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極東救世主伝説  作者: 仏ょも
1章・入校~夏休みまで
7/111

7話。Aクラス

ここから登場人物が増えます(出番があるとは言っていない)


本日から一日一回の投稿になる予定です。

思いがけず至近距離で綺麗で新鮮(?)な沙羅双樹の花を観賞することになったものの、紳士的な態度を保ったまま無事教室に辿り着くことに成功した俺は、来るHRに向けて心を静めていた。


なにせこれからあるのは入学してから最初のHRだ。ここで行われる自己紹介というイベントの成否によって、これからの三年間をボッチで過ごすのか、それとも友人と和気藹々と過ごすのかが決まると言っても過言ではない。


卒業したら軍人になって離れ離れの任地に飛ばされると思えば友人づきあいよりも鍛錬に重きを置くべきだと思うが、それでも同期の桜というのは結構な重さがある……はずだ。


いや、実際軍人になったことがないからわからんのよ。


場合によっては派閥の関係で敵対したり出世争いとかもありそうだから変に仲良くするのは駄目ってケースもあるみたいだしな。


まして外面はともかく中身はオッサンなことを考えれば、全員と距離を置くというのも悪くはないように思えてくるから不思議である。


(そもそも前世の記憶があるってバレたらどうなるんだろうな? 普通なら狂人扱いで終わるだろうが、天才扱いされていたことや魔晶の適合率が高いっていう実績がある以上、徹底的に調査されたりするんじゃないか?)


「よし。全員揃っているな」


脳内で小さい俺が『どうせ酷いことするつもりでしょ! 第二次救世主計画に協力させられた少年みたいに!』なんて騒いだので『絶対に知られないようにするぞ!』と心に決めたとほぼ同時に担任の教師らしき女性が入室してきた。


年齢は20代後半から30前後くらい。身長は160くらいだろうか。全体的に細身だが重心が安定している上に隙が全く無いのでかなり鍛えていることがわかる。髪は金髪で髪型はショート。顔つきを見て(どっかで見たな?)と思って観察してみたら、すぐに分かった。


硬質なギアをゾリットするゲームに出てた人で、永遠の17歳の人が中に入っていた人だ。


つまり、冗談が通じるかどうかはわからんけど、間違いなく逆らったら駄目なタイプの人である。


軍人が上官に逆らったら駄目なのは当たり前なんだけど。より一層注意が必要なタイプと見た。


あだ名はボスに決定。異論は認めない。


「早速HRを始める。まずは自己紹介からだ。各自名前を名乗るだけでいい。ちなみに私は貴様らの担任になる久我静香(くがしずか)、階級は少佐だ」


ボスは端的に自己紹介をしつつ、俺たちがやるべきことを教えてくれた。


それが一言挨拶や趣味を省いた自己紹介だ。

さすがはあの歳で少佐になるだけのことはある。大したものだ。


さっさと終わらせることで時間を短縮するという意味合いと、自己紹介が苦手な生徒もいるのでそれに対する配慮をしたのでしょう。進学校に於いて授業を控えた優秀な担任がやることがあると聞いたことが無きにしも非ず。


などと、どこぞのメガネのような解説を入れてみたが、実際重要なのは教師が生徒のことを知っているかどうかであって、俺たちが互いの事を知っているかどうかではないからな。


今の段階で上辺だけの情報を貰っても俺たちにとって無駄にしかならない。かといってクラスメイト、つまりは同期の人間の名前を知らないのは問題がある。そう判断して無駄な情報を省いた形にしたのだと考えれば、ボスの提案は多少そっけないものの真っ当な提案だと思う。


というか軍学校の自己紹介を知らんので、これが当たり前かもしれないけどな。


「順番は主席から成績順だ。さっさと始めろ武藤」


「……はい」


自己紹介する順番を伝えられたと同時に名指しされたのは、入学式で総代として挨拶をしていた少女だ。立ち上がる前にちらりと俺を見た気がしたが。多分気のせいだな。


武藤沙織(むとうさおり)です」


ふむ。主席は武藤沙織。ちい覚えた。


身長は担任と同じくらいだろうか。黒髪でストレートの髪は腰まで伸びている。じっくり見るのは失礼だろうから身体的な特徴は言わないが、あまり起伏が目立つタイプの人ではないようだ。姿勢に乱れがないので武術の経験者だろう。あと軍人というよりはいいところのお嬢さんって感じがする。


「次」


「はい。藤田一成(ふじたかずなり)です」


次席は藤田一成。覚えた。身長は俺より高い。おそらく175くらいか? 体幹に乱れがないからこの人も結構鍛えている感じだ。髪の色は黒でショートカット、というのだろうか。耳が出る程度の長さだ。


この二人が色々下駄を履いている俺よりも成績が良かった本物の天才である。仲良くなれるかどうかはわからないが敵対はしないようにしておきたいところだな。


「次、と言いたいところだが飛ばして4番」


「え?」


気合を入れようとしたところでまさかのスキップである。

虐めか? 教師による虐めの発覚なのか? 


「何か文句でもあるのか?」


「ありません!」


ボスには逆らわない。ついさっきだが俺はそう決めたのだ。いや、これが本当に虐めだったら報復するが、今はまだわからんからな。まだ焦る時間じゃない。


「では次」


「はい。五十谷翔子(いそたにしょうこ)です」


なんと。4席は先ほどの沙羅双樹さんだった。名前よりもそっちのインパクトが強いので間違って呼ばないように気をつけよう。相変わらず睨んでくるが、成績で負けたのが悔しかったのかもしれんね。


「次」


「はい。笠原辰巳(かさはらたつみ)です」


5席は男性。身長は俺より少し低め。髪型はツーブロック。

初対面のくせに五十谷さんよりも睨んでくるのは何故なのか。成績で負けたのが悔しいのなら勉強したまへよ。


「次」


「はい。田口那奈(たぐちなな)です」


6席は小柄な感じの女性。だが胸部装甲はある。髪はこげ茶っぽい色でゆるふわな感じとでも言おうか。まぁゆっくりしてそうな感じの人である。ただし軍人を志してこの学校に入学し、さらにAクラスに入ることができるってことを考えれば決して見た目通りの人ではないだろう。


俺を睨んでこない人なので印象はとてもいい感じ。


「次」


「はい。橋本夏希(はしもとなつき)です」


7席も女性。身長は俺と同じくらい。髪型は後ろで一つに纏めた所謂ポニーテールで、髪の色は銀色で、体格は細身。東欧系の血が混ざっているのだと思われる。

なにせ第二次大戦が中途半端に終わったので俺が知る歴史のようにソ連は日ソ不可侵条約を破っていない。そのうえ、外交的に色々とやらかしているため、あそこら辺の国との国交もそれなりにあるのだ。

国家間の繋がりはさておき。特徴的な人なので忘れることはないだろう。


「次」


「はい。福原巡嗣(ふくはらじゅんじ)です」


8席。男。でかい。説明不要。

いやマジな話、190センチくらいあるのではなかろうか。しっかり鍛えこんでいるので威圧感が凄い。金髪で坊主頭なこともあって、なんというか『システマやってます』感が凄い。(※個人の感想です)


「次」


あきらかに学生離れした体格と雰囲気をもつ福原くん。いや福原さんを無視するボスもボスだと思うが……あれ? もしかして気にしているの俺だけ?


周囲の無反応っぷりに慄く俺を無視して自己紹介は続く。


「はい。小畑健次郎(おばたけんじろう)です」


9席も男。福原さんほどではないが彼もでかい。180センチくらいはあると思う。正直羨ましい。

髪は黒でスポーツ刈り。日本の軍人って感じの人だ。一番俺を睨んでくる人でもある。何かしたか?


「次」


「はい。綾瀬茉莉(あやせまつり)です」


10席は女性。身長は俺より少し低いくらい。金髪をサイドテールにしている。勝気なお嬢さんって感じだな。胸部装甲も結構ある。6>4>10>1=7だな。何がとは言わないが。

ちなみに身長は7>10>1>6>4となる。


(つーか、こうしてみると半分が女性なのか)


学校とはいえ軍、それも機士なんて戦場に出ることが決まっているような兵種なんだからてっきり男だけかと思っていたが、そうでもなかったことにびっくりしている。


こんなところで男女雇用機会均等法を発揮しなくてもいいだろうにと思わなくもないが、まぁAクラスだから特別なのかもしれないな。


「次。最後、3席」


「あ、はい。川上啓太です」


「で?」


「え?」


他の人に倣って名前だけ言ったのに、ボスからは「何やってんだお前」みたいな目を向けられたでござる。


「……はぁ。まぁ、いい」


溜息まで吐かれた!?


「今回の趣旨を理解できていないこいつに代わって私が紹介しよう」


「は?」


趣旨? そんなのがあったんですか? ていうか俺以外はみんな知ってたの? 


「川上啓太。年齢は15。家族構成は妹と本人の二人のみ。両親は魔晶関連の研究員だったが、去年出張先のタイにて魔族どもの反攻作戦に巻き込まれて死亡している。軍への志望動機は主に生活費を稼ぐため。ここまでで何か間違いはあるか?」


「……ないです」


おいおいおい。間違いはないけど、俺の個人情報どうなってんの? いや、調査されるのは当然だと思うけど、わざわざそれをここで公表する意味あるんか? 


(ボスには逆らわないと決めたがこれはちょっと……ん? なんだ?)


反論しようとしたところで、ふと周囲の空気が変わっていることに気付いた。


周囲を見回してみると、さっきまで俺を睨んでいた連中が軒並み視線を落としている。


「自覚している連中もいるようだが、敢えて言おう。川上は第三師団が暴走して壊滅したせいで生まれた被害者の家族、いや、被害者そのものだな。貴様らは先年第三師団が引き起こしたアレの被害者が軍人だけではないということを忘れるな」


「「「……」」」


(あぁ。なるほど)


ここまできてようやく俺はボスや俺を睨んでいた連中の思惑に気付くことができた。


まず俺を睨んでいた連中はそれぞれが派閥の関係者なのだろう。彼ら、彼女らはお互い面識があったり情報を持っていたが、俺の情報はなかった。


そのためどこの誰かも知らん奴に成績で負けたことを実家や派閥の人たちに文句を言われたのだろう。逆恨みと言えばそれまでだが、彼ら彼女らはまだ子供である。せっかく合格したところにケチをつけられたら不満の一つもあるだろう。


それがあの視線というわけだ。


それを踏まえた上でボスの思惑を考えてみよう。おそらくボスは俺が軍が負けたことによって被害者になった存在であることを伝えることで、彼ら彼女らに『貴様らが負けたらこういう人間が増える。だから被害者に逆恨みしている暇があるなら鍛えろ』と伝えたのだ。


これによって俺が逆恨みされることはなくなるし、それでも逆恨みしてなんらかのちょっかいをかけてくるようなら何かしらの処罰を与えるはず。……多分。


また、彼らへの牽制に加えて、俺自身にも『お前は逆恨みされているぞ』と警戒を促してしているのだろう。よくよく考えてみれば個人情報と言っても住所や口座の暗証番号を暴露されたわけではない。あくまで身の上を語っただけだ。そしてそんなものは調べればすぐにわかることである。


つまりボスには俺を虐める意図など微塵もなく、あったのは逆恨みという不毛な感情を抱く子供や、自分がその対象になっていると自覚していないアホなやつ、つまり俺に警告を与えることが目的だったのだ。


(良かった。ここには一生徒の個人情報を暴露して虐めを誘導する教師なんていなかったんだ)


もしそんな意図があったとしたらそれなりの報復をするつもりだったが、これこそ逆恨みでした。申し訳ございません。ボス。


「うむ。わかったようで何よりだ。これ以上の情報は個人情報保護法の対象となるので、知りたいのであれば各々が親しくなってから本人に聞くように。では自己紹介も終わったところでこれからの予定について説明する」


内心で五体投地していることに気付いたのかどうかは知らないが、少なくとも俺への敵意を向けていた子供たちの様子が変わったことには気付いたのだろう。満足げに頷いたボスは『話題を今後のことについて』にシフトしていく。


え? でも俺は他の人について何も知らないのですが、それについての補填はないんですか?

ない? 親しくなってから自分で聞け? そうですよね。わかりました。

前向きに検討させていただきます(検討するとは言っていない)


自分の情報だけ晒された上にあっさりと話が切り替わったことに対して置き去りにされた感がハンパないのだが、わざわざ他の人の個人情報を教えて欲しいなどと言い出すわけにもいかず……。


「私からは以上だ。貴様らは機体を受領するためこれからすぐに格納庫へ行け」


「「「「はい!」」」」


(うーむ。まぁ、同級生とのコミュニケーションは後でいいか。まずは機体からだよな!)


最終的に俺は、早速受領できるという自分専用の機体に胸をふくらませることで微妙にもやもやしていた気持ちを抑えつつ、初めてのHRを終えたのであった。

イカれたメンバーを紹介するぜ! 回。

なお客観的にみて一番イカれているのは主人公なもよう。


閲覧ありがとうございました。


Aクラスのイカしたメンバーの序列と所属師団一覧


1・女 武藤沙織  三師団 

2・男 藤田一成  七師団

3・俺 川上啓太  二師団?

4・女 五十谷翔子 六師団

5・男 笠原辰巳  三師団

6・女 田口那奈  八師団

7・女 橋本夏希  五師団

8・男 福原巡嗣  七師団

9・男 小畑健次郎 三師団

10・女 綾瀬茉理 四師団


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