プロローグ 最強はE-Sportsに憧れる
これはゲームであっても遊びではない。
その新たなる形である
『残るはホトケのみィィィ!!』
あれは小学生の時。
友人に誘われて展示会場で行われたゲームの大会を見に行った。
そこでは何百人もの視線がステージの上にある大型モニターと、そのモニターを挟むように5人ずつ並ぶ選手たちがパソコンのディスプレイに向き合っていた。
その頃は名前も知らなかったゲーム。
それでも、真剣にプレイするその選手達には目を奪うような何かがあった。
選手たちがスーパープレイや、得点に変動があるたびに沸き立つ会場の雰囲気に呑まれたのかもしれない。
一つ確かな事を言うのなら、『ゲームは遊び』という認識が変わったのはこの日の事だったのだろう。
『人数有利を生かしてRondaDiosが攻めていくゥ!」
戦いは挑戦者側、RondaDiosのマッチポイント。
人数も3人を残し、体力ゲージも多く残している。
対するはホトケと呼ばれた選手が一人。
こちらも体力ゲージはあるが、その選手が倒されれば負けが確定する。
『歴代最強と言われた王者、ExplosionGaming。その王朝がここで爆発してしまうのかァ!?』
素人目に見ても絶体絶命の状況。
一緒に来た友人の解説によれば、ホトケが使う武器はスナイパーライフルと呼ばれる武器。
これは一撃の威力が高く、敵に弾を当てれば倒せる。
しかし、一発一発の発射間隔が長いので多人数をさばくのには向いてないものだ。
敵の残る構成はスナイパーライフル一人、どの距離でも戦えるアサルトライフルが二人。
戦闘中にスナイパーライフル以外にも、誰もがハンドガンと呼ばれる武器に切り替えられる。
だが、ハンドガンの威力はとても低く弾数もそう多くない。
一人を倒せれば上出来で、とても3人同時に相手することはできないものだった。
観客も誰もが息を飲み、王者が負ける瞬間を見たくないと言うように顔を伏せている。
『スナイパー対決なら負けない、長い通路の1on1をホトケが制する!!』
一人を倒したものの、その倒すまでにかかった時間でに二人アサルトライフル持ちが接近してきていた。
距離が縮まったことにより、武器的にアサルトライフル有利。
更に言えば相手も決勝に上がってきた強者。
武器の弱点もしっかりと把握している。
二人のアサルトライフル使いは同時に姿を現せるように武器を構えていた。
一人を撃てばもう一人がホトケを倒すだろう。
勿論、撃たなかったり外したりすれば二人がかりでホトケを倒すだろう。
当てても終わり、当てなくっても終わり。
油断も隙もない布陣だった。
なのに、ステージ上に座るホトケの顔には笑みが浮かんでいた。
『ホトケがもう一人を抜くゥ!! これで1対1まで戻したが、次を撃つまでの時間を与えてくれるかぁ?』
この時、完全に俺様はホトケに魅入られていた。
気が付けば俺様だけでなく、伏し目がちだった観客の顔も少し上がっていた。
『ホトケがクラッチィィィ!! 最後はハンドガンに持ち替えてのキルだァァァ!!!! ホトケが大爆発ゥゥゥ!! 大逆転で得点をイーブンまで戻すゥゥゥ!!!!』
そして、大逆転。
スナイパーライフルの隙の間に武器を切り替えることによって小さくした。
小さくとも隙はあった。
武器的にも、打ち出す速度的にも不利な戦いだった。
それでも勝った。
『これが、王者! これがホトケ!! これが伝説と呼ばれしスナイパーだァァァァァ!!!!!!』
このホトケの活躍により、同点となりサドンデスに突入した。
そして勢いを付けたホトケを含む王者は連覇を果たす。
俺様はこの時から銃撃戦のゲーム。
いわゆるFPSと呼ばれるジャンルをプレイするようになった。
それも毎日だ。
あの真剣な表情に、あの逆転劇に魅入られたのだ。
毎日プレイしてたら少しづつ上手くなっていった。
中学生の時に性能のいいパソコンとマウスを買ってもらった。そして下の方とは言えランキングなどに載るようになった。
『最強になりたい』そんな願望が出てきた。
高校生の時にアマチュアのゲームコミュニティを作った。
高校生が終わる頃に賞金のかかった大会に参戦した事がきっかけでプロゲーマーとなった。
大学生の時はずっとプロゲーマーとしてFPSを続けていた。
そして大学を卒業するころには、優勝こそ1回も無いものの、最強のプレイヤーは誰かと言う談議にて名前を上げられるまでになった。
そして時代は変わる。
MMORPGなどが多かったVR業界。
だが、とある会社がFPSジャンルの新作を発表した。
【Alles Battle Royale Online】
60人のプレイヤーが無人島に降り立ち、手に持つ銃で最後の一組になるまで戦うゲームだ。
その完成度は高く、多くの人気を得た。
その人気や競技性の高さからE-Sports業界は動き出す。
新たなるE-Sportsの種目として。
そして、俺様自身もパソコンから、VRに競技シーンを移すことになった。
「そうねぇ。貴方がまだ競技シーンに居たいなら最近話題の【アレス・バトルロワイアル・オンライン】なら良いわよ。貴方もやってたでしょ? 但し、スポンサーの都合もあるの。だから、そのチームメイトはFPS未経験のVliverの子を入れてもらうわね」
所属するゲーミングチームのオーナー、その言葉と共に。
Tips
【Tips】
日本語ではヒント。
ゲームではロード画面などでアドバイスがTipsとして表示される場合がある。
この小説ではあとがきとして作中にある用語の解説を行っていく。
小説を読むのに必要な単語は小説内でも説明しているので、あとがきを読まなくても大丈夫である