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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第55話 サレンとの再会

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「んむ? この匂いは……」


 レインとイミテルの二人を探していたサレンの鼻が不意に覚えのある匂いを捉える。


「これ……イミテルさんの匂いです? でも……消えたです?」


 かなり離れた位置にいたため正確な位置までは把握できてはいなかったが、それでも大まかな位置はわかった。匂いを追跡しようと

思ったサレンだったが、その匂いが不意に途絶える。


「ロゼ、聞こえてるです?」

『はいサレン様。どうされましたか』

「イミテルさんの匂いを見つけたです。もしかしたらお兄ちゃんもそこにいるかもしれないです」

『本当ですか? わかりました。私もすぐに後を追いますので』

「わかったです」


 魔導通信機には発信機の役割もある。だから逐一連絡を取らなくてもロゼにはサレンの位置を把握することができるのだ。

 だからサレンは何も気にせずに山の中を駆け抜ける。


「匂いのした方はこっちで間違いないはずです」


 匂いの感じた場所に近づくにつれて、サレンの鋭敏な感覚が妙な力を感じ取る。


「結界です? なるほど。だから急にイミテルさんの匂いも消えたですね」


 目に見えるものではないが、確かに結界の存在を感じ取ったサレンは近くにあった石を拾い上げ、魔力を込めて投げる。弾丸のような速さで飛んでいった石は夜の闇の中へと消えていく。


「……弾く系の結界ではないですね。でもサレンの魔力を感じ取れなくなったです。隠す系の結界ですか」


 結界に対する知識はそれほど多くないサレンだったが、ロゼに教えられて結界を見つけた時の対処法は覚えている。強力な結界ともなれば触れるだけで消し炭になってしまうようなものもあるのだ。

 触れても問題ないと判断したサレンは遠慮なしに結界の中へと踏み込む。そしてそれと同時に僅かな倦怠感を覚えた。


「なるほど弱体化も施されてるですか。まぁでもこれくらいなら動くには全然支障はないのです」


 そして、結界内に踏み込んだことで先ほどサレンが投げた石の魔力を再び感じ取れるようになった。それだけではない。それまで感じ取れなかった様々な匂いがサレンの鼻を衝く。


「嗅ぎ慣れないのが二つ。イミテルさんの匂い……それにお兄ちゃんの匂いもあるです」


 ようやくレインの匂いを見つけたことでサレンはホッと胸を撫でおろす。しかし今度の問題はイミテルの方だ。イミテルはレインではなく、嗅ぎ慣れていない二つの臭いと共にあった。


「おそらく魔人の臭いです。あぁ、なんだかすごく面倒なことになってる気がするのです。でもでも、ここでへこたれるわけにはいかないのです。そんなことしたらユースティアさんに怒られちゃうのです」


 まずはレインだと決めて動き出したサレンは、不意に背後から感じた殺気に反射的に攻撃を繰り出す。しかしその体躯はサレンが想像していた以上に矮小で、避けられてしまった。

 木に張り付いたのは猫型の小さな魔獣だった。漆黒の体躯に二又の尻尾。その尻尾の先は槍のように鋭利で、それが攻撃手段であることは明白だった。


「結界に触れた以上サレンの存在には気付いてるはずですし、もう遠慮はしないです。かかって来るといいですよ」

「フシャァアアアアアアッッ!」

「可愛い姿してても無駄なのです!」


 威嚇の声を上げてサレンに突っ込んで来る魔獣。直進してくるかと思った魔獣だったが、その姿が不意に影の中に沈みこむ。そしてその姿は今度はサレンの背後の木の影から現れる。

 木から木へ、影から影へと移動してサレンのことを翻弄しようとする。


「この魔獣……さっきまでの魔獣とは少し違うのです」


 通常の魔獣は突っ込んでくるしか能がない。しかし今サレンが相対してる魔獣は明らかに知能があった。サレンのことを翻弄し、隙を作ろうとしている。


「考えてくる魔獣なんて……面倒極まりないのです。それにやっぱり結界の影響で反応が鈍ってるですし」

「シャッ!」


 サレンが考え事してるのを隙と捉えたのか、魔獣が木を蹴ってサレンに襲い掛かる。首を狙って突き出された尻尾を避けるサレンだが、やはり反応は僅かに鈍っているのかかすり傷程度の怪我を負わされてしまう。


「む……」


 毒が仕込まれていたわけでもなく、動きに支障が出るわけでもない。傷とも呼べないような傷だ。しかしそれでも魔獣に一瞬の遅れを取ってしまったのは事実だ。

 木の枝に着地した魔獣は、尻尾についたサレンの血をペロリと舐めとる。明らかにサレンのことを挑発していた。

 それを見たサレンは額に青筋を浮かべる。


「こっちが油断してるのをいいことに。ちょっと生意気が過ぎるですよ」


 再び木から木へ、影から影へと移動を始める魔獣。サレンの視界をかく乱しようとする魔獣だが、サレンはもうその姿を目で追ってはいなかった。

 先ほどと同じように背後を取った魔獣は同じ要領で尻尾を突き出し、そしてその尻尾をサレンに捕まれた。


「フシャッ?!」

「ふふん、考えるといっても所詮は畜生なのです。同じところを狙って来るなら対処は容易いのです」


 必死に暴れる魔獣だが、力はそれほど強いわけではない。サレンの力の前には無力だった。


「サレンを怒らせたことを後悔しながら死ね、なのです」


 サレンは魔獣の尻尾を掴んだまま、遠慮なしに地面に叩きつける。するとどうだろうか。魔獣の叩きつけられた地面が陥没し、放射状に罅が入る。それほどの威力で叩きつけられて耐えきれるはずもなかった。


「喧嘩を売る相手はよく見やがれです」


 魔獣を仕留めたサレンは今度こそレインの元へと急ぐ。そして木々をかき分けて進んだ先にレインの姿はあった。しかしレインはぐったりとした様子で倒れていて、サレンに気付く様子もない。


「っ、お兄ちゃん!」


 慌てて駆け寄るサレン。レインの様子は明らかにおかしかった。レインが繋がれていた鎖を砕き、その体を起こすサレン。荒い息を吐くレインのその様子にサレンは覚えがあった。


「咎人堕ち? なんで、どうしてお兄ちゃんが……」


 レインが咎人堕ちしそうになっているという状況にサレンが戸惑っていると、レインがゆっくりとその目を開く。


「サレン……様……」

「あ、お兄ちゃん気が付いたですか?! 大丈夫なのです?」


 明らかに大丈夫ではないのだが、そんなことに気づく余裕もないほどにサレンは戸惑っていたのだ。


「俺は……大丈夫です。それよりも……イミテルは……」

「イミテルさんです? この先にいると思うですけど……ってお兄ちゃん、無理しちゃダメです!」


 立ち上がろうとしたレインを無理やり座らせるサレン。レインは荒い息を吐き、それでも立ち上がろうとする姿を見てさすがのサレンもただ事ではないと察する。


「どうしたですお兄ちゃん。何があったですか」

「イミテルが……魔人と一緒に……」

「それはわかってるです。だから今から取り返しに」

「違うんです。それだけじゃなくて……イミテルは……自分の意思で、魔人と一緒に……」

「自分の意思で? どういうことです?」

「それは——」

「サレン様。リオルデルさんを見つけたんですね」


 レインが話そうとしたタイミングでロゼが到着する。そしてレインの様子を見て険しい表情をした。


「これは……非常にまずいですね。なぜリオルデルさんが咎人堕ちしそうになっているのですか」

「たぶん……イミテルの力……です」

「イミテルさんの? 詳しく……聞きたいところですが、そんな余裕はなさそうですね。サレン様、すぐに処置を」

「わ、わかってるです。——『あなたの罪は私のモノ、私の罪は私のモノ』」


 【魂源魔法】——『罪喰らい』。それを使ってレインの中の罪を浄化しようとしたサレンだったが、レインに腕を近づけた瞬間何かに阻まれるように腕を弾かれてしまう。


「ひゃうっ!」

「弾かれた? どうして……」


 サレン達は知らぬことだが、それはユースティアがレインに施した封印の影響だった。ユースティアの力でなければ、レインの罪を抑えることはできないのだ。


「うぅ、どうなってるですか!」

「サレン様の力が弾かれた……考えている暇はありません。このままではリオルデルさんが咎人に」

「俺は……大丈夫です」

「大丈夫って、明らかに大丈夫ではないでしょう」

「本当に大丈夫ですから。少し……落ち着いてきました」


 その言葉通り、荒かったレインの呼吸は少し落ち着き始めていた。レインの中で荒れ狂っていた罪も若干ではあるが沈静化している。


「いったいどういう……リオルデルさん、あなたは」

「その話は後にしましょう……それより今はイミテルを追わないと」

「……そうですね。動けると言うのであれば……ついて来るな、と言っても聞きそうにはありませんし。であれば我々と共にいる方が安全でしょう」

「ありがとうございます……」

「うぅ、なんだか納得いかないですけど。それじゃあ先を急ぐのです」


 そしてレイン達はイミテルを追って移動を再開するのだった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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