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鳴らない電話

作者: 雨弓いな

 「土曜日はごめんね? また来週、どこか遊びに行こう」

 私は、優斗にそれだけメッセージを送り、小さく息を吐いた。

 そもそも、中学時代から付き合っている優斗とは、高校で別々になって以来、少しだけ距離が開いたように感じていた。私は、その距離を埋めるため、少しでも優斗との時間を作ろうと努力をしていた。そんな私を、彼はうっとうしいと感じていたようで、ついに先週の土曜日のデートの際に、けんかに発展してしまったのだ。

 一時間待つ。彼からの返信はない。既読もついていない。もしかしたら、移動教室でメッセージを見ている時間はないのかもしれない。

 二時間待つ。やはり既読はついていない。返信までの時間が、今の彼との心の距離を示しているようで、苦しかった。

三時間待つ。いつまでたっても返信がないどころか、既読もつかない。昼休みの時間になり、スマホを確認していてもおかしくない時間だ。

「どうしたの? 怖い顔して。」

 友人が心配そうに顔をのぞき込んでくる。スマホを握りしめながら、鬼気迫る表情をしていたようだ。私の今の状況は、実に鬼気迫っている。私は、友人に優斗とのことを相談してみることにした。

「実は、彼氏と喧嘩してて……。メッセージを送ったんだけど全然返信くれないの。」

「既読はついてるの?」

「それもまだ……。」

「SNSのアカウントは知ってる?」

「知ってるけど……なんで?」

「いいから貸してみなって!」

私のスマホを取り上げ、友人は優斗のSNSを確認する。すると、先ほど彼のSNSが更新されていることが分かった。

「SNSは更新されてるから、スマホ自体を見てないことはないよ。きっと、メッセージに気が付いてるけど、無視してるんだよ!」

 友人は憤慨しながらスマホを返してくる。気が付いてるなら、なんで返信くれないの? 私は疑問がぬぐえない。

「電話していい?」

 私は、もう一度優斗にメッセージを送った。しかし、結局その日は夜になっても返信が来ることも既読が付くこともなかった。もう一度、優斗のSNSを確認してみると、友人たちと遊んでいる様子が更新されている。私はこんなつらい思いをして待っているのに、彼はのんきに友人たちと遊んでいたのか……。怒りがこみあげてきて、思わず優斗に電話をしてしまった。

 もう何コール鳴らしたか、覚えていない。最初は、やってしまった、出ないといいな……などと思っていたが、10秒、20秒と待つうちに、悲しい気持ちの方が大きくなっていった。あと1コール鳴らしてでなければ切ろう、そう思って待つ。しかし、結局彼は電話に出ることはなかった。

 あまりしつこく連絡するのも迷惑かな、と思い、それ以降メッセージを送るのを我慢することにした。優斗のSNSは相変わらず更新されているが、既読はつかないし、返信も来ない。そして私は、今日も鳴らない電話の前で、彼からの連絡を待っている。もうだめかもしれない、という思いが零れ落ちてくるのを抑えながら。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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