正しい回答 【月夜譚No.157】
最適解には、程遠い。あの時、もっと違う行動をしていたら、きっとこうはなっていなかった。
しかし、その時の状況下で何が最適解なのかを導き出すのは、神以外には不可能だろう。未来がどうなるかなんて、我々人間には知り得ないのだから。
それでも、過去の自分の行動を悔やまずにはいられない。たとえ最適解でなくとも、今よりは随分マシな答えも出せたのだろうから。
抜けるように青い空を、彼は腰を下ろした芝の上に手をついて見上げた。横切っていく二羽の鳩を、少しばかり羨ましく思う。
いくら悶々と考えたところで、過去は何一つ変えられない。けれど、つい考えてしまうのだ。人間とは、きっとそういう生き物なのだろう。
彼は上体を倒して大の字になった。風が心地良い。頬を掠める芝が擽ったい。
このまま何も考えず、自然の一部になれたら良いのに――。
彼は大きく息を吸って、目を閉じた。