第六話 運命
村に着くと住民は私の方をちらちらと見る。
「すみません。よそから人が来ることはめったにないので皆珍しがっているのですよ」
父親は私に集まる視線を気にして言った。
「いえ、この格好ではどこに行っても目立つので」
私は自らが身にまとう深紅の羽織を見ながら彼の言葉に答えた。街中の人が一か所に集まっている場所がある。
そこは村の中心にあるという演説台のようなところだ。そこに父親は上がりこうこう言い出した。
「みなさん!彼女は最近出た大きな獣を退治してくれた方です。やつのおかげで狩りが出来なくて大変だったでしょう。ですがその心配はもう必要ありません!今日は狩りに再び行けるようになったことと彼女がこの村に来てくれたことに感謝して宴を開きましょう!」
私は何も聞かされてなかったので、驚いた表情を見せると彼は
「いやーすみません。実は森であった時からあなたは悪い人ではないと分かっていたのですよ。ただ黙っておいた方が面白くなりそうだなと思って秘密にしてたんです」
彼は子供のような笑みを浮かべて私に言った。
「なぜ、私が悪い人ではないと?」
私は彼に聞くと
「実は以前、あなたと同じ羽織を着た方々に助けて頂いたことがあるんですよ。その時に数年後に俺と同じ羽織を着た女が来るから迎え入れてくれって言われてたんですよ。あまり信じていなかったのですが命の恩人の言葉なので頭の片隅に置いていたのですよ。そうしたら今日あなたが現れたので、あぁ、あの人の言っていたことは本当だったのだなと思い全力でおもてなしさせていただこうと」
私はその話を聞いてまた驚いた。
「その恩人というのはどんな人でしたか?!」
私はそう言って彼に詰め寄る。
「えっと大勢いらしたので全員は覚えていないのですがその言葉を言ったのは青くきれいな目をした方でした。確か名前は……」
「蒼月……」
私は彼に詰め寄りながらボソッとつぶやいた。
「そうそう!蒼月さんです!あの方は今もお元気でしょうか?」
彼は嬉しそうな顔で私に聞いてきた。私は彼から目線を外し下を向いて言った。
「蒼月はもう……」
私の言葉を聞くと彼は驚いた表情を浮かべていた。
「そう……ですか……」
彼もうつむき暗い雰囲気に包まれた。しかし彼はすぐに顔を上げて
「すみません、暗い空気にしてしまって。今日はせっかくあなたが来てくれた記念日ですので楽しく行きましょう」
と笑顔を浮かべて言った。私はその言葉を聞いて微笑んだ。