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第四話 獣道

「ねぇお姉ちゃんはどこから来たの?」


女の子は私に話を振った。私は少しだけ返答に困ったが


「……遠い場所から来たのよ。ずっとずっと遠くから」


と濁すように返した。


「ふ~ん、そっかぁじゃあお姉ちゃんは海ってみたことある?」


「海?あるわよ」


 私は彼女の質問に疑問を持ちながらも答えた。


「え?すご~い海見たことあるの?!どんな色だった?本当にしょっぱいの?」


彼女は興味津々でワクワクした目をしながら私を見ている。


「海は綺麗だったわ。水色だけど透き通っていてガラスのように太陽の光を反射してキラキラと光っていたわ」


まるであの人の瞳のように。


「すごいすごい!私も見てみたいなー。それで味は?やっぱりしょっぱいの?」


 私は少しうつむいたが彼女は無邪気な笑顔を向けて言葉を続ける。


「味は……分からないわ。見たことしかないから」


「そっかちょっと残念だな。でも自分で確かめに行けばいいんだよね。その時はお姉ちゃんも一緒に行こうね」


 私を見つめるその目はキラキラと輝いていた。


「えぇ……いいわよ」


 彼女につられて私も少し笑顔になっていた。彼女はまだ幼いように見えたので簡単な道を探す。


私が目を使うと、熊ぐらいの大きさのイノシシのような獣の姿が視えた。


「どうするか……この道を行くのが近道なんだけど」


 そう思った瞬間獣はこちらに走り出していた。


『なぜだ……?いきなり向かってくるなんて!』


私は女の子の手を引いてくるりと身をひるがえした。


「きゃっ」


 女の子は短く悲鳴を上げた。


「大丈夫……少しだけ我慢して」


 私は女の子を抱えたまま短刀を手に持った。身を低くし深く息を吸って構えた。


獣は私に敵意をむき出しにしながらこちに向かって走り出した。


私は身を低くして構える。獣は上からとびかかるように襲ってきた。


私は獣がとびかかってくる勢いを利用して獣の下に入り込み、あらわになった獣の腹を切り裂いた。


血が噴き出し独特のにおいが辺りを漂った。


「ふぅ……ちょっと匂いがキツイわね」


私は手に持った短刀をしまい女の子を降ろした。


「お姉ちゃんすごいね!私こんなおっきいイノシシ見たことないよ。しかもやっつけちゃうなんて」


イノシシの近くに行って毛皮を見ながら言った。


「フフッ、あなたに会ってから私は褒められっぱなしね。ちょうどいいわ、こいつをあなたの村までもっていくわ」


私はイノシシを解体して持っていくことにしたことにした。


「いいの?!みんな喜ぶよ!」


隊に入りたての頃は肉の解体から調理までやっていた。だけど最近は全くしていなかったから、解体作業に少し時間がかかった。


「もう少しで終わるからちょっと待ってて」


「うん!分かった!」


女の子は地べたに座り私が作業しているのをずっと見ていた。私は解体する手を止めずに


「見てて楽しい?」


と聞いた。すると女の子は少し考えて


「う~ん。うん!楽しいよ。前にお父さんがやってるの見たことがあるけどお姉ちゃんはどんな風にやるのかなって」


「そう……お父さんも狩りが上手なのかしら」


私がそう聞くと彼女は首を縦に振って


「うん!お父さんは弓がすっごい上手なんだよ。こんなにおっきいのは取ってきたことないけど」


お父さんの話をする女の子はとても楽しそうだった。そんな話をしているうちにイノシシの解体は終わった。


「お手伝いすることある?」


女の子が聞いてきたので私は


「じゃあ毛皮を持ってもらおうかしら」


とイノシシから剥いだ毛皮を彼女に渡した。


「うっ……重たい……」


女の子は小さな体で一生懸命毛皮を抱えた。私たちは毛皮と肉を持てるだけ持って女の子の村に向かって歩き出した。

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