彼女の身体は、人間態とは比べ物にならない美しさでー


「それじゃあ、頑張って」


「えっ、ちょまてってサヨ!! うわ、どうしよう……一緒に住めって、マスターから言われてるのに……アサカ、二人を戻すの手伝って……」


「それは、命令ですか?」


「……は? 命令、とかではない、けど……」


「四天王だから仲良くする、という命令は私には下されておりません。私には魔王城という、仕事場があります。故に、ここに住む必要性はありません。これで失礼します」


「ちょ、アサカ!!!」


そう言って、3人は思い思いの場所は帰る。

わざわざ用意してくれた、四天王用の家を置いて。


「……ぜ、前途多難すぎる……大丈夫かな、この四天王……」


彼女達は不器用だった。

相手の実力は認め合っていても、それを決して口には出そうとはしない。

家を用意したというのに、帰ろうともせず、それが魔王の命令だと言っても聞く気すらない。


魔族でも人間の間でも、ある意味話題だった彼女達は、密かにこう呼ばれていた。

史上最悪、不仲すぎる四天王と。


それは、絶望か希望か。

魔王の娘が生まれる。

同時に、ある女性の魂がこの地に迷い込んでー


「魔王様!! ようやく目を覚まされました。元気な女の子です!」


そして、物語は始まるー


(#1へつづく……)

というわけで、特別編です!

初めてお届けするのは、本編より過去の話、

そう、四天王の顔合わせです!


今作で他人目線で書くのは初めてでしたが、

内容が内容すぎてシリアス一直線になってしまい、

コメディとは?? と、終始悩ませました。

リンネって実は偉大だったんですね笑


正直、不仲すぎて頭抱えたくなりますが、

実はこの時点ですでに、

四人はお互いを認め合っています。

#6で繰り広げられた連携も、

その賜物だと思うんです。

不器用すぎやろ、って感じなんですけどね。


次回も過去編です。

まさかのサブキャラが主役です!

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