表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

第七話 宴

街はお祭りの準備を初めて夜には宴会が始まった。


「あんた、名前はなんて言うんだい?」


隣に座った男が声をかけてきた。歳は私より少し上ぐらいの青年だった。


「私は紅花。紅の花と書いて紅花」


私はあの人に付けてもらった名前を名乗った。


「紅の花で紅花か。あんたにぴったりの名前だな。俺は空って言うんだよろしくな」


彼は手を差し出し握手を求めてきた。


「よろしく」


私は出された手を握り彼に笑いかけた。


「っ……」


彼は顔を逸らし、おいてあったお酒を一気に飲み干した。私は彼の行動を不思議に思いながら出されている料理を食べた。


その中には今日仕留めたイノシシの肉もあった。私は手を伸ばし肉を食べる。


「ん、おいしい」


 私はイノシシの肉が思ったよりおいしかったので自然と声が出た。


「これあんたが仕留めたんだろ。すげぇよな。こいつが出てから猟に行けなくなっちまって困ってたんだよ。弓だとこいつは仕留めらんなくてさ。それに最近は物騒なやつらも森にいてさ。」


 空は私が食べる様子を見ながらそう言った。


「その間の食料はどうしていたの?」


 私は疑問に思ったことを空に聞いた。すると空はこう答えた。


「基本的にこの村は自給自足の生活をしてる。畑もあるし川も近くにある。だからそこまでは困らないんだ。けどやっぱそれだけだと足りねえし毛皮とかを他の街に売りに行ったりしなくちゃいけねぇから、猟が出来ないと困ることが多いんだ」


 村の様子はそこまで深刻な感じではないように見えたが苦労はどこもしているのだなと私は思った。


「そんなことよりあんた、当分はこの村にいるんだろ?俺に武器の扱いを教えてくれないか?」


 空は私の腰に携帯されている短剣を見て言った。


「猟に出るだけなら弓や銃で十分じゃない。特にこの村は高い精度で弓を使える人たちが多いみたいだし」


 私は村人の体つきとそこら中にある弓の的を見て言った。


「そりゃ俺だって弓はそこそこ使えるさ。ただ弓はあくまでも遠距離で使うものだ。いざというとき近接戦闘もできないと大事なものは守れないだろ」


 空は真剣な目をしながら私に言ってきた。私は彼の言葉に違和感を感じた。


「近接戦闘………それはどういうこと?」


 私は彼にそう聞いたが彼は


「それは………」


と言葉を濁した。けれど彼の真剣な目は強い決意を表しているように見えた。


「いいわ、教えてあげる。その代わり私には弓を教えて」


私は交換条件を出して彼の願いを聞き入れた。


「マジで!?ありがとう!でもあんたは弓なんか覚える必要あるのか?」


彼は喜びと戸惑いを見せた。


「えぇ扱える武器は多い方がいいの。いざというときに何か役に立つかもしれないから」


私は自分の手をみてグッと握りしめた。


「そうと決まれば明日からよろしく頼むぜ、紅花」


彼は立ち上がり私にまた握手を求めた。


「えぇよろしく」


私は彼の手をとり明日から始まる日々のことを思った。


 翌日

「お姉ちゃん、空おにいちゃんが外で呼んでるよ」


鏡花が私を呼びに部屋に入ってきた。


「えぇいま行くわ」


私は羽織をまとい、空が待つ玄関に向かった。


「遅いぜ、紅花!さぁ早く行こうぜ」


空は私をせかすように言った。


「そんなに慌てなくてもちゃんと行くわよ」


私は空を諭しながら彼のもとへ歩いて行った。


「いってらっしゃーい」


私が玄関を出るときに鏡花が私に言った。彼女が発する言葉は温かくて心地よかった。


「いってきます」


私は微笑みながらそう言って玄関を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ