友人とのお茶会
「エリス様、ようこそいらっしゃいました」
「リアーヌ様、本日はお招きありがとうございます」
私は友人であるリアーヌ・ポワゾン公爵令嬢の家に招かれていた。
婚約破棄されてから週に2.3回は誘いがあったお茶会が全く来なくなった。
『王太子の婚約者』というレッテルが貼られていたから誘われていたんだろう、という現実が突きつけられて改めて貴族社会の厳しさを痛感している。
だからこそリアーヌ様からお誘いが来た時は嬉しかった。
居間に案内されて早速用意されていたクッキーを一口食べた。
「リアーヌ様、また腕があがりました? 前回食べた時より美味しくなってますよ」
「エリス様にそう言ってくださると嬉しいですわ」
リアーヌ様はお菓子作りが趣味、お茶会で出されるお菓子はリアーヌ様が作ったもので非常に評判が良い。
「こうして二人で喋るのも久しぶりですわね」
「えぇ、殿下との婚約破棄でエリス様にはいろんな噂が飛び交っていて中々お誘いをするタイミングが無くて申し訳ありませんわ」
「いえいえ、私は自由な時間を過ごしていますのでお気にならなくて大丈夫ですわ」
「それは歩いている姿でわかりますわ。軽やかですもの」
「軽やかですか?」
「えぇ、それに雰囲気がかなり変わりましたわ。柔らかい雰囲気が漂う様になりました」
う〜ん、自分ではわからないけどそうなのだろうか?
「殿下の婚約者という枷が外れて本来のエリス様を見せるようになったんじゃないか、と令嬢の噂になってますわ」
「あら、そんな噂が?」
「えぇ、今回の婚約破棄についてエリス様を批判するような声はほぼありませんわ。それだけ殿下やその周りの行動に良い感情を持っていなかった、という事ですわ」
とりあえず好感触みたいなのでよかった。
「私の婚約者も男爵令嬢を贔屓していたみたいで私に謝罪をしてきましたわ」
「あら、そうなんですか?」
「私は気にはしてなかったんですが『蔑ろにしてすまなかった!』って。なんでも殿下の取り巻きだった方々はことごとく後継者から外されて婚約も無くなったそうですよ」
「なるほど、明日は我が身と思ったんですね。リアーヌ様に関してはそれはないと思いますけど」
リアーヌ様はほんわかとした様な方なので怒るとかは全く無い。
……まぁ、その代わり周りが怒るけど。