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#39.鬼の目にも、魚の目にも水は見えない

へい、リンネです!!

武道会を終え、四天王家でゆぅっくりしていたら、

元四天王プラス吸血鬼という強キャラ、

ルシェさんが到来!


サヨだけでなく、マヒルとも知り合いらしい

彼女はなにやら訳ありのご様子??

そこで私は! マヒルとサヨをくっつかせるためにも、

お守りのお礼をしてみてはと提案!!


……したんだけど、負けたらサヨが奪われちゃうという

とんでもない方向に!?


ビュービュー大きな音が、何度も聞こえてくる。

こんなにも風の音を感じるなんて、初めてかもしれない。

目を下にみやるだけで、自分がこんなにも高い位置にいるんだと、痛いほど痛感させられるー


「おっそい!!! あんた達、何ちんたらしてんのよ!!」


マヒルの怒声が、下まで響き渡る。

その勢いと、強い風が振動を与えてゆらゆら揺れる。

そんな状況に、ビクビクしつつも必死に手すりをつかんだ。


リンネです。私は今、とんでもなく危ない橋を渡っています。

どんな橋? と言われると、説明が難しいのがなんとも言えない。

高い丘と丘の間にかかる橋、それだけならまだよかったのに、下はマグマ。上は雷雲。もはや地獄のようである。

なぜこんなところに来ているのか、いうまでもなくマヒルのためでー


「お嬢、がんばれ。もう少しだぞ」


「うぇ〜〜〜ん、ユウナギ〜〜」


「……なあマヒル。やっぱり鳥に頼んで、お嬢だけでも先に行かせたほうがよくないか?」


「甘やかさないで、ユウナギ。これくらい自分でやらせなさい! アサカ、どう?」


「辺りを見てきましたが、それらしいものは見当たりませんね」


「暗いよーー怖いよーー帰りたいよーー」


「うっさいわね!! そもそもあんたが言い出したことよ! 責任とんなさい!」


うう……なんて傲慢な……

私が提案した、サヨへの贈り物対決。それがどうして、負けたらサヨがルシェさんのものになるというとんでもない勝負になってしまった。


私はね? マヒルなら大丈夫って思ったから提案したんですがね?? 何も私までつれていかれるとは思わんやん!?

結果的に、ユウナギもアサカも一緒に巻き込んじゃってるし……


「随分歩いてきたけど、本当にこんなところにあるのか?」


「私が読んだ書籍によれば、マグマの地にしかないとありましたので。アミから借りた探知機の反応的にも、ここにあるのは間違いないかと」


「そ、そういえば、何を探してるんだっけ」


「最も珍しい希少花ですね。見つけるのも一苦労ですが、中でも花が咲いている状態に出会うのが一番難しいようで……ですが、咲いた花は宝石のように美しく、見たものは幸せになるといわれてます」


お、お花だとぉ?? しかもなんじゃあ、その百合フラグビンビンなやつはぁ……

提案した手前、マヒルがサヨに選ぶってだけで心配に感じていた自分がいる。

こんな辺境の地にまでつれてこられてるし? 存在すら怪しい眉唾物ときたし?

サヨが盗賊だから、てっきり宝石系かなって思ってたんやけど……


「マヒルはなんでお花にしようって思ったの??」


「あいつ、宝石とか金銀財宝にしか興味ないでしょ? だったら、普段触れないようなものにしたかったのよ。泉の縁に自分で花植えてたりしてたから、嫌いじゃないはずだわ」


「ほえーーー……マヒルってさ、なんだかんだ言ってサヨのこと、ちゃんと見てるよね」


思ったことをまんま言った、つもりだった。

すると彼女は、途端に顔を真っ赤にさせ、必死に否定した。


「ななななな何いってんのよ!? それくらい、誰でも知ってるでしょ!? ね、ユウナギ!」


「花があるのは知ってるけど……サヨが植えたってのは初めて聞いた、かな」


「喧嘩するほど仲がいい、と言いますが……なんだかんだ、お二人はいいコンビですよね」


「だ、だから違うって言ってるでしょ!」


「そぉんなに照れるなんて、マヒルってばサヨのことすきなんじゃないのぉ??」


あえて煽るように、私がいう。

こうでもしないと彼女は自覚さえしない、なんて思ってたけどー


「あたしが? サヨを!? ふざけるのも大概にして!! 誰があんな!」


だよねぇ、そう簡単にいかな……


「クールなふりして意外と寂しがりやで笑うと綺麗で髪サラサラで身のこなし軽すぎな上で頭キレすぎなやつ!!」


………あれ??


「気に入らないのよ何もかも! 急に距離をとったかと思えば、誰かと楽しそうに話して! どんだけあたしを振りましたら気が済むのか!!」


「あのぉ、マヒルさん? さっきの悪口……ほとんど褒め言葉なんだけどぉ……?」


恐る恐る、彼女の怒りを伺うようにいう。

我に返ったのか、マヒルはさらに顔を真っ赤にさせて……


「ち、ちがっ! これはその、あれよ! あいつが出来すぎて気に食わないっていう!!」


「なあマヒル。オレがいうのも、なんだけどさ……素直に認めても、いいんじゃないか?」


「な、何を認めるっていうのよ! あたしをあんた達と同じにしないで!!」


「では逆に聞きます。もし賭けられた相手がサヨ様じゃなく、私やユウナギ様だったら……ここまで、取りに来ましたか? 気に入らない、と思うのは、サヨ様だけだったのではないですか?」


まるで尋問のようだな、なんて思ってしまう。

でもそれだけ、彼女はわかりやすい。

ここまで行動や言動で「好き」が溢れるとは、正直言って思わなかったけど。

そんなことを思っている中、マヒルは「あーー!」と、大声をあげ……


「ちょっとあれ!!! 探してた奴じゃない!!?」


と指を刺す。

その先には確かに、ぽつんと花が一輪だけあるのがわかる。

あ、あれ……でもあそこ……


「やったわ!! これであいつに勝てる!!」


「ちょ、マヒルまて! 気をつけろ! その先は崖……!」


ユウナギが叫ぶ間もなく、マヒルはかけ出す。

途端、私の視界から、彼女はふっといなくなってしまい……


「ま、マヒルーー!!!!!」


ああ……死んじゃった……せっかく、せっかく両思いだったのに……

四天王カップリングコンプの夢が……私の悲願が……


「だめっ!」


黒い、コウモリのようなはためく羽が、上空から落ちてくる。

私の上をすんごい早さで風が駆け抜けたかと思えば、抱えられている一人がマヒルの身体を一生懸命引き上げる。

間一髪。マヒルを助けたのは、なんとそれは、飛んでるルシェさんとサヨだったのだ!


「まったく、危機一髪じゃったのう。相変わらず、お主はヒヤヒヤさせるのが得意じゃな」


「屈辱だわ……まさか、あんたに助けられるなんて……!」


「元よりわしは、鼻からこの勝負に参加していない。お主をずっと見守り、お主を助けるよう言ったのは、紛れもないサヨなのじゃからな」


そういうと、彼女はふっと笑いながら、まるで身を引くように姿を消す。

するとマヒルは、なぜかサヨに逆ギレしだしてー


「サヨ! なんでここにきたの!? 危ないじゃない! ここは遊びでくるような場所じゃないのよ!」


「……それが助けてもらった態度? こうなると思ったから見てたのに。脳筋にも程があるわ」


「なんですって!!!?」


「どのみちルシェが勝ったところで、うちがいなくなるだけ。別にいいじゃない。あなたにはラブレターを渡すほど、好きと言ってくれる人がいるのだから」


そういうと、彼女はふっとその場を去ろうとする。

瞬間、マヒルはサヨの手をがっっっちりと掴んでー


「いなくなるだけ? あたしを好きって奴がいる? どーーーーでもいいわね! あたしはルシェだから勝負に勝ちたかったんじゃない。あんただからよ! あんたが、欲しかったからよ!!」


うっひょーーーー!!! 言った!! ついにマヒルが言ったよ!!


「ああもう! 恋愛なんてどーだってよかったのに! 元はと言えばあんた達のせいよ! 四六時中イチャイチャして!!」


「……なぜそこで私たちに矛先が?」


「まあ、いいんじゃないか? マヒルらしくて。な、サヨ」


「……ほんと、何から何まで勝手な人ね。うちの苦労も知らないで」


そういうと、サヨはぐっとマヒルの首根っこを掴む。

そして流れるように、唇を重ねてー

はわわわわわわ!! こ、公開キッスだと!!?


「あなたの勝ちよ、マヒル。そこまでいうなら、あなたのものになってあげる」


澄ました顔で笑うサヨは本当に綺麗で、優しそうで。

そんなサヨに、マヒルの顔はりんごのように真っ赤になっていて、それがとても可愛くて。


二人を見守る私達の横で、いつの間にか宝石のような大輪の花が、こっそり咲いていたー


(つづく!!!)

タイトルにある諺は、

「餓鬼の目に水見えず」「魚の目に水見えず」と、

二つの諺が組み合わさってます。

求めるものが身近にあることに気づかないという意味で

まさに二人にうってつけだと思いました。


本当は、花をめぐってバチクソに戦うとか、

ルシェ様無双的な展開も考えたりしました笑


ですが、結果的に、

マヒルのツンデレすぎる早口暴言、

彼女のために身を投じるサヨ、

そんな二人の背中を押すユウナギとアサカ……

と、私の書きたいこと詰め合わせ状態になりました。

何はともあれ、四天王最強ってことで。


次回、マヒルの過去です!

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