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不仲な王子とその婚約者

 この事態に頭を抱えた一組の男女がいる。


 「運命の恋人たち」と同学年にしてこの国の王子エイデンとその婚約者ケイトリンだ。



 ナース王子エイデンと侯爵令嬢ケイトリンは、純粋な政略で結ばれた婚約関係である。


 エイデン目線で「クソ真面目で非難がましい」ケイトリンと、ケイトリン目線で「チャランポランで頼りない」エイデンは、決してウマが合うとは言えない。


 それでも、国政に影響しないように表面を取り繕うぐらいの倫理観はあった。


 できるだけ接触を減らすことで決定的な衝突を避ける「非接触戦略」で、これまで乗り切ってきた。


 二人の合言葉は「Agree to disagree」。

 意見が合わないことについては同意している、そんな仲だ。



 そんな不仲な二人に試練が与えられたのは、半年前のことだった。


 ある日ナース王に呼び出された二人は、「2つの大国から要請を受け、密かに貴人を王立学園に留学生としてお預かりすることになったから、ご両名を重々よろしくお世話つかまつるように」と命じられた。


 一人は23の国を併呑してできた大帝国セントリアの第2皇女リリィであり、もう一人は最長の歴史を誇り魔法国連盟の盟主を務める名門王国ダジマットの第4王子ナサニエルである。



「お二方とも明日の13時にご挨拶にみえるから、学園のことなども含め、ご両名がつつがなく暮らせるように心を配ってくれ。」


 急な話の上に、時間も場所もバッティングしていた。

 父上は、ザル過ぎる!

 エイデンは頭を抱えた。



 ひとまず、エイデンがナサニエル王子を担当し、ケイトリンはリリィ姫を担当することに合意し、基本は「非接触戦略」を継続しつつも、必要に応じて連絡を取り合うことにした。



 この時の2人の貴人こそが、セントリア皇国からの留学生アンジェリーナ・シュアーレン子爵令嬢とブライト国からの留学生アッシュ・コーニック伯爵子息なのである。



 その3ヶ月後に、ミニ舞踏会で学園中を感動の嵐に包んだ「運命の恋人たち」の正体は、本物のプリンセスとプリンスなのだ。


 ただのプリンセスとプリンスではない。

 世界の半分を傘下に治める大帝国のプリンセスと、名門中の名門王家のプリンスだ。


 弱小国ナースの学生の目に「神々しい」と映っても不思議はない。


 それぞれ別のことに気をとられていたが故に素が出てしまった皇族と王族のダンスは、世界最高峰の優雅さに満ちていたであろう。


 社交の実体験を積んでいない学生達は、「技術として雲の上レベルを見せつけられただけだ」ということに気づかず「霊験あらたか」な気持ちになって「神のご意志」を感じてしまった。


 だからといって、小国の学生の分際で大帝国のプリンセスと名門王族のプリンスの関係性をどうこうするなんて、恐れ多すぎて、絶対にムリゲーなのだ。


 へたすれば重篤な国際問題に発展しかねない。


 この騒ぎは沈静化させなければならない。


 可及的速やかに!!


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