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極東救世主伝説  作者: 仏ょも
2章・二学期~
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14話。強化外骨格の見た目と機体コンセプト

建国の経緯を考えれば意外に思われるかもしれないが、極東ロシア大公国と日本皇国は名目上対等の同盟関係を結んでいる。


表面上の主敵は魔物だったがその実態は対ソ連――もっと言えばロシア共和国――や、ソ連が支援してできた中華民国や朝鮮共和国のような社会主義国家を主敵としていたためだ。


だがその主敵としていた国家が軒並み魔物によって蹂躙されたため、現在のところは軍事同盟と言うよりは経済的な結びつきの方が強くなっている。


日本から輸出されるのは主に食糧と武器。極東ロシアから輸出されるのは主に鉱物資源を始めとした資源となるらしい。


特に喜ばれるのが草薙型だ。彼らはこれを兵器としてではなく、治水工事だのインフラ工事だの鉱山開発だの地下資源の採掘だのに使っているのだとか。なんとも穏当な使い方である。


彼らが貴重なはずの機体でこのような穏当な使い方ができるのにも当然理由が有る。

それが大陸北部特有の魔物事情だ。


「大陸北部における魔物の侵攻の特徴は、大型や中型は少ないくせに小型が非常に多いところだな。場合によっては大型0体、中型5体、小型が500体なんてこともあるくらいだ」


「バランスが悪い……いや、ある意味正常なんですかね?」


「さて、な」


悪魔や魔族が魔物を使って人間を滅ぼそうとしているのであれば大型を用意しないのは合理性に欠ける編成としか言えないのだが、人間を苦しめることが目的というのであれば小型が多い方が目的に適っているように思える。


なにせ大型の攻撃は、直撃しなくても余波だけで人間を蒸発させることができるものだからな。

最低でもパワードスーツや防護服を着ないと戦場に立つことさえできないのだ。


で、一撃で蒸発したら苦しむもなにもないもんな。それを考えれば、定期的に町や村を襲う魔物の中に大型がいないのはある意味当然のことと言える……かもしれない。


ちなみに日本側が纏めた資料によれば、日本にくる小型の魔物たちも最初は大陸と同じくらいの数らしいのだが、渡河いや、渡海の最中に溺れているため数が減っているのではないか? とのこと。


とにもかくにも、この『大型や中型が少なく小型が多い』という状況が、小型を主敵とするパワードスーツの試験に合っているということらしい。


「まぁ俺も軍人であるお前さんが向こうさんの狙いを考察することを無意味とはいわん。だが、今の俺らにとって大事なことは向こうの狙いじゃねぇ。向こうの狙いが何であれこの状況を有効に使うことだぞ」


「えぇ。そうでしたね」


うん。それはその通り。わざわざ国外まできたのは考察するためじゃないからな。

これに関しては最上さんが正しい。


ただな。どうしても理解できないことがあるんだ。


「えっと。確かパワードスーツって一般の兵隊さん、というか魔晶との適合率が低い人のための装備でしたよね?」


「そうだな」


だよな。そもそも適合率が高いなら機士になるからな。


「今回俺が試すのは、その中でもやや適合率が高い人向けの特注品なんですよね?」


「そうだな」


一般のパワードスーツはもう財閥系の企業が造っている。

そしてすでに十分以上の経験と生産ラインを持つ彼らと汎用性や価格で競っても勝つことはできない。


だからこそ『数は少なくなるものの、一定の需要がある特注品を造る』ってのが最上さんたちが出した結論だ。


正確には機械狂いの最上さんに代わって社長として経営部門を担当している奥さんの方針らしいが、まぁ提案者が誰であれ言っていることは非常に正しい上にわかりやすいし、何より他人様の会社経営に関する事なのでここに反論するつもりはない。


だが、流石にこれはどうかと思う。


「腕、四本ありませんか?」


そう。最上さんが『これを試してくれ』と言って出してきたパワードスーツには、腕が四本――正確には肩口に【先が尖った腕のようなもの】が――ついているのである。


「そうだな」


『そうだな』じゃねーよ!


「機体以上に肉体に左右されるパワードスーツですよ? 強化外骨格ですよ? 強化どころか、本来ないモノを付け足してどうするんです?」


動かせる気がしないんだが?

獣型という前例があった四脚とは話がまるで違うんだが? 


「あぁうん。お前さんの言いたいことは尤もだと思うぞ、うん」


「思うだけじゃ意味がないんですけどねぇ」


いや、マジで。どうやって動かすんだ?

もしかしてこの人、ここで俺を殺すつもりか?


「まぁまて。落ち着け。本来は俺らもそう考えていたんだ。その上でどれだけ高火力を出すかってな」


「はぁ」


そこでなぜ高火力に拘るのか……あぁ、いや、特注品だから仕方ないのか。

機動力に行かないのはどうかと思うが、特徴を付ける必要があるのはわかった。


「火力を出すには重さか手数が必要だ。だが重さには限度ってものが有る」


「でしょうね」


パワードスーツで支えられない重さの武器を持たされてもな。

機動力を完全に捨てて遠距離狙撃型を目指すにしても、それなら棺桶砲や獣型で十分だし。


「そこで手数を増やす方向に舵を切ったわけだ」


「わけだ。じゃないでしょ。手数を増やすのはわかりましたけど、文字通り手を増やしてどうするんですか」


肩に生えた手なんてどうやって動かすんだよ。


「うむ。そこでウチの連中が頭を悩ませてたときに現れたのがお前さんだ」


「はい?」


俺? 何かしたっけ?


「お前さんが御影型を動かす際に使っているコマンドシステム。アレを使えば動かせるんじゃないかってな」


「……あぁ」


なるほど。本物の腕のように自由自在に動かすのではなく、決められた挙動をするだけの存在に落とし込むわけか。それなら確かに動かせないこともないだろうよ。


「そこは了解です。ですが、そもそもが本来ない部位なわけですから、ウェイトが邪魔になるのでは? 達人と呼ばれるような方々なら猶更」


自分の体を十全に扱えるからこそ達人なわけだろ? 

余計なウェイトを抱えたら全部調整し直しだぞ? 

そんな手間暇をかけている時間があるのか?


「そこも、だな」


「何がでしょう?」


「俺も最初はそう思ったさ。だがな、それは視野が狭い」


「はぁ」


どうした急に。英国紳士でも降りてきたか?


「不思議そうな顔だな。まず聞け。いいか? そもそも俺たちが想定している使い手(ユーザー)は達人じゃねぇ。あくまで()()()()()()()()()()()()だ。お前さんだって別に達人ってわけじゃねぇだろ?」


「まぁ、そうですね」


俺が試す以上、魔晶の適合率はさておくとしても達人しか使えないようなモノじゃ困るってことか? 


「そして俺たちが想定している敵は人間じゃねぇ。魔物だ」


「それも、そうですね」


うん。それは本当にその通り。


「そもそも武術ってのは対人間を想定したもんだ。それに特化した達人の技術が無意味とは言わんが、俺は対魔物を想定した場合に最も重要なのは、接近をしたときに発揮される技術ではなく、接近させない火力だと思っている」


「……なるほど」


一理ある、のか? 


「もちろんこの一機だけじゃ意味はねぇ。だが10機くらいで隊列を組んで撃ちまくれば相当な効果が見込めると思わねぇか?」


「ふむ」


単純に倍の手数だからな。少し重くすれば重火器も装備できるし。

確かにこれなら達人一人を突っ込ませるよりは効率はいいだろう。


加えて、最初から複数での運用を想定することで、受注数も増える。

軍としても最上重工業としても美味しいってわけか。

悔しいが良く考えていると言わざるを得ない。


「ただしそれもこれも今の段階じゃ机上の空論に過ぎねぇ。だからまず一番コマンドシステムに慣れているお前さんに運用してもらいデータの蓄積と改良をする。その後で普通の兵隊さんたちにも使ってもらいさらなる改良を施す。それが今回の試験目的になるのさ」


「なるほど」


流石は現段階で財閥系企業に警戒されるだけのことはある。

ただの技術馬鹿ではない。しっかり考えてるんだな。


「つまりここで俺がするべきことは、まずコマンドシステムを利用して副腕を動かすこと。動かした後は操作性や武器の命中性能及び反動に対する耐久性の調査ってことでよろしいですか?」


目的は明確にしとかんとあかん。

後から何か言われても面倒だし。


「そんな感じだな。ついでに小型の魔物を討伐した際に得られるであろう魔力による成長や最適化の過程の調査。さらに中型を仕留めることができるような火力のある武器を搭載した場合に於ける挙動も見たい」


ん? パワードスーツも成長もするのか?


あぁいや、これはあくまで魔晶との適合率が低い人間が使うためのものだもんな。適合率が低くとも魔晶を利用しているのであれば成長もする、か。


――


ちなみに魔晶の適合率が15%を下回っている場合、魔晶を体内に組み込むことができない。

その場合当然魔晶の中に物を収納することはできないので、本当に一般の兵士がパワードスーツを装備しても成長させることはできないとされている。


――


最上さんが機体に引き続きパワードスーツの成長も望んでいるのはわかった。

技術者ってのはそういうものなのだろう。それはいい。だが……。


「随分欲張りますね?」


あんまり欲張るとあとがきつくなると思うんだが。

主に俺の苦労という点で。


「あくまで最高値だよ。わざわざ国外まできたんだしな。それに、だ。そのくらいの成果を見せないと国内の連中から『自分たちを見捨てて逃げた』なんて言われかねんぞ」


「いいますか?」


実際はアレだが、名目上はこっちが相手に無茶振りされた側なんだが。


「向こうの被害次第だがな。基本的にああいう連中は『自分は悪くねぇ』って保身と自己弁護だけは一流だ。それを考えれば連中が適当な理由を付けて俺らを責めてくる可能性は十分にある。可能性がある以上警戒は必要だろ?」


「そんなもんですか」


確かに警戒は必要だと思うけど、だからといってそんな言い分が通る程甘い組織ではないと思わないでもないんだが……いや、これは油断か。財閥や軍閥が敵なんだ。警戒しすぎて悪いってことはないわな。


「そんなもんさ。だからこそ俺たちはここで連中に阿呆なことを言わせないだけの実績を作るってわけだ」


実績、ねぇ。


話やコンセプトは理解したが、そもそも満足に動かせるかどうかすらわからないんですがそれはどうするつもりなんでしょうかねぇ。



感想欄でもありましたが、皆様予想通りの多腕型強化外骨格でございます。

イメージはガン〇レの〇憐。


これはお願いなんですけど、感想をいただけるのは本当に嬉しいのですが、マジで続きを書く気力が消失しますので展開については予想できても言わない方向でお願いします。マジで続きを書く気力が消失しますので。(大事なことだから2度)


閲覧ありがとうございました。

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