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帝国皇女の想い人

「ナサニエルがブライト国へ向かったことが分かったから、リリィ皇女名義で『貴方が望むならわたくしが貴方を保護します。』って手紙を書いて、マシュー義兄様にナサニエルが来たら渡してくださいってお願いしたの。


この場合、マシュー義兄様もナサニエルもダジマット籍から外れてるんだから、リリィ皇女名義で連絡をとってもOKのハズよね。


そしたら、マシュー義兄様から『サミュエルから手紙が来た後、ネイトはどこかへ行ってしまって、たぶんしばらく帰ってきません。』って、返事がきて……」


(リリィ皇女、反則技、使いすぎじゃね?)


「マシュー義兄様が追伸で、剣術修行で放浪しているテオ義兄様を居場所を教えてくれたから、訪ねて行って、帝国籍のシュアーレンの姓を貸してくださったことにお礼をいって、『ナサニエルに会いたいんです、どうかお知恵をお貸しください』ってお願いしたところで、時間切れ。


学園とやらが始まるから、ナース国に入らなければならない日が来てしまったの」


(どんだけ行動力があるんだよ、このお姫様。)


「リリィとセオドア様は仲がいいの?」


「えっと、わたくしではなくて、ローズとテオ義兄様が剣トモなの。


わたくしは、ダジマットの第1王子セオドア様に会いに行ったのではなくて、姉の剣トモに会いに行ったのよ。そこのところ、よろしくね」


(お得意の反則技だね。りょーかい。)


「ローズは、『リリィが不本意に帝国外に出ることがある場合は、必ずこの籍を使うように伝えてくれ』って言われて身分証を預かっていたのですって。


調べたら、わたくし、テオ義兄様が叙爵された時点からずっと妹としてシュアーレン子爵籍に在籍していたのよ。


それで、わたくしがダジマットの血を引いていることが確定したも同然ね。


ローズも知っていたのね。きっと」


(薔薇姫とセオドア様が剣トモか。僕も外国の王族の友達を作るべきだな)


「『いざというときには帝国大使館に逃げ込める帝国籍だから、思いっきり自由に振る舞いなさい!』って、テオ義兄様はおっしゃって。


剣にしか興味がなさそうなテオ義兄様が「ダジマット淑女ブック」と「ナース淑女ブック」を下さったのよ。


真面目な顔して『リリィは帝国淑女属性が強すぎるから、この本の2国の真ん中を攻めなさい』って。


きっとローズに言わされてるのよ。もう、おかしくって。


わたくしの宝物。


わたくしの総力をもってド真ん中を攻めたわ!


奥方様がローズから預かっていたネイビーブルーのデイドレスを下さって。


わたくし、百合姫だから皇室PRのメインカラーがホワイト系で、いつも淡い色ばかり着ていたの。


だからその色が新鮮でしょっちゅう来ていたわ。


ナサニエルの髪の色だったなんて。


照れちゃうわ」


 ケイトリンは、ぐずぐずと鼻をならしている。同じ女性として感じるところが多かったんだろう。


「リリィによく似合っているわ」


「ふふっ。だから、学園一の美女に選ばれたとき、わたくし心の中で『テオお義兄様! わたくし、やりましたわ!』って、心の中でガッツポーズいたしましてよ」


(ぽかーん)


「何をぽかーんとしていらっしゃいますの、ケイトリン。わたくし、テオ義兄様に頂いた本の帝国淑女版を探して、貴方にもお送りいたしますわ。来年は、頑張って!」


(この方はこんなキャラだったのか?)

(実は、そうなの)



「それにしても、ナースの信義誠実主義、恐るべし。ね。


ナサニエルは、あなた方にすっかり綺麗に隠されちゃってて、全然みつからなくて、


『もしかして、もう…』なんて、頭の片隅に過ることがあって、ツラかったわ」


(そういえば、シュアーレン嬢は物憂げな表情で心ここにあらずという学生の目撃情報もあったな。)


「だから、わたくし、隠したい人ができたら、あなた方を拝み倒して協力を乞うことにするわ。


えぇ。それがいいわ。バッチリ信頼できるもの。


ナサニエルがサム義兄様の指示で行動しているのであれば、最悪の事態は避けられるでしょ?って、思いつつも、何の手がかりもつかめないと「許すまじダジマット王!」という気持ちが高まってきて、困りましたわ」


(相当恨まれていますわね、ダジマット国王陛下。)

(幼いころのギャン泣き事件よりこっちの方がヤバそうだよな)


「そのあと、例のダンスパーティーで、コーニック卿が驚いてパパ譲りのライトグレーの瞳の色をさらしちゃったことで、帝国の皇位継承者アシュリーを発見した。


ブライト国コーニック伯爵について調べたら、パパを育てたグランパが持っている爵位の1つで、アッシュ・コーニック伯爵令息は、生まれた年からコーニック伯爵家に所属していたの。


わたくしが皇帝を目指すと決めたらセントリアの正しい継承者が見つかるのだから、皮肉よね。


でも、こちらは緊急性はなくなったから、ローズに手紙を書いて、彼女がアシュリーに会いたければまた動きましょ。ってことにしましたの。


そして、ナサニエルを見つけられないまま、学園の方が運命の恋人たちのための嘆願書なんて事態になっちゃって、


これ以上、ナース国に迷惑をかけられないから、パパに『ごめんなさい。ローズの弟は見つかりましたが、私が帝位を目指して頑張りたいです。彼はそっとしておくので、迎えに来てください』って手紙を書いたら、サム義兄様が出てきたの。


最初は、パパがサム義兄様を呼んでくれたんだと思ったの。


でも、アシュリーがサム義兄様と親しくて、教えてくれたって。


そして、アシュリーは、自分が帝国皇子だと知らないって。


あぁ、私がパパとママに引き取られた代わりに、アシュリーはダジマット王家の後ろ盾の下、帝国外でコーニック卿に引き取られて匿われていたのねって。


うん。安全だわ。


サム義兄様と私に茶目・茶髪の変装魔法をかけた時、アシュリーの耳飾りがサム義兄様の瞳の色とおんなじダジマット王家の色だったことに気付いて、感謝の気持ちでいっぱいになったわ。


あの色の装飾品を与えられたのであれば、大事にされている証拠だわ。

ローズの弟を庇護下に置いてくれてありがとう。って胸がいっぱいよ。



それから、ナサニエルは元気にやってるって、教えてくれて。


「情熱を傾けられるもの」を探すために、いろいろなことに挑戦してるって。


積極的に外に出ていろんな物事を見聞してるって。

最近は何か調べものをしていることが多いから、マシューお義兄様みたいに研究肌なのかも?とか。

いろいろ教えてくださったわ。


でも、もう、居場所は聞かなかったの。

聞いたら、会いに行きたくなるでしょ?


ナサニエルが元気に暮らしてるなら、私はもうそれで十分。


だから、婚約は破棄して、国に帰って皇帝を継ぐために頑張ります。

お騒がせしてごめんなさい、ってお詫びして。


わたくし、泣いちゃって。


あのサム義兄様が慌てていらしたわ。


『ナサニエルの大好物のラズベリーソルベの作り方を教えてあげるから、一緒に作ってたべよう』って。

『甘いものを食べたら落ち着くよ』って、励ましてくださいましたの。


最後に、ナサニエルを放逐したお義父様は大嫌いだけど、お義母様ともお話してみたいし、一度だけでよいのでご挨拶をさせてくださいって、サム義兄様にお願いしたの。


そしたら、お義父様とお義母様は、すぐに来てくださった。


『ごめんなさい。わたくしはダジマットへはお嫁に行きたくありません。セントリアの帝位を継ぎたいです。ナサニエルとの婚約は破棄させてください。』ってお願いして。


『ナサニエルは、とても良い方です。できればどうかわたくしだと思って大事にしてあげてください。』って、ダメ押しして。


そしたら、今度は、アシュリーがやってきて、『私はナサニエルです。結婚してください。』って」


 百合姫は、一呼吸ついて、息を整える。


「『はじめまして、ナサニエル。わたくしがリリィです。ごめんなさい。わたくしはダジマットへお嫁に行きません。


でも貴方に困ったことが起きたらわたくしの持てる総力を持って助けますから、遠慮なく頼ってくださいね。


帝国は強いんですから、絶対に遠慮しないでくださいね。』っていったの」


 淡々と話す百合姫の瞳から涙がポロポロこぼれている姿が、ダジマット王の姿に重なった。「にっくきダジマット王」に似ていると言ったら、百合姫は怒るだろうか?


 そんなことがエイデンの頭に浮かんだ。


 たまらなくなってリリィを抱きしめているケイトリンは、しゃくりあげながら、泣いている。

 いつかの号泣事件以来、ケイトリンは泣き上戸だ。


「そしたらナサニエル、『なにいってるんですか?、リリがお嫁に来れないなら、私が婿に行きますから、お願いですからどうか私と結婚してください。』って、抱きしめてくれて、キスしてくれて。


『はい。大好きです。ナサニエル。』って、言っちゃったの」


「よかったね。よかったね」


 百合姫よりも激しく号泣しながら喜びを分かち合うケイトリンをギュッと抱きしめたくなったエイデンだった。


 というか、おい!ネイト!!

 君は手が早すぎないか?

 求婚を受けてもらえる前からキスしたのか?

 自己紹介から3分ぐらいじゃないのか?

 どう考えても早すぎるだろ?


「それから、公園へ行って、気持ちを落ち着けてから家に戻って、パパとママに『ごめんなさい。わたくし、将来皇帝になりたいです。ナサニエルとも結婚したいです。よくばりだけど、どっちも欲しいです。』って、言ったの。


パパは『うん。頑張ろうね。』って言ってくれて、ママは笑顔で頷いてくれて。


それから、わたくしたちの人質交換の経緯を説明してくださったわ。」

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