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フルダイブ技術の発展の為に被験者1号になりました  作者: hayao-key
第1章:被験者1号の最初の7日間編
8/14

episode8:また家族が増えた

仮想世界での生活も5日目を迎える

 ミナトが仮想世界に入ってから、五日目の朝を迎えた。

 また知らぬ間に眠ってしまったので、起きた時は何時ものように驚いた。

 だって厳ついクマの顔が目の前にあるんだもん。慣れないっての!

 寝起きで心臓止まっちゃうよ? 昨日から心臓あるんだからさ!


「なんでぇミナト! いちいち俺様の事忘れんじゃねえよ!」

「あはは。つい忘れちゃうんだよ。てへっ」

「ミナトは臆病なのだ。生きる上で恐れる事は大切な事だよ? コーディ」

「でもよぉ、俺もヴァナルの姉御も、大抵の奴に負けないだろうがよぉ」

「うむ。その姉御と言う響きは嫌いでは無いな。コーディの言う事も分かるが、慢心は危険だぞ」

「何時の間に姉御呼び!? ヴァナルも何か悟ってるみたいだし! そしてコ-ディは俺の発言はスル-なの!?」


 そんな騒がしい朝だったが、ちゃんと心を通わせてるのが分かるんだよね。

 出会って間もないんだけど、この感じはとても心地良い。

 この日の朝ご飯は、既にコ-ディと子オオカミ達が集めてくれていた。


 俺は朝から生魚は遠慮したいので、果物を食べておいたよ。

 コ-ディに頼めば昨日の様に、火は熾せるんだけどね。

 特に寒い訳でも無いので、早く出発する事を優先したんだ。


 出発を急いだのは、昨日に距離を稼げていないのも理由のひとつだ。

 新しい発見があったからさ。周辺の探索を優先したしね。

 という訳で食事が終わると、直ぐに移動を開始した。





◇◇◇





 移動する事数時間。昨日の様な発見は無く、俺達は一旦休憩をとる。

 進むに連れて、明らかに勾配が緩くなって来ていたんだけどさ。

 コ-ディが「お腹が空いた!」ってうるさかったんだよね。


 まぁ俺もヴァナル達もそれは同じだったから、はやる気持ちを抑えたんだよ。

 そして今日も今日とて食料調達だ。

 俺はまた木に登り、果物を採るつもりだった。


 現実の知識はあっても、俺は皆より力も身体能力も劣る。

 移動速度も皆が俺に合わせてくれているし、疲れるのも一番早い。

 ヴァナル達は勿論、コ-ディもデカい図体に似合わぬ瞬足だしね。


 それでも皆は俺に、何も言わないけどさ。

 ちょっと悔しいとは思ってるんだ。一応男の子だし!

 はっきり言って他の皆より優れている部分が、木に登れる事だけだったんだよ。


「よし。あの果物は食べれそうだ」


 俺が見つけたのは、赤い実の付いた木だった。

 少し高い位置にあるが、これまで食べた事の無い種類の果物。

 落ちない様に慎重に登り、目的の果物まであと少しの距離まできた。

 その時、俺の視界にある物が映る。


「ん? あれってもしかして鳥の巣?」


 果物の近くに小枝を集めて作った、野鳥の巣の様な物を発見したんだ。

 この時の俺は、飛び去った黄色い鳥の姿を思い出していた。

 鳥が居るのは間違いないんだし、もしかしたら卵があるかも知れない。


 何も無くても、どうせ上まで登るつもりだ。

 ちょっとワクワクしながら登り、そっと巣を覗き込む。

 そしたら......巣の中に思ったより大きめの卵を発見したんだ!


「うわっ! あったらラッキ-と思ってたけど、本当にあったよ!」


 心の中でガッツポ-ズの俺だったんだ。

 皆に自慢してやろうなんて思ってた。

 でもそれを直ぐに、後悔する事になる。


 ⁈ 何だ!? 今動いたら駄目な気がする!

 その感覚には、覚えがあった。

 全身がゾワゾワする様な感覚。

 

「これってコ-ディと出会った時に感じた?」


 ゆっくりと視線を上にあげると、俺の目の前にソレは居た。

 登っている間、気配は何も感じなかったハズなのに。

 いつの間にか、目の前に居たのだ。


 俺はソレを見たまま動けなかった。

 コ-ディの時と同じだが、相手はそんな俺から視線を離さない。

 今度こそ駄目かもしれない。助けを呼ぼうにもこの高さは誰も登れないんだ。


 そう考えると身体の力が抜けていく。

 もう諦めよう。これはもう無理だよ。

 そして俺はまた、死を受け入れてしまったんだ。


「おいミナト! 何やってんだ! 逃げろ!」


 その声と同時に、俺の近くを何かが通り抜けた。

 コ-ディが大きな石の様な物を投げたんだ。

 すると先程まで固まっていた身体が、力を取り戻していく。

 俺はそのまま木から飛び降りる事を選択した。


 普通ならあり得ないが、下には信頼できる相手が居るんだ!

 結構な高さだが、俺の友達なら絶対受け止めてくれる!

 そう信じての行動だった。


「危なかった。でもコ-ディちゃんと受け止めてよぉおお!」


 俺は助かった気でそう叫んでいた。

 でも甘かったんだ。

 間もなくコ-ディの腕の中というタイミングで、俺の身体は何者かに攫われた。


 え!? 何で!? どう言う事!?

 困惑する俺だったが、何とか首を回して正体を確認。

 すると空中で俺の身体を奪い取ったのは、先程まで睨まれていた相手だった。


「畜生! ミナトを放しやがれ!」

「ミナトを放しなさい!」

「「「「ウォオオ-ン」」」」


 コ-ディ達が追いかけて来るんだが、それをあざ笑う様に木に飛び移り移動するソレ。

 俺も何とか抜け出そうとするのだけれど、その度に身体が締め付けられる。

 くそっ! まさか木と木を飛んで移動するなんて思わなかった。


 俺は飛ぶなんて習性知らなかったんだよな。


「ちっ! しつこい奴らだ!」

「ぐっ。お、お前喋れるのか!?」

「ん? 何だ人間。アタシと会話できるのか?」

「出来るも何も今してるだろ! それに苦しいっての!」


 まさか喋るとは思わなかった。と言うか発声器官があるのかよ!

 そんな会話をした後、いきなり木に登りだすソレ。

 そして太い枝の上で俺の拘束を緩めた。


 結構長い時間締め付けられていたから、身体が痺れている。

 ソレは俺を逃がす気は無いらしく、俺を中心にとぐろを巻いた。


「お前は何者なの? 本当に人間?」

「自分で言ってるじゃ無いか! 人間だよ!」

「人間がアタシと会話出来るわけないでしょ! そんなの初めて見たわよ!」

「そんな事言われても知らないっての! コ-ディやヴァナルとも喋ってるし!」

「コーディ? ヴァナル? 誰よそれ? もしかしてあのクマとオオカミ?」

「そうだよ。名前は俺が付けたんだけどな。俺の大切な家族だ」

「何よそれ! ずっこいわ! それなら私の名前も付けなさいよね! ほら早く!」

「はい? 何言ってんの? お前は俺を喰おうとしてたんじゃないのか? 何でそんな相手に名前付けなきゃいけないんだよ!」

「それはアンタが、私の卵を盗もうとしたからよ! 泥棒!」


 え? あの卵ってコイツのだったの?

 それなら怒っても仕方ないのか? 今は敵意を感じないけど。

 ......とりあえず謝ってみようか。


 戦って勝てる気もしないし、逃がしてくれないだろう。

 それと気になる発言もあったよな?

 人間が会話出来るわけ無いって。という事は人間と会った事があるのか?


「そ、その卵の件については謝る。すいませんでした。まさかお前の卵だなんて知らなかったんだ」

「フ、フン。分かれば良いのよ。分かれば! あそこは穴場なんだからね!」

「ん? ちょっと待て。穴場ってどう言う事?」

「あの巣を見張ってたら獲物は勝手にやって来るし、卵も食べ放題なのよね!」

「ちょ! それって狩場って意味だろ! それならやっぱり俺も獲物じゃ無いか!」

「人間は食べないわよ! 飲み込むの面倒くさいでしょ!」

「そんな理由!? じゃ、じゃあ俺を喰う気は無いんだな?」

「だからそう言ってるでしょ。そんな事より早く名前を付けなさいよねっ」


 何なんだこいつは。真っ白で赤い目をした蛇のくせにさ。

 体長もコ-ディよりデカいんじゃないか? それで人間を飲み込むの面倒くさいとか。

 口調からして雌に違いないだろう。だから卵産むと思ったんだ。


 それにしても名前かぁ。白蛇って俺の親の実家の方では、神様の使いって言われてるんだよね。

 目の前のこいつは、そうは見えないけど。

 白蛇ねぇ。ホワイトスネーク......ならこれかな?


「長い名前は呼びにくいし、デールってどうかな? 因みに俺はミナトだ」

「何? デール? それがアタシの名前。そうね! アタシはデール! 今日からデ-ルよ!」

「き、気に入ってくれたのか? ならもう良いだろ? 謝罪もしたし」

「そうね。今回は許してあげるわ。ミナトは特別なんだからねっ!」

「......蛇のツンデレとか需要あるのか? ま、まぁ許してくれるなら何でもいい。あっ、一つだけ教えて欲しんだけど良いかな?」

「ん? 何ミナト? 今は気分が良いから許可するわ」

「お、おう。デ-ルって俺以外の人間見た事あるのか? あるならその場所を教えて欲しい」


 俺のその問いに対しデ-ルは、何かを見定める様な目をしていた。

 そして教える代わりに、1つ条件を出してきたんだ。

 その条件は......「私も仲間に入れなさい」だった。


 俺は驚いたんだが、一存では決められないと返事した。

 今回の件はコーディとヴァナル達も怒ってると思ったしな。

 もし反対されたら諦めるつもりだったんだよ。

 情報は惜しいけどさ。大切な家族の気持ちを優先したいしね。





◇◇◇





「ミナト! ほら早く行くぞ!」

「ほう。デ-ルと言うのか。私はヴァナルだ。よろしく頼む」

「「「「ウォオオン」」」」

「なぁミナト。何時もこんな感じなのか?」

「ああ。色々心配するだけ無駄だった」


 あの後、デールと一緒に皆の元へ帰ったんだけどさ。

 俺が名前を付けた事を知ると、それだけで受け入れられてしまったんだ。

 コ-ディ曰く「俺もヴァナルもそうだったじゃねぇか」って事らしい。


 まぁ怪我もしてないし、俺も不用意だったんだけどね。

 これで良いのか? 俺の家族!

 

 結局この日は、日暮れまで移動して五日目は終了した―――


白蛇デ-ルの名前は、あるミュ-ジシャンに由来します。

気になる方は調べてみてくださいませ(笑)

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