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おいしい時間〜小さなお菓子の物語〜  作者: 地野千塩


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第15話 お好みのスコーン

 

 規則正しい生活は、思った以上に生産性を高めていた。


 朝、真白さんのフードトラックで朝食を買って食べ、仕事し、昼ご飯をたべ、また仕事。夕方から夜は休んで、肉を中心としたタンパク質多めの夕飯を食べる。その後は本を読んだり、インプット中心の勉強。風呂に入り、スキンケアなどをして22時にはベッドに入って眠る。そんな生活が続いていた。


 昔は徹夜なども当たり前だったが、それで生産性が上がったといえばそうでもない。


 こうして規則正しい生活リズムをこなしていると、身体の調子もよくなり、仕事も効率よく終えていた。やっぱり健康は第一だと思わされた。


 真白さんのフードトラックは、ずっと同じ時間と場所で営業して貰いたいものだが、なかなかそうもいかない。真白さんも朝の駅前での営業が終わったら、別のベーカリーでも探しても良いだろうと考えていた。


 そんな規則正しい生活の中、大手ネット書店のレビューで再び自作が酷評されていた。前にもあった事なので、あまり気にしたくは無いが、一応商業でた作品となると、責任も感じて胃が痛い。


 また、私の私生活を勝手に決めつけられたレビューも書かれており、「お、おぉ……」としか言えない。人によって好みがあり、見え方が違うのは承知していたが、自分の予想を超えたレビューがつくと、良い気分はしない。


 朝から、こんなレビューを見てしまい、ちょっと鬱々とした表情を真白さんに見せてしまった。


 今日はスコーン祭りで、ノーマルなイギリス田舎風のスコーンだけでなく、アメリカンスコーン、チョコスコーンもある。甘い系だけでなく、チーズスコーンやポテトスコーンなどもあり、カウンターの上はかなり華やかなのに。


「お客さん、ちょっと顔暗くない?」

「実はねー」


 常連の気やすさと後ろに客がいない事を良い事に、ちょっと愚痴ってしまった。


「まあ、変なレビューなんてよくあるんだけど、時々しつこいのとか、的外れ過ぎるのもあるのよねぇ」

「そっかー。でも、人の好みは人それぞれだからね。よく日本人はイギリスの料理はやお菓子をバカにしているけど、僕はそう思わないよ。このスコーンだってイギリスの田舎風のもあるし。っていうか他国の人の食生活にケチつけんなよーって感じ。正しいか間違ってるわけじゃなくて、好きか嫌いかっていう好みの問題だよ」


 珍しく真白さんはハッキリとものを言っていた。それだけお菓子や食べ物について、こだわっているのだろう。


 確かに自分は何気なく他国の食を馬鹿にしてた面もあった事に気づく。日本食は確かに美味しいが、だからといって他国の食を見下げて良いわけでもない。好みは人それぞれだ。


 そう思うと、自分の作品に変なレビューがつくのもある程度は仕方ない気がする。自分も他人を一方的に主観でジャッジしていないか?と問われたら、自信をもってそうとは言えない。


「それで、今日はどのスコーンにする? どれも自信作でおススメだよ」

「そうだなぁ。やっぱり迷うけど、イギリスの田舎のスコーンが美味しそうね。形も1番大きいし」


 こうしてスコーンを選び購入した。


 自分がこのスコーンを選んだからと言って、他のスコーンの価値や美味しさが変わるわけでもない。


 まさに好みの問題と言っていいだろう。


「このクリームたっぷりつけて食べてみて。後イギリスのスコーンには、紅茶があうからね。おススメだよ」


 真白さんの熱意に押され、スコーンを購入し家に帰った。


 途中で通勤途中のサラリーマンやOLとすれ違う。


 やっぱり自分は世間と逆行して生きていると思わされるが、どっちが正しくて間違っているわけでもないだろう。


 家に帰ると紅茶を淹れ、クリームたっぷりつけたスコーンを楽しんだ。朝とは思えないぐらい優雅な時間だった。


 一般的に働いていたら、こんな時間は持てないだろう。世間と逆行している生活でも悪い事ばかりではないのだ。この生活は少数派なだけで、間違っているわけではない。


「美味しい!」


 大きなイギリスの田舎風のスコーンを頬張りながら、口の中は幸せで溢れていた。

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