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ならば面白くして差し上げましょう

婚約したつもりはないなんて言ってくる婚約者にやり返すため、味方を増やしてこちらから婚約破棄してやります

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私の婚約者は、目の前でうなだれていた。


 今さらながらに、後悔しているようだ。


 一時の感情で、大きな決断をしてしまった事に。


 後悔してももう遅い。


 私との婚約を、なかった事にした。


 それは間違いだったのよ。


 私は屋敷から彼を追い出した。






「君と婚約したつもりはない」


 なんて言って、あの日貴方はしらをきった。


 婚約を破棄したら、どちらもダメージを受けるから。


 だから、婚約した事そのものをなかった事にしようと思ったのかしら。


 でも、そんな話が本当に通ると思っているの?


 婚姻の管理は教会が行っている。

 この世界で人と人が結ばれる事は、神様がお祝いするような大切な事だから。


 それに、この地方をおさめる領主様に確認すればすぐに分かる事なのに。


 彼には愛人がいた。


 私とは正反対の、派手でお喋り好きな女性だった。


 私といるのはつまらないからって、思ったんでしょうね。


 彼は、私といる時間より、愛人といる時間を大切にしていた。


 でも、その人お喋り好きだったので。


 内緒の隠し事をするには向いていないわ。


 貴方が浮気していることは、あっという間に噂になっていた。


 社交場に赴くたびに、人々の視線を感じるようになった。


 中には、直接聞いてくる人もいたわね。


 貴方は気が付いていなかったのかしら。


 そうよね。


 昔から、人の事には鈍感だったもの。


 早く歩く貴方の後ろで、私がついていこうとしていても気が付かない。


 私が話しかけようとしていても、他の人とのお喋りをやめない。


 貴方の身に嬉しい事が何かあったなら、私はずっとその日は貴方のお喋りに付き合わされたわ。


 私の話はつまらないと言って耳を傾けないのに、自分の事を聞いてもらえないと怒るのよ。


 





 だから、もうそろそろこの関係が終わるんじゃないかって、うすうす予感していたわ。


「あいつとは婚約を破棄するよ」なんて愛人にもらしていたらしいじゃない。


 それも噂になっていたわよ。


 だから、私は皆に聞いてもらう事にしたの。


 私と一緒にいるときの、日ごろの婚約者の態度を。


 身内の至らない出来事を言うのはとても恥ずかしい事だけれど、他の人の同情を引いて、味方を増やしてこの関係を終わらせることが、一番ダメージが少ないと思ったから。


 そうして準備をしていたら、思った以上の事をしでかしたのね。


 愛人の事を打ち明けて、愛せなくなったからと、婚約を白紙に戻したのなら、まだ良かったのに。


 そうすることなく、婚約した覚えはないだなんて。


 だから、私は何度も念を押したのに。


「本当にそう思っていらっしゃるの」

「あっ、ああ! 君はただ僕と付き合っていると妄想しているにすぎない」

「嘘をつく事は、自分だけでなく家の名前にも泥を塗る事になりますわよ」

「嘘じゃない。俺は君なんか知らない」


 彼は、どうしようもなく愚かだった。


「分かりましたわ」


 だから私は決別したのだ。

 さりげなく周囲に散らばって、聞き耳を立てていた味方達が、証拠の言葉を聞いたのを確認して、一つの関係の終わりをしめくくった。


「では、他人にならせていただきます」






 後日、教会や領主様に確認して、婚約者が偽りを述べていた事が発覚した。


 愛に対して真摯ではなかった事。

 これから家族になるはずだった者達に真摯ではなかった事は重い罪だ。


 司教様達から説教を受けたのち、然るべき罰が言い渡されるだろう。


 それを受けて、私は彼と交わしていた婚約を破棄した。


 その時に彼は「俺と君の仲だろう。あれは他愛のない冗談だったんだ。許してやるのが妻になる者の」などと言って、こちらの家にすがりに来たので「私は自分の発言に責任を持てない人は願い下げです」と言って屋敷から追い出しておいた。


 彼がいくら婚約はしていないと言っても、正式な書類上では婚約は交わされているのだから。


 こちらから婚約を破棄させてもらったのだ。


 今回の件で少なからず私の家もダメージを受けた。


 婚約者の性格を見抜けなかった非は、言い逃れ出来ない。


 けれど、何もせずに関係を終えていたよりは、幾分かましになっただろう。


 私は理性的に彼に対処し、出来る限りの証拠をおさえ、そしてやり返したのだから。



ここまで読んでくださってありがとうございます。


諸々の事情で感想に返信ができません。


すみません。

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