元婚約者に相談を受けました
「エリス、ちょっと話したい事がある」
「はぁ……」
ある日、殿下に声をかけられ私は王族しか入れない特別な部屋へとやってきた。
婚約者の頃はちょくちょく来ていたけど破棄してからは勿論来ていない。
……なんか空気が淀んでいるのは気のせいかしら?
「実は父上から新たな婚姻の話が来たんだ」
「よろしいじゃないですか? いつまでも空席というのは良くないですから」
「その相手というのが……、ロベリア帝国の第2皇女なんだ」
「えっ、帝国の皇女様が我が国に嫁入りするんですか?」
ロベリア帝国はこの大陸の中では商業軍事外交全てに置いて力を持っている国だ。
我が国とは同盟を組んでいてそれなりに良好な関係を築いている。
「良い話だと思いますが、何か悩みでもあるんですか?」
「あぁ、良い話ではあるんだが……、君も知っているだろう?皇女の噂は」
「あぁ〜、浮気されて相手を不能にした挙げ句一国を潰した、という話ですか。でも、あれは第一皇女のカミラ様の話ですよね? 第2皇女のマイリア様はおとなしい方だと聞いております」
第一皇女のカミラ様は元々婚約者がいたのだがなんと結婚式直前になって婚約者が駆け落ちしてしまった。
勿論恥をかかされたカミラ様は激怒してあらゆる伝手を使い婚約者とその相手の行方を捜索、一ヶ月後には見つかったがその後のカミラ様の行動が凄まじかった。
浮気相手は婚約者の前でカミラ様の手により首を切り落とされ更に一族郎党処刑された。
目の前で愛する人を殺された婚約者は死人同然となったらしいが勿論婚約者にも処分が下された。
男性として大事な所を切り落とされたのだ。
ただ別れはしなかったらしいけどその後の結婚生活は想像出来るだろう。
「確かに姉妹で違うだろうが……」
「殿下、まだマイリア様とはお会いしてないんですよね? 会う前から壁を作っていたら良縁も悪縁になってしまいますよ」
「え?」
「マイリア様を聖とするか邪とするかは殿下のお気持ち次第です。殿下が誠意に接すれば大丈夫ですよ。私との失敗を生かしてください」
「エリス……、私は本当に情けない男だよ。元婚約者に励まされているんだからな」
情けなく笑う殿下を見て心の中でちょっとだけため息をついた。