表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/51

番外編短編・異世界のごはん

 春になった。私と真白さんは、結婚準備をすすめており、今年の秋頃式をあげる予定だった。本当は式をあげる予定はなかったが、牧師の香織さんの強いすすめにより、あの教会で式をあげる事になった。


 一方仕事も順調だった。新しく企画も通り、異世界もののライトノベルを執筆中だった。ご飯が不味い異世界に転移したヒロインが、日本食を広めていくというストーリー。


 原稿はほぼできていたので、真白さんにゲラを読んでもらったら、なぜか怒られた。


「雪乃、何で異世界のご飯をこんな悪く書いてるの? っていうかこの異世界ってイギリスがモデルだよね。英国カフェをやっていた僕としては、許せない描写だね」


 昼下がりで他にフードトラックの客がいない事を良い事の、真白さんはイギリスのお菓子や料理がいかに美味しいか力説。店の売り物であるイングリッシュマフィンも取り出し、「これが不味いと言えますかー!?」とぷんぷん怒っていた。


 やっぱり真白さんはお菓子や料理の事になると、こだわりを発揮するようだ。


 確かに真白さんから手渡されたイングリッシュマフィンは、ハムやソーセージとピッタリあい、美味しかったが。


「でも、これはそういうお約束なのよ。もう編集部からも許可出てるし、今更変えられないのよね」

「そっかー。でも次書くときは、イギリスをモデルに異世界の料理書くのはやめてね!」


 やっぱりこだわり深いようだ。まあ、そんな所も真白さんらしくて良いのだが。


「でも不味い料理なんて思い浮かばないの」


 私は真白さんと付き合いはじめてから、ほとんど三食作って貰っていた。お陰で不味い料理のイメージが全くできない。


「昆虫食にしたら?」

「え、昆虫食?」

「ネットで見たら、コオロギやバッタを食べるのは流行ってるらしいね。キモいね。彩りも最悪だし、僕たち料理人に喧嘩売ってるとしか思えないよ」


 確かにネットで調べりと昆虫食が密かなブームらしい。環境保護の観点から流行っているそうだが、さすがにこれは……。


「なんか、昆虫食調べてたら気持ち悪くなってきた。ティラミスラテ作ってくれる? 心理的に口直ししたーい」

「オッケー。でも異世界の不味い料理は、昆虫食でいいよね」


 確かに真白さんの言う通りかもしれない。誰がどう見ても一発で不味い料理と描写しやすいではないか。


「ありがとう。やっぱり、真白さんと居ると作品のアイデアが浮かぶみたい」

「どういたしまして!」


 真白さんはニコニコ笑っていた。


 カウンター越しだったが、もう彼はマスクをしていないので、こんな笑顔を見られる。私はとても嬉しくなってしまった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます! 2人が幸せになって良かったです。
2023/05/14 14:04 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ