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極東救世主伝説  作者: 仏ょも
五章
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2話 浪漫よりも大事なモノがある

「って感じなんだが、どう思う?」


「どう思う? と言われましても……」


冬休みも終わり、ベトナム遠征に於ける論功行賞だのなんだのにも一段落ついた一月下旬。


最近は下手にスペックに劣る量産型に慣れると新しい機体に順応するのが遅くなる可能性があるということで、機体のシミュレーターではなく強化外骨格を纏って訓練をしている俺に対し、これから造る新型のコンセプトに迷ったという最上社長からの問いかけがこれである。


いや、迷うのも分かるし、使い手の意見を聞きたいというのも理解できる。理解できるのだが、そもそも俺って用意された機体に乗るのが仕事のテストパイロットみたいなものなのでは? 


最上さんが用意した機体に乗り、その中で修正した方がいいと思った点を指摘するならまだしも、開発する機体に注文を付けるのは違うのではなかろうか?


使う側に無茶なスペック要求されて困るのはそっちだぞ? 

零式艦上戦闘機みたいなことになるぞ?


それ以前の話としてだなぁ。


「どんな機体でも一機で全部やるのは無理なのでは?」


特大型に通用する火力と、大型を翻弄できる機動力と、中型を焼き払う殲滅力を全部載せ?

二郎系ラーメンじゃねぇんだぞ。

積載量の限界値って知ってる?


あれもこれもを詰め込もうとしたところで、物理的にできないことはできねぇんだよ。

技術者なら浪漫以前に常識を語れ。常識を。


「それはそうなんだがよぉ」


浪漫を追い求めるタイプの変態である最上さんからすれば面白くはないかもしれないが、結局戦いは数なのだ。

どれだけ性能が高くとも、戦争に於いて一機でできることなどたかが知れている。

人類種の天敵と呼ばれるようになった首輪付きの猫だって、自分がいる戦場で無双することはできても他の戦場にまで干渉できるわけではない。


よって購入者で在り使用者でも在る軍が製作者側に求めるのは、高額で生産性が悪い反面、一機で戦場を蹂躙できる極めて高性能な専用機ではなく、安価で性能もそこそこだが一〇機あれば戦場を蹂躙できる量産機なのである。


もちろん、この世界には魔族やら特大型といった規格外の存在がいるため、それらに勝る個の力が必要とされているのは理解しているし、世界で初めて――相討ちとはいえ――特大型を墜とすことに成功した御影や、その後継機に対して期待の眼が注がれていることも理解できる。


それはいい。


問題は、それに乗じた変態共が国からふんだくった予算を使って機体を好き勝手に魔改造しようとしていることだ。


おいおい。誰がその変態共によって魔改造されまくった機体に乗ると思ってんだ?


びっくりどっ〇りメカは遠くから見るから楽しいのであって、自分が乗るモノじゃねぇんだよ。


なので俺が彼らに求めるのは一つだけだ。


「御影と同じ感じでお願いします」


「えぇぇぇぇ」


えぇぇぇぇじゃないが。


「素材を大型のモノに変えて、試作三号機から得た情報をフィードバックすれば性能も上がるんでしょう? まずはそれで十分です」


武器周りよりも先にジェネレーターや足回りの強化が基本だろうが。

強化した上で積載重量に余裕があるようなら、そのときはじめて火力の強化に振り分ければいいんだよ。


「第一ですねぇ」


「第一?」


「”慣れない機体を渡されて慣熟訓練が間に合いませんでした”なんてなったら目も当てられませんよ? できるだけ早く使えるようにならないと、春先に地獄を見ることになります」


「春先? なにかあんのか?」


「え?」


マジかこの人。


「あぁ、いや。もちろん春になれば”冬休み”が明けた連中が渡海してくるのはわかっているぞ? だが、毎回お前さんが迎撃に出る必要はない。むしろ軍の方だって早いうちに『英雄がいないと防衛線を維持できない』なんて評判を払拭したいはずだから、冬休み明けの一戦には呼ばれないだろうよ」


「あ~」


なるほど。

技術者であるこの人から見れば、現状はそう見えるのか。


軍は、俺を使って勝つことよりも、軍としての体裁を優先する、と。

そう考えているわけだな。


ある意味大人の意見だし、妥当と言えば妥当なのかもしれない。

普段ならそうだったかもしれない。でもなぁ。


「恐らくですが、軍は俺らに出動を求めると思いますよ。一発目は特に」


教導大隊全体となると微妙なところだが、少なくともボスと俺は出ることになるだろう。


「……なにか根拠でもあるのか?」


根拠? あるとも。


「ベトナムで魔族と遭遇しましたから」


「魔族? 確か三体の魔族がいたってのは聞いているが……なんでそれでお前さんが出動することになるんだ?」


「魔族側に情報が渡ったからですよ」


「情報?」


「はい。これまでは渡海してきたところを叩いていたこともあって、生き残った敵はいません。そのおかげでこちらの戦術や戦力は相手に知られていませんでした。情報が渡っていたとしても共生派のスパイが提供したモノ。つまり御影や量産型の情報はうっすらとしたモノしかなかったと思われます」


最上重工業にスパイがいるとは思えないから、御影や試作三号機の情報が流出することはなかった。

量産型に関してはやや不安が残るところだが、アレだって機密の塊だ。そう簡単に情報が抜けるとは思えない。


第一量産型は、ベトナムでボスたちが敵の航空戦力を狙撃するまで大した戦果を上げていないしな。

あれ以前であれば……俺が文化祭に出現した魔族を討伐したことくらいではなかろうか?


で、文化祭が行われたのは大攻勢の後。

魔族側にすればあれも”冬休み”中の出来事だ。


「つまり魔族は量産型の性能に加え、御影や試作三号機の性能も持ち帰っています。それが次回以降の襲撃に活かされないと考えるのは無理があるでしょう? 第二次大攻勢だって、向こうはタンクデサント的な方法で全体の数を誤魔化しつつ、疲労も軽減するなんて小細工をしてきたらしいじゃないですか」


前回がそうだったのだ。

次回に何の工夫もしてこないなんてことはあり得ない。


「対してこちらはどうです? 確かに量産型は増えています。強化外骨格の量産も進んでいます。草薙型を砲戦仕様に換装したり、八房型に重めの砲を載せる計画もあるらしいですね。ですが前回の防衛戦で失われた戦力が回復したわけではありません」


歴戦の機士が大量に死んだからな。

他の師団からも借りるにしても限度がある。


「そんな状況下において、魔族が新たな手を打って来る可能性が極めて高いんです。使うかどうかは別としても、教導大隊という実績のある戦力を遊ばせるはずがありません。その際、軍は『御影がないなら量産型に乗れ』と言ってくるでしょう」


軍にとって最も重要なのは勝つことである。

その上で、特定の戦力がいなくとも勝てるという評判を得られればいうことはない。


まして、防衛戦の指揮を執るのは腑抜けた第一師団ではなく、幾度となく行われてきた防衛戦を乗り切ってきた第二師団と、遠征帰りの第四・第五師団だ。


第五師団についてはわからんけど、第二師団と第四師団の人たちであれば評判の為に使える戦力を遊ばせるようなことはしないはず。


つまりは呼ばれるってことだ。

予備戦力としてだろうがな。


で、なにもなければそれでヨシ。

想定外のことがあったらそのときは俺らに対処させればそれでヨシって感じではなかろうか。


ってなわけで、今のところ予想でしかないが、呼ばれるのはほぼ確実だと思っている。


ちゃんとした理由があってのことだから反対も拒否もできないし、したとしても誰からも擁護されることはない。なんなら敵前逃亡扱いされるかもしれん。


文化祭のときとはわけが違うのだ。


「……確かにそうかもしれん」


「そういうわけなので、俺としては火力がどうこうよりも御影と同じ感じの機体を造って欲しいですね。改造だの改良は生き延びてからってことで」


「そういう事情ならしょうがねぇ、か」


おいこら。残念そうな顔すな。


いいか。前と同じような感じだぞ。

前のデータが残っているのは知っているんだからな。

そこから最適化するんだから余計なことすんなよ。

間違ってもダブルガトリングとかやるなよ?

「ジェネレーターと足回りを改良したら積載に余裕ができた!」とか言って浪漫溢れる新装備を搭載するなよ?


振りじゃねぇからな!


閲覧ありがとうございました

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