表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フルダイブ技術の発展の為に被験者1号になりました  作者: hayao-key
第1章:被験者1号の最初の7日間編
7/14

episode7:変化する身体

おやおや? 何やらある様ですぞ?

 何かとても幸せな気分だ。

 心地良いと言うか暖かい。

 大きなものに身体が、包まれている気がするんだ。

 もう何時までも、このままでいたい。


「ミ.....いい......きろ!」

「うぅん。もうちょっと」

「ミナ......らが減ったぞ!」

「だからぁ! もうちょっと「いい加減に起きろってんだ!」寝たい? ヒェッ!? ク、クマぁあああ!!! ってデジャブ!?」

「ふむ。朝から騒々しいのだな。人間という者は」

「ミナトは朝になっても起きやがらねぇんだ。俺が声掛けるまでな!」

「......だからゴメンって。それで何時の間に俺は、ヴァナルに包まれてた!?」


 妙に気持ちいいと思ったら、俺はヴァナルに包まれて寝ていた様だ。

 フカフカモフモフで気持ち良いし、何だが凄い安心感がする。

 母親に守られてるって、こう言う事なのかも?


 ん? ちょっと待って! フカフカ? モフモフ? あれ? 暖かい? 

 どう言う事だ? 昨日までこんな感覚無かったよな?

 俺は胸に手を当ててみる。すると更に驚いた。


「うぉっ!? 心音がある!? 何で!?」

「おお! ミナトもか! 俺も何かここがドクドク言ってんだよ!」

「私もだ。こう何かが身体の中を流れている様な気がする」


 驚いて声を上げる俺。だけどそんな俺の言葉に驚く様子も無い2匹。

 コ-ディとヴァナルにも同じ変化が起こっている様なのだ。

 眠る前まではこんな感覚は無かったはず。きっとコ-ディとヴァナルも。

 

 これまで物を食べたり触ったりしていたが、何処か無機質な感覚を持っていた。

 最初は夢だと思っていたから、そう言う部分を気にする事も無かったけど。

 でも仮想世界だと気づいてから、色々と試す事も多かったんだよね。

 木や川の水に触ったりさ。でも結局、ただの物でしかなかった。

 データで出来ていると考えると、そう言うものかと納得もしていたんだけどね。


「という事は、もしかして呼吸してる? ってヤバい! 苦しくなって来た!」

「ウォオオ! 俺も何だが苦しい! 何だこれ!」

「う、うむ。ど、どう言う事だ......な、何が......」

「ちょっと二人とも俺と同じ様にして! 早くしないと死んじゃう!」


 俺は焦りながらも両手を大きく広げて、スーハ-と息を吸う動作を行った。

 意識した瞬間、呼吸をしなきゃ死んじゃうとか鬼か!

 コ-ディとヴァナルも見よう見まねで何とか、最悪の状況は免れた。


「はぁ~。なんて事するんだクルミ様達は! 殺す気か!」

「おもしれえなぁコレ! 何か喰ってるみたいだぜ!」

「うむ。こう身体が欲している気がするな」


 怒っているのは俺だけで、コ-ディとヴァナルは何故か嬉しそうだ。

 見た目は獣は二匹だけど、どうにも人間ぽいなと感じる。

 状況に対しての対処も、学習しているんだろうか?


 下手したら俺より、順応性が高いような気がして来たよ。

 やっぱりこの二匹は、AIを搭載してるだろこれ?

 もうそうだと思って間違いないよな?

 だとするとかなり高性能なAIだ。

 

 決められた受け答えをするんじゃなく、自身で考えて話している様だし。


「二人って何か変わったように感じる部分ある?」

「お? そうだなぁ。腹が減った!」

「ふむ。コ-ディの言う事も一理ある。昨日と違い空腹というのを感じるな。それに私が私であると言う実感がある」



 コ-ディは相変わらずだけど、ヴァナルの方は相当賢そうだ。

 恐らく今までは、作られた入れ物みたいな感じだったんじゃ無いかな?

 それが新たに臓器が出来た事によって、生物として変化したのかも知れない。

 

 当たり前に腹が減り、食する事で満足感を得る。

 こんな事を例え仮想空間でも実現出来るって、凄い技術革新なんじゃ無いか?

 因みにヴァナルの子供達は、俺達と違って平然としている。


 この事から特定の個体のみ、AIを搭載しているんじゃ無いかと考える。

 もしくは他の個体は初めから、プログラムされているのか?

 意思疎通できないから、確かめようが無いんだけどね。


 チョットした騒動はあったが、その後は何時ものように食事を摂った。

 味は変わらなかったけど、満腹感はあったよ。

 もうお腹一杯って言うね。


「それじゃあ、予定通り今日も川下へ移動しようと思うんだけどさ。ヴァナル達も着いて来るんだよね?」

「うむ。此の場所に居なければならない事は無い。それに他の場所に興味もある」

「アハハ! 仲間が増えたじゃねぇか! 何だっけか? ボッチ卒業だったか?」

「コーディ! 余計な事言わないの! 友達と言うか家族って感じなんだから!」



 こうして俺達は人間が暮らす場所を探して、再び移動を開始したんだ。






◇◇◇






 移動し始めてから数時間。

 変化は色々とあった。まず初めに風を感じるようになった。

 これは昨日まで無かったんだよね。


 現実世界なら走ると身体に感じる風。その当たり前が、今はあるんだ。

 ヴァナル達オオカミ組は、とても気持ち良さそうだ。

 コ-ディはその辺無頓着で、俺に言われて初めて気づいたみたいだけどな。


 ただ風が吹くようになってから、日陰は肌寒く感じる。

 もし季節が変わるようになるなら、服を考えないといけないだろう。

 風邪を引くという想像は出来ないけど、リアルになっていく今の状況ならあり得る。


「そろそろ一旦休憩しないか? 何だかお腹空いてきた」

「おうおう! 俺も腹減ったぞ!」

「分かった。子供達にも食べられる物を探す様に指示しよう。何か新たな食べ物があるかも知れぬ」


 俺は相変わらず木に生っている果物類を中心に集めた。

 手に持てる量は知れているので、何度も往復する必要があるのが辛い。

 何度目かの往復をした時、俺はその光景に心底驚いた。


「ちょ、ちょっとそれ何処で見つけたの!」

「ん? 普通に川に居たぞ? 大量だったわ! アハハハ!」


 俺の視た光景は山盛りに積まれた魚の姿だったんだ。

 今も尚、辺りに散らばった小魚を、ヴァナルの子供達がせっせと運んでいる。

 どうやらコ-ディがすくい上げた魚を、そのまま放置していたんだろう。

 やる事が豪快と言うか、ガサツと言うか。まぁらしいけどさ。


 だけど問題はここからだ。

 流石に俺は生魚をそのまま食べれない。

 そうなるとせめて焼きたいんだが、火を(おこ)す必要が出て来たんだよね。


 一応山で遊んでいたから、知識はあるしやった事もある。

 でもこの仮想世界でそんな事が可能なのだろうか?

 ちょっと心配になったが、魚が実装されたんだから出来るかもしれない。

 それに呼吸が出来るって事は、酸素があるって事だからさ。


 という事で俺のチャレンジは始まった。

 周辺に落ちている小枝や葉っぱを出来るだけ多く集める。

 幸い集めた小枝は湿っていなかった。雨は降った事が無いからな。

 ただ出来れば、枯れ木が欲しかったんだけどなぁ。


 集まったら今度は土に適当な穴を掘る。

 スコップ何て無いから、子オオカミと協力して掘ったよ。

 そしてその穴に、川辺の石を敷き詰める。

 これも子オオカミ達が大活躍してくれた。


 この時注意するのが、小石は穴の中に入れる事。

 小さな石は熱量を高めてくれるからね。

 そして穴の周りを大きめの石で囲う様にする。


 それから集めて来た小枝を、穴に入れて行くんだけど。

 心配なのは枯れ葉が無い事なんだよね。

 青々とした葉っぱは燃えにくいし。

 無い物は仕方がないけど、そこもリアルにして欲しい所だ。

 着火剤カモ-ン!


 はぁはぁ。では切り替えよう。

 出来るだけ燃えやすいように、穴の中の小枝は空気が入るように隙間を作った。

 そしていよいよ火を熾すんだけど、ちょっと試してみたい事があったんだ。


「コーディ。悪いんだけどさ。細い木を取って来てくれないか?」

「ん? 適当で良いのか? 細っこいやつならすぐ取って来るけどな」


 そう言った後、近くの木の側へ歩きズバンと鋭い爪で木を殴り倒すコ-ディ。

 豪快な一撃だったから、木は乱雑に割れてしまうが予定通りだ。

 よしよし。これで何とかなりそうだ。


 普通に駒の様に板と棒とひもを使って、頑張るのも良いんだけどさ。

 折角力自慢が居るんだし、別の方法も試してみたいんだ。

 という事でコ-ディの出番は続く。


「じゃあコ-ディ。ちょっとここの上で、その木を擦り合わせてくれないかな。もう思いっきりやって欲しい」

「おう。この割れた木を擦り合わすんだな。任せろ!」


 そう言って力任せに木と木を擦り合わせ初めて数分。

 木から煙が出て来た。やはり燃焼はするらしい。

 そして暫くすると、ポツポツとその火種が下に落ちる。


 俺は素早く小さな葉っぱを火種が落ちる場所に敷いていった。

 すると結構時間が掛かったけど、徐々に葉っぱが燃え始めたんだ。

 小枝の方は中々燃えないが、この分なら直に燃え始めるだろう。


「ありがとうコ-ディ。流石だよ! 何とかなりそうだ!」

「えへへ。俺様は凄いだろ? もっと褒めて良いんだぜ!」


 この後、俺は木が消えない様に注意しながら、余った小枝に魚を刺していく。

 内臓は枝をえらの部分に突き刺して、取れるだけ取った。

 塩も何も無いけど、生で食べるよりマシだ。


 火が少し大きくなってくると、徐々に魚も焼けてくる。

 すると何だか良い匂いがして来るんだよなぁ。

 コ-ディや子オオカミ達は、生魚をパクパク食べていたんだけどさ。

 いい匂いにつられて集まって来た。


 その時だ。

 今まで姿の見えなかったヴァナルが帰って来たんだよ。

 俺はヴァナルが口に咥えている物に釘付けになった。


「ヴァナル。それどうしたの!」

「果物を集めていた時に見つけてな。何だが捕まえないといけないと思ったんだ」

「ま、まぁ本能的にそうするだろうけど。そうか。やっぱり肉もあるんだな」

「何かそれも旨そうだな! でも俺にはちょっと小せえか! アハハ!」


 ヴァナルが咥えて来たのは、ウサギ(仮)だ。

 見た目はウサギなんだけど、俺の知ってるサイズより大きいし、更に額に一本角がある。

 ファンタジーなら魔物になるんじゃないか? 

 人間の二、三歳の子供ぐらいの大きさあるし。


 俺も肉は食べてみたいから、後でおすそ分けして貰おう。

 今はそれよりも目の前の魚だ!

 焼け具合を確認してかぶりついたんだけど、ちゃんと魚の味がしたよ!


 白身の魚だったけど、旨味も感じられたし満足だ。

 ちょっと内臓が残ってて、苦かったんだけどな。

 ああ醤油が恋しい。やっぱり魚には醤油でしょ!

 

 でも作り方知らないし、無い物ねだりは辞めるべきか?

 ならせめて塩は見つけないとな。

 普通の身体なら、生きる為に塩分は必要になるからな。

 

 しこたま魚を喰った後、ウサギ(仮)の肉を少し貰って焼いてみたんだけどさ。

 チョット筋張ってて、嚙み切るのに苦労した。

 その分食べ応えはあるんだけど、味はまんま肉としか言いようが無い。


 結局この日は、新たな発見に夢中になったんだよ。

 他に食材になる物があるかも知れないからさ。

 俺も含めて日が暮れるまで周囲を探索したんだけど、ウサギ(仮)は見つからなかった。

 コ-ディが残念そうにしてたけどな。こればかりは仕方ないよね。

 

 結果そのまま夜を迎えましたとさ―――

朝起きたら、いきなり身体の構造が変わってるなんて酷い(笑)

でも何だか楽しそうなミナト達であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ