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エピローグ、不仲だった婚約者たちのやらかし

 次の吉日、仲人のナース国王より、セントリア第2皇女リリィとダジマット第4王子ナサニエルの婚約が発表された。結婚式は二人の成人を待って執り行われることとされた。


 ナース国民は、その数日前に発表された次代ナース国王エイデン在位期間中のセントリア、ダジマット両大国からの関税撤廃条約は、ここにつながるのかと納得し、国中がお祭りムード一色となった。



「父上!全て知っていたんですね。どうして教えてくれなかったのですか?」


エイデンは、父王に詰め寄る。


「どうしてもこうしてもないよ。お前たち両大国の縁談を潰すところだったという自覚があるのか?」


「ありますよ! もっと早くにお二方と交流を深められていれば、お二人の秘密をもっと早くに共有していただき、早期解決に繋がっただろうと反省するばかりです。


それもこれも、僕たちの政治的な技術が拙かったために、お二人が僕たちに頼ることができなかったという事実を重く受け止め、これから見識を深め、王族として邁進していく所存です。」


悔しそうな顔のエイデンに、父王は頭を振って、溜め息をつく。


「あぁ、これは、分かってないな。ご両名が到着なさったときに、私が手配したとおりにお二人を引き合わせていれば、それで万事上手く流れる手はずだったんだよ?」


「え?」


「え? じゃないよ。いっただろう? お二方とも13時にお見えになるって。ご両名をよろしく。って。


そこで、ナース国の手違いによって、偶然同じ時間に同じ場所にブッキングされてしまったリリィ殿下とナサニエル殿下は、


『まぁ、わたくしが急に押しかけてしまったのがわるぅございましたのよ。お気になさらないで』

『私も急に押しかけちゃったんですよ。こういうことって重なりますから。こちらこそ失礼したね』


とかなんとか言ってその場を取り繕ってくださる。さらりとお互いを確認し、後日、会う約束を取り付け、お前たちのいないところで、


『あぁ、貴方が私の婚約者ですか。探していました。会いたかった』とよろこんで、


『お仲人さんが上手く計らってくださったのですね』っと感謝して、


『あら、貴方の耳飾りの色は、わたくしの瞳の色ですわ、ほら、ご覧になって?』、『おや? サム兄さんと同じダジマット王家の色だね。そうそう、このピアスは、マシュー兄さんがくれた魔道具なんですよ』てな感じで、家族の了承を察してお互いに変装を解く、


『百合姫といえば、百合姫のテーマカラーはオフホワイトで、ローズがくれたネイビーブルーのデイドレスは新鮮でお気に入りですの。貴方の髪色だったのですね』とほっこりして、


『リリィ殿下のお顔はどうみてもダジマットですね』、『ナサニエル殿下のお顔はどうみてもセントリアですわ』と気付いて、


『アンジェリーナ? それはきっと父がつけた名前ですね?』、『アッシュ? アシュリーの略称ですわ。あなたはきっとローズの双子の弟ですわ』っと納得して、


『なるほど。なるほど。私たちは入れ替えて育てられたのですね』と理解する。


『とりあえずどちらかの家で一緒に住みますか? わたくしの家はクラシックで閑静でしてよ』、『私の家は割とモダンで繁華な場所にありますね』っと、相談して、


『ナース国でのんびり学生もいいですけれど、気分転換に移住でもしますか?』、『まぁ、よろしいわね、わたくしはダジマット王族から籍を抜いていないセオドアお義兄様の帝国シュアーレン子爵に属していますから、帝国とダジマットで暮らせます』、『私は7か国に相談役滞在できる特殊ビザを持つ貴方のお爺様のコーニック伯爵に属していますから、もう少し可能性は広がりますよ』なんて展開にも対応できて、


『ナース国のエイデン王子と婚約者のケイトリン様は、ドジっ子を装って、わたくしたちの顔合わせを取り計らって下さるなんて粋ですわ』、『あぁ、ありがたいことですね。大きな借りを作ってしまったね』っと、


君たちに何一つ開示することなく、ご両名が何の不安も心配もなく、仲良くのんびり暮らせるように両国のご家族がしっかり準備して、それぞれが祝いの品を贈っておられたのをぶち壊したんだよ。


わかるかい?」


 エイデンとケイトリンは青ざめた。

 いや、青を通り越して、白くなった。


「お前たちは『ご両名』を引き合わせなかったばかりか、半年間もの期間、徹底的に接触させなかったのだろう? そのせいで百合姫は御身を衆目に晒すことになり、その上、ナサニエル殿下をナースから追い出そうとしていた気配まであるということじゃないか。なにがやりたかったのか? 『ご両名』という言葉を聞けば察することができるだろう? 二人はパートナーで、それは公に口に出せないことだって」


 ナース国王は小さく溜め息をのみこんで言った。


「全部知っていたのかって? 知っているに決まっているだろう? 7年前に秘密裏にご両名の婚約を仲人したのは、私と王妃なのだから。


それを今回は同じ年頃の君たちに花を持たせようとしたのは、親心ってもんだろ?」


「「た、たいっへん申し訳ありません!!!!!!」」


 事態の全容を理解したエイデンとケイトリンは、心の底から謝罪する。


「「お二人にもお詫びに行ってまいります!!!!!」」


エイデンとケイトリンは、手をとりあって駆け出したのであった。


この第15話が物語としてのエンディングです。


第21話まで後日談という名目で本編から削った内容を更新します。

よかったら読んで見てください。

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