22話。リザルト的なお話
前話のあらすじ。
柿崎ぃぃぃぃ!
「それで、今回の損害は、量産型が8機大破、というか消滅。草薙型が大破23機、中破21機、小破6機。八房型が大破31機、中破3機、小破6機。砲士は182人が死亡。加えて戦車92輌が大破、50輌以上が中破。随伴兵も400人以上が死亡。重軽傷者は1200人以上、と。インパールで文字通り全滅した第三師団のそれには及ばんが、甚大な損害を受けたことは間違いないな」
「はっ」
「大破した草薙型は機士も全員死亡。八房型の中破や小破が少ないのは元の防御力が低いので、攻撃を受けた時点で大体が大破になるから。もちろん大破した機体に乗っていた機士は草薙型と同じく全員死亡。砲士については言うまでもない、か」
「はっ」
報告書を前にして『頭が痛いわ……』と呟くのは統合本部長浅香涼子。
その真正面で必死で怒りを我慢しているのが第二師団長の緒方勝利である。
浅香の頭を悩ませるのは主に再建に掛かる費用と時間だが、緒方が怒りを覚えているのは戦闘の前から余計な茶々を入れて決戦兵力である啓太を戦場から遠ざけただけでは飽き足らず、現場で碌に働かなかった人間を派遣してきた第三師団閥の面々に対してであった。
「と言ってもな。第三師団の面々とて派遣した4機の量産型と50人の砲士、さらに相当数の草薙型や八房型とその機士たちを失っているのだ。これで『働いていない』とは言えんよ」
「それはそうですが……」
「それにな。件の第三砲撃小隊が仕事をしなかったのは『弾詰まり』を起こした最後だけだ。それまでは拙いながらも砲撃に参加している。貴官はそれも『認めない』というつもりか?」
「……いえ」
「もっと言えば、その場面で『弾詰まり』ということにしたのは現場指揮官である芝野准将だ。尤も、あの場で『命令違反』などと言えば士気が崩壊していただろうからそういうしかなかったのだろうが、それでも現場で下された判断は『弾詰まり』だ。そうである以上、注意勧告の対象にはなっても罰する理由にはならん」
「……はい」
浅香は口にしなかったが、後方――もちろん統合本部を含める――では、第三砲撃小隊の面々に対して、前線の憤りとは裏腹に経験を積んだ上で生き延びたことを喜ぶ声が少なくない。
(緒方君には悪いけど。私自身にもそういった気持ちはあるからね)
経験を積んだ兵士も惜しいが、経験を積んだ機体はなお惜しい。それが大型を一撃で討伐できる可能性を孕んでいるものであれば尚更だ。
(彼らは今後のために必要なのよ)
軍上層部はそう判断した。それ故、どれだけ今回の戦いに参加した面々が直訴してきたとしても、第三砲撃小隊に所属していた面々を罰することはできないのである。
それだけではない。緒方にとって悪い報告はまだ続く。
「そして川上中尉を戦場から遠ざけたことだが、これも罰する対象にはできん」
「そんな!」
第二師団の面々は共通して『川上特務中尉がいれば損害はもっと少なかった』と思っている。
事実、啓太が戦場にいて前回と同じ成果――もしくは少し落ちる程度の成果――しか出せなかったとしても上陸に成功した大型の大半は片付けていたはずだ。
11体全てとは言わない。だが仮に大型が8体少なければ、その分だけ砲撃や反撃による犠牲はなくなっていたことは明白である。
それは彼らの思い込みではなく、確かな実績を参照にしたものだ。そのため今となっては第二師団だけでなく第六師団や第八師団の面々の中にも、啓太を戦場から遠ざけるような小細工をした第三師団に対する怒りが生じている。
そのため緒方は第三師団閥の面々に何かしらの罰則を与えて欲しいと直訴しに来たのだが、浅香の返答は否であった。
「貴官の言い分は理解できる。しかしな。此度中尉は、同盟国の姫君と多数の民間人を救出するという実績を上げている。そのきっかけとなったのは、最上重工業と彼に対する例の特務だ。如何なる思惑があったとしても、それを発令した面々を罰することはできん」
「くっ」
正確に言えば啓太が救助したのは『同盟国の国家元首である大公閣下の従兄弟である伯爵の娘さん』なのだが、一般的には大公閣下の親族として扱われているので、両者共細かい修正はしない。
そして対外的に見た場合、彼女がどのような扱いになるかと言えば、それこそ皇族である浅香と同じような立場となる。
このため浅香は政策推進課の面々に対し、同格の少女を救った切っ掛けを作ったことを褒めることはあっても罰を与えるような意見を唱えることはできないのだ。
「それにな。罰を与えるにしても、何を名目にして罰を与えるつもりだ? まさか『特務中尉に勝手に特務を与えたのが悪い』とでもいうつもりか?」
「それは……」
「結果はさて置き、命令を出した経緯には私も不満がないとは言わん。だがな。少なくとも連中は正規の手続きを介した上で中尉に特務を与えている。対して貴官はどうだ? 打診はしていたかもしれんが、正式な手続きをしていなかっただろう?」
「……はい」
繰り返すが、浅香にも出し抜かれた形となったことに不満はあるのだ。啓太が戦場から引き離されたことについても、確かに自分たち統合本部の不注意もあっただろうとは思っている。
だが、もう一度同じことをされたとしても浅香は第三師団閥の狙いを阻むことはできないだろうとも考えていた。
なにせ彼らは何もしていないのだから。
具体的に言えば、今回彼らがやったこととは最上重工業に対して『新型の強化外骨格を造ってみたらどうか?』と提案しただけのことでしかないのだ。
啓太に関しても『引き続き最上重工業に協力するように』という、元から出ていた命令を再度出しただけ。
これがもし新作のプレゼンだったり、正式採用を掛けたコンペなどであれば浅香も口を挟めただろう。だが『新作を造る提案』にまで口を挟むことができるはずがないではないか。
というかそんなことまで耳に入れられるほど浅香は暇ではない。
よって今回は『魔物が来ると分かっておきながら新たな命令――たとえば待機命令――を出さなかった第二師団が悪い』という彼らの言い分が通ってしまっている。
では、この解釈を利用して軍に吠え面をかかせようとした最上隆文に対して何かしらの罰を与えることができるのか? と問われれば、それも難しい。というか無理だ。
なぜなら最上隆文がそういう行動を起こした元凶が、第三師団閥や彼らと繋がりがある財閥系企業による嫌がらせにあるからだ。
それから隆文を守らなかった第二師団や統合本部が、どの面下げて自己防衛を果たした隆文に文句を言えというのか。
よって緒方らは第三師団にも、財閥系企業にも、最上重工業にも、もちろん啓太にも文句をいうことはできない状態であった。(尤も啓太に対しては初めから文句をいうつもりはないが)
ただし、軍上層部としても防衛戦で命を懸けて戦った将兵の気持ちを完全に無視するつもりはない。
「もちろん、連中に何の処罰も無しでは納得できない者が多数いることは理解している」
「はっ」
「しかしながら、我々は感情で法や罰則を与えることを良しとするつもりはない」
「……はっ」
それをしてしまったが最後、国防軍はそれぞれの派閥が率いる私兵の集団となってしまう。故に浅香は感情による報復を絶対に認めない。
「それらを考慮して出されたのがこの折衷案だ」
「拝見します。……なるほど」
緒方が受け取った書類は、今後の再編計画に関する要綱を纏めたものであった。
「うむ。見ての通り第三師団再建計画を凍結し、その分の予算を第二師団、第六師団、第八師団の再建に当てることになった。……これで現場を抑えられるか?」
「……難しいでしょうが、抑えましょう」
「頼む」
「はっ」
人の感情とは厄介なモノだ。それが自分や近しい者の命が懸かっているとなれば尚更。
しかしそれを理解した上でなお、法の上でも理屈の上でもこれ以上の優遇措置は取れない。暗にそう伝えられた緒方は、本心では納得していないものの『これ以上は我儘になる』と判断し、浅香から出された折衷案を受け入れることにした。……受け入れないという選択肢がなかったともいうがそれはそれ。
これから部下を説得することになる緒方は今から疲れた顔をしているが、それも己の迂闊さが招いたことと考えれば我慢するしかない。
「ところで」
現場の意見について一応の納得を見たところで、浅香は話題を切り替えることにした。
「川上中尉だが、正式な所属を第一師団とすることとなった」
「それは!」
啓太は最初から第二師団が唾を付けていた人材である。
入隊試験を受け持ったのは偶然だが、それ以降、つまり軍学校に推薦したのも第二師団だし、試験を行う際に優遇処置を出したのも第二師団だ。
これがもし他の師団であれば、ここまで早く啓太が頭角を現すことはなかったと断言できる。それを成功したからと言って奪うのは横暴が過ぎるのではないか。
ただでさえ戦力の再建が急がれるというのに、ここで啓太まで外されては国土の防衛さえ覚束なくなる。
「貴官が言いたいことは理解しているつもりだ」
「では!」
「理由が有る。まずはそれを聞け」
「くっ!」
焦る緒方を宥める浅香の声はどこまでも冷静だ。
「まず今回の件だがな。私は川上中尉を特務尉官としていたことが一つの元凶になってしまったと考えている」
当然のことながら、特務尉官である啓太に与えられる任務の大半は『特務』となる。
そして特務の内容を知るのは、命令を受けた当人と極少数の関係者のみ。よって今回の件では、担任であり上官でもあり、監視者でもある久我静香はもとより、制度上学生や教師を取りまとめる立場である校長ですら啓太に与えられた特務の内容を知らなかったのだ。
もし知っていたら、間違いなく『本当にいいのか?』と浅香に連絡が入っていたことだろう。
だが彼らはその内容を知らなかった。その反面、彼らは魔物が再度襲来するという情報を持っていた。そのため啓太に与えられた特務を『また迎撃に使う気なのだな』と誤解していたのである。
これはなまじ知識があったために生まれた誤解と言える。
当然、そう勘違いしている以上、確認の連絡など来るはずがない。
結果として、学校側の関係者は誰一人として啓太が九州ではなく極東ロシアに出向いたことを知らなかった。
それは同級生たちも同じであった。国防軍が九州で魔物と戦闘し、甚大な被害を受けたものの迎撃に成功したという報告と同時に、啓太が極東ロシアで功績を立てて騎士に任じられたという報告がきたときには、一様に『どういうことなの?』と首を捻ったくらいである。
これは友人たちにも任務を知らせていないが故に生じたことなので、ある意味で啓太は任務を隠すべき『特務尉官』として相応しい隠蔽工作を行ったと言えるかもしれないが、問題はそこではない。
要するに今回のケースは、特務という使い勝手の良い立場と、所属を曖昧にしていたこと。そこに派閥や企業の思惑が重なり、最悪の形で顕現してしまった事故と言える。
「それを防ぐため、今後は特務ではなく正式な中尉とした上で、第一師団の預かりとする。こうして中尉を正式に久我少佐の部下とすることで他の連中が何かしようとしても、最上重工業はまだしも川上中尉にはおかしな命令を出すことはできなくなるだろう」
「それはそうでしょうが……」
理解はできる。しかしそれでは第二師団の立場がない。緒方は面子よりも実益を重んずるタイプの人間だが、面子を全く気にしないというわけではない。まして啓太の存在は実益に直結するものだ。
しかし浅香には浅香の考えが有る。
不満を隠そうとしない緒方を見やりつつ、浅香はその考えを口にする。
「元々軍学校の生徒の立場は、出自はどうあれ第一師団の預かりとなっている。これは知っているな?」
「……はい」
そうしないと学内での贔屓や差別につながるからだ。この時点で特務中尉から中尉になった啓太の所属が第一師団の預かりとなる名分としては十分だろう。
だが浅香の言葉は終わらない。
「また、同盟国の姫を救い騎士に叙された中尉を一介の軍人と同じ扱いはできん。それもわかるだろう?」
「……はい」
そう。さらりと流しているが、実は啓太は極東ロシア大公国に於いて正式な騎士として任じられていた。
もちろん引き抜き工作の一環だし、騎士号も向こうに住まない限りは名誉職に過ぎない称号だが、それでも国家元首自らが与えた称号だ。その価値は決して低くない。
「祭典の際、中尉が向こうの引き抜きを断った際の言葉を知っているか? 彼は『どうだ? 私に仕えないか? もし卿が我が国に来てくれるというのであれば、卿が助けてくれた彼女を貴公に嫁がせても良いと考えている』と、暗に貴族として迎え入れるという引き抜きをしてきた大公閣下に対し、迷わず『お言葉はありがたく。ですが我が忠義はすでに天皇陛下その人に捧げております故、その御誘いはお断りさせて頂きます』と答えたそうだぞ?」
「それは……」
引き抜きに対する模範解答と言えばその通りだ。しかしそれを行ったのが15歳の少年となれば周囲に与える印象は社交辞令のそれとはまるで違うものとなる。
――
実際のところは『寒いの嫌だし、インフラ整ってないし、国家元首の縁者が簡単に死にかけるようなところに妹様を預けたくない』という、相手に知られたら評価がガタ落ちになるような我欲丸出しの理由で断っているのだが、そんなことは啓太が口にしなければわからないことなので、啓太の評価は上がることはあっても下がることはなかった。
――
「公衆の面前で引き抜きを断られた形となったが、大公閣下は笑いながら『これほどの武人に忠義を向けられているとは、貴国の皇が羨ましいものだ』と応じたらしい。当然その賛辞を受けた陛下も悪い気はしていない」
「そうでしょうな」
同格の相手に社交辞令を超えた賛辞を受けて喜ばない者はいないだろう。
「で、他国の国家元首に、それも公の場で極めて高く評価された川上中尉に興味を抱いた陛下は、周囲の人間に中尉のことを調べさせた。そして中尉の行ったことの詳細を知った」
「……」
「国内に於ける戦果でさえ大型14体。中型数十体。小型が沢山だ。それに加えて今回の遠征で中型13体、小型を数百体討伐していることを知ったわけだ。すぐに私と元帥閣下が呼び出され『なぜこれだけの勇士を少尉などのままにしているのか!』と直接叱責なされたよ」
「……彼の実績を見れば、陛下がそう思われる気持ちもわかります」
「そうだな。こちらからも彼の年齢や彼を取り巻く事情をご説明させて頂き、一応のご寛恕は得た。しかし『彼の者に対し正当な評価をするように』と釘も刺されたわけだ」
「……なるほど」
「正当な評価をすると言っても、彼はまだ学生だ。軍人に対する報奨としては昇進が一番手っ取り早いが、現状では特務中尉から中尉にするのが精一杯だ。まさか指揮官としての教育を終えていない者を大尉以上に昇進させるわけにもいかんだろう?」
実際は中尉でも問題だが、そこはもう諦めたらしい。
「ですな」
軍学校を卒業した生徒は一年で最低でも一階級昇進することが慣例となっている。
この慣例を考えた場合、もし学生の時点で大尉に昇進させてしまえば、啓太は卒業後一年で佐官になってしまうことになる。もちろん佐官教育を終えた後であればなんの問題もないのだが、その前はよろしくない。
これは軍の威信がどうこうではなく、部下を預かることになる啓太と、啓太に従うことになる部下たちの命に直結する問題なので、決して軽んじて良い話ではないのだ。
かと言って啓太だけ慣例を無視させるわけにはいかない。
何かしらの失態があればその限りではないが、今のところ啓太には失点らしき失点はない。
そうである以上、啓太の昇進は決定事項だ。信賞必罰を明確にしてこそ正常な組織なのだから。
「昇進はさせられない。しかし功績に報いる必要がある。よって我々は、彼を中尉とすると同時に、正六位を叙位することにした」
「叙位、ですか?」
「そうだ。貴官ら軍閥の家はすでに叙位されているが、中尉はそうではないからな。いきなり正六位というのも珍しいことだが、歴史を紐解けば前例が皆無というわけではない。むしろ第二次大戦の最中などにはよくあったことだ。また極東ロシアが先に騎士爵を叙任したこともあるので、周囲からの反発もあるまい」
「確かにそうですが……」
一般市民、それも年端もいかぬ子どもがいきなり正六位を叙位されるというのであれば、褒美としては十分だろう。
また日本の位階では五位以上が貴族とされるので、それに準じるという意味でも正六位は間違っているとは言えない。また緒方らのような軍閥の家は最低でも従五位以上の家柄なので、各師団からの異論も封殺できる。
啓太としても位階やら爵位に興味はないが、自分が偉くなれば妹の扱いも良くなるし、なにより貰える年金が増えるので断る理由はない。
誰にとっても悪くない褒美であった。
「また外交上の理由から、今後中尉は極東ロシア方面の案件に回されることになる可能性が極めて高い。当然何も無ければ第二師団に優先的に出向させるが、逆に言えば何かがあれば北にいかねばならん。故にずっと九州方面に貼り付けるわけにはいかんのだ。理解したか?」
現実問題として、現在の日本が軍事的強国としての立場を保つためには、諸外国から資源を輸入する必要がある。
さらに極東ロシアは地理上の関係から大陸にいる魔物からの攻撃を分散する役割も果たしているため、日本としては色んな意味で軽視できる相手ではないのだ。
「……仕方ありませんな」
言われていることが全て正論であることに加え、ことが外交にまで及んでしまえば、一軍閥の長であるものの、己を一人の軍人であると定義付けている緒方に返す言葉はない。
加えて『極東ロシアが絡まない限り、有事の際は第二師団を優先する』という言質を貰っているのもあり、緒方は啓太が第一師団の預かりとなることを承諾するしかなかった。
(これでよし。あとは久我のお嬢さんに任せましょうか。彼女ならうまくやれる……はず)
上層部ではそれぞれが納得した上で話がついた。とはいえ、現場は違う。突如として公にされたこの人事は多数の関係者に多大な衝撃を与えることになる。
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「「「何故だ!」」」
今回の人事が発表されたことで一番衝撃を受けたのは、啓太の配属を心待ちにしていた芝野雄平でもなければ、啓太と戦列を共にすることを願っていた佐藤泰明でもなかった。
では誰が彼ら以上の衝撃を受けたのか?
それはもちろん、担任というだけでいきなり超が付く問題児――啓太個人はなんら問題を起こしていないが、何かあった際には超が付く程に問題が大きくなることが確定している――を直属の部下にすることになった久我のお嬢さんこと、久我静香である。
「私が何をしたというのだ……」
これから何も無ければいい。
だが間違いなく問題は起こる。
その確率は、炭酸飲料を一気飲みした際にゲップが出る確率に匹敵すると静香は確信していた。
「私にどうしろというのだ……」
まして相手は、意味の分からない挙動をする意味の分からない造型の機体を意味の分からない方法で操ることができる日本で唯一の機士であり、その武功を以て同盟国から騎士に叙任されると同時に、国内でも正六位を叙位されたという、現在進行形で日本と極東ロシアの国家元首から高い評価を受けている新鋭だ。
間違っても一介の少佐が監督していい存在ではない。
「……統合本部は私に恨みでもあるのか?」
もちろんそんなものはない。ただの成り行きだ。
「うう。もう既に胃が痛い……。誰か代わってくれ……」
当然その願いに応える者はいない。
貴族として生まれ、28歳にして少佐となった俊英、久我静香。残念なことに彼女の苦難はまだ始まったばかりである。
閲覧ありがとうございました。
二章はこれにて終了です。
今後の啓太くんと静香せんせーの活躍にご期待ください。













