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フルダイブ技術の発展の為に被験者1号になりました  作者: hayao-key
第1章:被験者1号の最初の7日間編
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episode2:被験者1号?

出来るだけ早い更新を目指します。

 何だかんだと忙しくなった俺の大学生活。

 昨日は突然の展開から長い時間の検査でかなり疲れていた。

 家に帰ると食事も摂らずにベットへ向かい、そのまま寝てしまったんだ。


 しかし安らかな時間は、けたたましい携帯のアラ-ムで終わる。

 眠たい目を擦りながら目覚めた俺は、壁に貼ってある講義のスケジュ-ルを見た。


「ふぁあ。今日って無理に大学行かなくても良いんじゃないか?」


 大学とバイト先の往復で毎日を過ごしていた俺は、結構真面目に大学生活を送っていた。

 なので進級する為の単位は、ほぼ問題ないのだ。

 これならもう少し寝ても良いか? と思ったのだが、そこで昨日の記憶が蘇る。


「あぁ。そう言えば研究室へ行くんだったな。結局、大学には行かないといけない訳だ」


 とりあえず眠気を覚ます為、熱いシャワ-を浴び身支度を整える。

 簡単な朝ご飯を食べ、何時もの様に通い慣れた大学へ向かった。


 今住んでいる1Kのアパ-トから大学までは徒歩で20分程だ。

 都会に比べ家賃は安いが、結構年季の入ったアパ-ト。

 だが不思議と魅力を感じた俺は、即決でここに住む事を決めた。


 両親にも通学に便利で家賃の負担が少ないので、反対はされなかった。

 でも流石に大学の学費を含めると結構な金額な為、1回生の時からアルバイトで食費を稼いでいたんだ。

 

「もうバイト行かなくても良いって本当なんだよな? 昨日うっかりして、何時お金貰えるか確認して無かった。今月も厳しいし出来るだけ早く貰いたんだよなぁ」


 そんな事を考えていると、気づいた時には研究室が視界に入る。

 さて今日の診断結果がどう出てるんだろうか?






◇◇◇





 現在の時刻は午前9時過ぎ。少し早いかと思ったが、講義もこれぐらいの時間だ。

 少し緊張しながら建物入り口に向い、昨日貰ったICカードを扉の装置へかざした。


 カシャンと機械音が鳴りドアが開いた事を確認した俺は、とりあえず昨日の部屋へ向かった。

 そして同じ様に扉にカ-ドをかざし、ゆっくりと部屋へ入った。


「ミナト君。おはよう!」

「九条さん。おはようございます」

「早速だけど機能の検査結果を渡すよ」


 昨日会った九条さんが俺を見つけて声を掛けてくれた。

 それで安心した俺は渡された診断結果を確認したんだ。


 うん。とっても健康体だ。

 今は運動していないが、実家も結構田舎だったから割と体力には自信があった。

 全ての検査に異常なし。そう検査結果に書かれていた。

 

 その事に安心はしたんだけど、俺には気になる事があった。


「九条さん。確認したい事があるんですが」

「何だい? 検査は問題なかったよね?」

「ええ。それは良かったんですが......この俺の名前の欄の『被験者1号』って何なんですか?」

「ああそれね。後から説明するつもりだったんだけど、今でも良いかな。ミナト君には今日から我々の実験に付き合ってもらう事になる。その辺は契約書にも書いてあったと思うけど」

「え? 契約書ですか?」


 そこで俺は思い出した。そう言えば中身を殆んど読んだ記憶が無い。

 それにあの時はクルミ様に急かされてたから、読んだふりしてサインしたんだ。

 ジワリと冷や汗が流れて来る。被験者? 何それ? もしかしてとんでもない事になったのか?


「あ、あのですね。もう一度契約書の確認って出来ませんか?」

「え? 契約書の控えは貰って無いの? でも今日はクルミさん居ない日だよ?」

「そ、そうですか。そ、その......命に関わる事って無いんですよね?」

「......ミナト君。契約内容をちゃんと確かめなかったのか? サインした以上撤回は出来ないけど」

 

 俺は頭が真っ白になった。

 命の危険について言及されなかったが、明らかに九条さんの態度がおかしい。


「撤回は出来ないんですね。それなら明日、クルミ様に確認します」

「そうか。とりあえずミナト君の事は、今日から『被験者1号』と呼ばせて貰う事になる。これについては詳しくは言えないんだ。サインした以上は従ってもらうけどね」

「は、はい。了解しました。それで今日はこの後何をするんでしょうか?」

「『被験者1号』。君は今からあの機械に入ってもらう」


 九条さんはそう言ってから、部屋の中央にある大型の機械へ向かった。

 俺は慌てて九条さんの後を追う。ドキドキしながら向かった機械には扉があった。


 九条さんは俺に扉から中へ入るように手で合図した。

 少し躊躇したが俺は黙ってその指示に従ったんだ。


 機械の中は想像したよりも広い。カシャン。入って直ぐに扉が閉まる音がした。

 俺は焦って出ようとしたんだが、扉はロックされている様で開かない。

 パニックになりそうな俺だったが、灯が点いた事で平静を取り戻した。


《被験者1号。そのまま奥へ進むと扉がある。その扉を開ける前に今着ている服を脱ぎ、置いてある物に着替えなさい》


 俺は仕方なく奥へ向かい、指示通り服を着替えた。

 置いてあった服は手術着みたいな物で、不安が押し寄せてくる。


「これ本当に大丈夫なのか? 一体俺は何をするんだ?」


《被験者1号。扉を開けて中へ入れ。そして中央にあるベットへ仰向けで寝なさい》


 ジッとしていると怖かったので、俺は扉を開けて中へ入った。

 確かにベットの様な物がある。だが頭の方に門の様な機械がある。

 昨日受けた検査で見たMRIの様な機械だ。


 恐る恐るベットへ向かい、指示に従い仰向けで寝ころんだ。

 すると頭の方から機械が俺に向って進んで来た。


《被験者1号が所定の位置についた。これより実験を開始する》


 その声を聞いた後、俺の意識は暗転したんだ。







◇◇◇





 次に意識が戻った時、俺は見知らぬ光景を見ていた。

 さっきまであの変な機械の中に居たはずだったんだが、俺の視界に映っているのは木だった。


「何処なんだここは? 俺はあの機械へ寝たはずだよな?」


 起き上がろうとするが、何だか身体が重い。

 まるで自分の身体じゃ無いみたいだった。

 一体どう言う事だ? 何とか動こうと頑張る事数分。


 俺は身体を起こす事に成功した。

 何時ものように力を入れるのではなく、頭で想像した結果だった。

 動かない身体を起こすイメ-ジをしたんだ。


「何だろう。不思議な感覚だなコレは」


 改めて自身の身体を見てみると、見た事の無い服を着ている事が分かった。

 あの手術着の様な服では無く、シャツにズボンを履いている。

 そして足元には脛まであるブーツ。


 とにかく立ち上がる事にした俺は、先程と同じ様にイメ-ジをしたんだ。

 すると問題なく立ち上がる事が出来た。

 そして初めて周囲を確認する。


「此処は森? 何でこんな場所に居るんだ俺は」


 見渡す限り緑の葉をつけた木々に囲まれている。

 少し薄暗いが光が差し込んでいる居る所を見ると、昼間だと分かる。

 それに意識を集中してみると、山特有の匂いも感じることが出来る。


 こんな夢ってあるのだろうか? あまりにもリアルだ。

 もしかして生まれ育った実家近くの山でも思い出してるのか?


「まぁこれが夢でも良い。とにかく此処から少し歩いてみるか」


 歩くというイメ-ジを思い浮かべると、自分の身体が動き出す。

 試しに気に近づいて触ってみる事にしたのだが、これも不思議な感覚だった。

 手に触れているのだが、感覚的には頭で木を()()()いる。


 だが暫くすると慣れるもので、特別意識しなくても自由に動けるようになっていった。

 どれぐらい歩いたのだろう? 突然、川の流れる様な音を()()()。 

 そこでこの場所に来て初めて、高揚感が生まれたのだ。


 種類の分からない植物等、どうでも良い。

 身体が水分を欲しているのだ。

 そう感じた時には自然と走っていた。


 そして俺の目の前に小さな川が現れたんだ。

 無我夢中で川に近づき手で川の水を飲む。

 ガブガブと水を飲み頭が安らぎを感じた時、ふと我に返る。


「俺何してるんだ? 川の水をそのまま飲むなんて駄目じゃ無いか。腹壊すんじゃないだろうか?」


 冷静になってそう考えたのだが、これは夢の中の話。

 現実ではないのだから、心配する必要は無いのだ。


「あははは。どれだけリアルな夢なんだよ。喉が渇くって凄い欲求だったんだな。普段生活してる時は、こんな経験出来ないぞ」


 ひとしきり笑った後、俺は更に移動する事を決めた。

 どうせなら楽しもうと思ったんだ。

 川があるならもしかして街もあるかも知れない。


 勿論向かうのは川下一択だ。

 全く整地されていない山道を川に沿って歩く。

 また何も考えず歩き続けたのだが、急に身体の動きがおかしくなった。


「あれ? これって腹が減ってるのか?」


 これも感覚的なものだった。

 身体を動かすエネルギ-が足りないと感じたのだ。

 どうしたものか? 山で食べ物を探す?


 そこで周囲が暗くなっている事に気が付いた。

 先程まで気分が高揚していて、周囲に意識が向いていなかったのだ。

 

「マジか。普通に陽が沈むんだな。どうするべきか? 今の所、動物は見当たらないよな」


 小さな川にも魚の姿は無い。

 だが俺の知っている山の知識で、夜の危険性を感じている。

 だがこの身体は食料を必要としている事を理解してもいる。


 もし動けなくなった時、獣が居ないと断言できるのか?

 答えは否だ。こればかりは例え夢でも分からない。

 夢だからと言って襲われたくはない。


 とにかく完全に陽が沈む前に何か食料を探そう。

 そして眠たくなったら気に登ろう。

 これだけ木々があるんだから、登れる木ぐらいはあるだろう。

 落ちない様につるとかで、ロープ的な物ぐらいは作れると思うし。


 それからの行動は自分的に驚くほど俊敏だった。

 食料に関しては野イチゴの様な物と柑橘類と思われる物を見つけた。

 ちょうど柑橘類が生っていた木が、登れる事も確認出来た。


 こうして俺はその夢の世界で、初めての夜を迎えたのだった。

 とても不思議な感覚だった。夢で寝る何てね。

 




不安を感じながら『被験者1号』となったミナト。

果たして川の流れる先に何が待ち受けているのだろうか?

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