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大帝国と名門王家のつながり

「双子の姉が剣聖…… 姉の名前はローズ、ではないのですか?」


 ネイトがハッと顔を上げ、何かに思い当たったように確認する。


「いいや、マーガレットだよ」


 エイデンとケイトリンはギョッとする。

 アンジェリーナの正体は百合姫リリィで、双子の姉は薔薇姫ローズだ。

 今の話でネイトは真実にたどり着いたのだ。

 しかし、サミュエル様に否定されてしまう。


 何故、サミュエル様は否定したのか?

 何かがおかしい。


 でもここは、アンジェリーナ側の事情も、彼女の目的も、全てわかっているはずのサミュエル様を信じるしかないだろう。


「そんなわけだから、へたれな父上は、私を斥候にだしたんだ。ひとまず様子を見てきてくれってね。ついでにネイトとお世話になっているご学友においしいものを食べさせてやってくれとのお達しだよ」


 なんというか、ダジマット王族は人間味を感じる行動が多いな。

 何が気に食わないんだ百合姫は。


「これで、分かってくれたかな? 今回の件は、決して『騙されて』おびき寄せられたってわけではなく、こちらも彼女に呼ばれたらすぐに動く準備があったんだよ」


 なおも思案顔のままのネイトに、サミュエル様は苦笑いを浮かべる。


「それからネイト、君の想い人は君が想像している場所にはいないよ。


危ないマネをしたらしく、父君から謹慎処分を受けているんだ。


『困ったお転婆娘だが、迷惑でなければ婿殿に預かってもらえたら少しは大人しくするんじゃないか』って、父上のところに依頼が来ているから、来週父上が来るまで君もここで待っているんだよ。いいね? 本当はサプライズにしたかったんだけど、どうやら失敗したみたいだからね……」


 なにっ?

 ここへきて、亜空間から想い人の登場か??

 エイデンとケイトリンは、驚いた。

 先ほどの話から目先を変える話術に乗せられた気がしなくもない。


 ネイトは、もっと驚いてガタリと立ち上がった。

 声も出せず、サミュエル様に向かって何度も頷いている。


 エイデンとケイトリンの驚きから、ネイト側から話を聞いていないとバレてしまったのか、サミュエル様は、ネイトに手振りで座るように促したあと、再び話題を変えてしまった。


 王族教育で表情を表に出さないようにと重々言われてきたが、失敗を重ねてはじめてその重みを感じたエイデンとケイトリンである。


「ところで、君がジジと関わる気がないことは分かったけれど、彼女に守ってもらったことについて、お礼ぐらいは言っておいた方がいいんじゃないかな?」


(((守る? なんのこと?)))


 混乱する3人にサミュエルは解説する。


「今日、スイーツと夕食の材料を買うためにマーケットを案内してもらったんだけど、その時にジジに変装魔法を掛けてもらったんだよ。私たちの本来の姿じゃ目立つしね。茶目と茶髪のかわいい兄妹を装って買い物したんだ。


 その時、ジジが思い出したように『コーニック卿の変装魔法を修復して解けないように強化した』と言っていたよ。君、ダンスの時に驚いて瞳の色が素に戻りかかっていたらしいじゃないか」


 え? マーケットって? 護衛なしで市井に出たの?

 かわいい兄妹って…… 自分で言っちゃう?


 いやいや、そこじゃない。

 変装魔法が解けていた?


 しかし、修復? いつのまに? どうやって?


 3人の顔に特大のはてなマークが浮かんでいる。


 あのダンスの時、アンジェリーナは、アッシュに見惚れていたわけではなく、変装魔法を解析して修復していたのだった。


 恋に落ちるどころか、へたすると魔術の解析に忙しくて、まともに顔として鑑賞する余裕がなかった可能性まである。


 傍目に運命の恋の瞬間みえる劇的な場面でも、本人たちは全く別のことに忙しかったのだ。


「かの方は、私の正体に気づいているんですか?」


 いち早く気を取り直したネイトが、彼にとっての最重要事項を確認する。


「ジジは、コーニック卿がダジマットの第4王子であることには気付いていないよ。それにコーニック卿の話はほとんどしなかった」


 ネイトは安堵を浮かべる。


「それじゃぁ、デザートにしようか? 今日のソルベはジジと一緒に作ったんだ。彼女、氷魔法も得意でね。上手にできたよ。一緒に食べていきなよって言ったんだけど、コーニック卿にご迷惑をおかけするのは心苦しいと言って頑なでね」


 いやいや、一緒にソルベづくりって、仲良すぎじゃないか?

 てか、百合姫はコーニック邸に来たのか?

 隠し子というような後ろ暗い関係ではないということか?

 王家の色が出てしまった遠い親戚とか?

 ダジマット王家、意味が分からない。


「ネイト、君もダジマットなんだから、君が話を聞いてあげてもよかったんだよ。あんなにかわいい子なのに夕飯にも誘えないなんて、寂しいよ、兄さんは」


「いえ、兄上、私は今、ダジマットではないのですよ。ブライト籍のアッシュ・コーニックです。帝国に行きたいと言ったら、勘当されてダジマット籍から外されましたから。万が一、例の子爵令嬢が反帝国勢力だった場合、帝国への扉が完全に閉ざされかねませんから」


 ん?

 帝国へ行きたいと言ったら、勘当された?

 追放されてから、帝国へ行こうとしたんじゃないってこと、か?


「っはは。ごめんごめん。そうだったね。情勢不安定な帝国にダジマットの王子が押しかけては、国際問題に発展しかねないからって、王籍を抜かれて王子としては動けなくなったんだったね。


ははっははは。すねちゃって。


なるほど、ナサニエルもかわいいね。はやく君の情熱を傾けるものに気付けるといいね」


 一瞬ではあったが、ムッとした表情を出してしまったネイトを楽しむように、サミュエル様は笑っている。


 え?

 ちょっとまて?

 今の感じたと、ネイトは王との口論の末に勘当されたって感じに聞こえるが?

 僕たち、今、とんだダジマットお家騒動の内情を聞かされているのでは?


 もしかして、ネイトの想い人って帝国に潜入したスパイだとか?

 危ないことって、百合姫の暗殺とかじゃないよな?


 それに、まぁ、この雰囲気だったら、大丈夫だよね?

 よね??


 最終的には、サミュエル様から「ネイトの子守をありがとうね!」っとあたたかい感謝の言葉とおいしい焼き菓子を頂戴して帰途についた。



 帰りの馬車のなかで今日あったことを振り返る。


「セントリア皇家にしても、ダジマット王家にしても、想像を越えて得体の知れない存在ですわね。正直自信をなくしましたわ」


 はじめて弱音を吐いたケイトリンに懸ける言葉が見つからず、もどかしいエイデンは、そっとケイトリンの手を握った。

 心のどこかがきゅんとした気がしたのは、疲れていたからだと思うことにした。


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