第48話 行方不明
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
レインが村長宅へ向かってからしばらく、サレン達はいつまで経ってもレインが戻って来ないことに不審感を抱き始めていた。
「お兄ちゃん……いくらなんでも遅すぎないです?」
「えぇ。イミテルさんのことを伝えに行くだけならばもう戻ってきておかしくないはずです」
「…………」
宿の入り口付近でレインのことを待ち続けるイミテルは、レインが出て行った時からずっと感じていた胸騒ぎが抑えきれなくなっていた。
「あ、あの……私、ちょっと見てきます!」
「あ、待ってくださいイミテルさん、一人で行動するのは——」
ロゼが呼び止めるのも聞かず、イミテルは宿を飛び出して行ってしまう。予想外の足の速さで駆けるイミテルのことをサレン達は慌てて追いかける。
普通の足の速さではない。イミテルは無意識に魔力で身体強化していたのだ。無意識下のこととはいえ、その身体強化のレベルは目を見張るものがあった。
「いいからちょっと待つですよ!」
なんとかサレンが追い付きイミテルのことを捕まえるが、それでもイミテルが落ち着くことはなかった。どこか焦燥に駆られた表情でサレンのことを振り払おうとしていた。
「落ち着いてくださいイミテルさん。急にどうしたんですか」
「嫌な予感がするんです。レインさんの身に何かが起きてしまったような。そんな気が」
「急にそんなこと言われても……サレン様は何か感じますか?」
「うーん、なんとなくわかるです。はっきりとはしてないですけど、ずっと胸がモヤモヤしてるです」
「そうですか……わかりました。ここまで来てしまったならこのまま村長宅にまで向かいましょう。そうすれば何かわかるはずです」
イミテルだけでなくサレンまで嫌な予感を感じているというならば、何かあったと仮定して動く方が良いとロゼは判断した。
「ですからイミテルさんも落ち着いてください。一人で慌てて行動しても解決するようなことではありません。むしろレインさんに何かあったとしたならば、なおのこと一人で動くべきではない」
「そうです。サレン達がいるから大丈夫なのです」
「……そうですよね。すみません。少し取り乱してしまいました」
「少しって感じじゃなかったですけど。まぁいいです。それじゃあ村長さんのお家に行くです」
そしてサレン達はウダンの家へと向かう。そこで判明したのは、予想していたなかでも最悪の部類のことだった。
「リオルデルさんはこちらへはやって来ていない、ということですね」
「えぇ。私どもはずっとこの家に居ましたが……誰も来ていません」
「ロゼ、これは……」
「えぇ、少しまずいかもしれません」
サレンとロゼの真剣な表情になり、イミテルはその顔色を青くした。
「あ、あの……大丈夫なんですか?」
「あなた達が気にすることはありません。こちらで解決しますから。ですが一つお願いがあります」
「お願いですか?」
「はい。この村の近辺に魔人がいる可能性が……いえ、ここまで来たら断定するべきですね。魔人がいます」
「魔人が!? そんな、すぐに村民を避難させないと」
「落ち着いてください」
「落ち着けと言われてもっ!」
「いいから、落ち着いてください」
「っ」
ロゼの気迫に押されてウダンは黙り込む。しかしウダンが焦るのも無理は無いのだ。魔人が近くにいると聞かされて平気な人などいない。獰猛な獣の檻に入れられるようなものだ。否、それ以上の恐怖かもしれない。魔人とは人を害する存在なのだから。
「もし魔人が暴れる気であるならば、すでにこの村に襲撃を仕掛けているはずです。そうでないということは何か目的があるということ。事を荒立てたくない理由があるということです。悠長にはしていられませんが、まだ騒ぎ立てる時でもない。むしろ騒ぎたてることで闇雲に動かれる方が厄介です」
「でも、それでは我々はどうすれば」
「この村に常駐してる贖罪教の者にはすでに連絡を済ませてあります。何かあればそちらから連絡が入るでしょう。我々は今から魔人を探して動き始めます。ですのであなた方は、何かあった時すぐに動けるよう準備だけ進めておいてください。それと、事が片付くまで山へ入るのは禁止にしてください。いいですね」
「は、はい。わかりました」
「そう心配しないでください。大丈夫ですよ。ここにはサレン様が……聖女がいるのですから」
「そうです! 全部私に任せるですよ! 大船に乗ったつもりでいると良いのです!」
えへん、とサレンは胸を張る。ユースティアがいればもっと説得力があったのだろうが、そこはいまだに実績の少ないサレンだ。ウダンもマヅマを完全に安心させることはできなかった。
(こればかりは今後次第ですね。言い方は悪いですが、この一件を速やかに解決できればサレン様の評価はまた一つ上がるでしょう。サレン様の実力を示す良い機会です。リオルデルさんの行方も早く探さなければ。ユースティア様が戻って来られるのが明日である以上、動けるのは私とサレン様だけ。事は一刻を争います。動き始めるとしましょう)
そうしてロゼは頭の中で今後の行動についての計画を素早く立てる。
「では、私達はこれで。不安になる気持ちはわかりますがどうか取り乱さないように」
「サレンにドーンと任せるのです!」
そう言ってサレン達はウダンの家を後にする。そしてショックで呆然としているイミテルを連れて宿へと戻った。
「お姉さん大丈夫です?」
「……すみません」
レインのことを聞いて以降、明らかに意気消沈しているイミテルのことを気遣うサレン。しかしイミテルは顔色が悪いままだ。
「うーん……ロゼ、どうするです?」
「とりあえずもう一度ユースティア様に連絡してみましょう」
「あ、そうですね」
魔導通信機を取り出し、再びユースティアに連絡を取ろうとするサレン。しかし予想通りと言うべきか、通信が繋がることはない。
「あぅ、やっぱりダメです」
「やはりそうですか。ユースティア様の方でも何かあったのでしょう。であれば、やはり我々だけで対応するに他ありません」
「そうですね。でもどうするです? お兄ちゃんを探そうにも手掛かりが何もないですよ?」
「本来ならばサレン様に思考を促すところですが……今はそれどころでもありません。目撃者がいるかどうかを探す必要はありますが……今から悠長にそれをしている時間もありません。そちらは他の人に任せるとします」
「はいです」
「であれば、我々のするべきことはただ一つ。魔人がいるであろう山の捜索です。見つかればリオルデルさんの身が危ないので、隠密行動になりますが」
「隠密行動……サレン苦手なのです」
「苦手だからできなくてもいいというわけではありません。事態は急を要します。できるできないではなく、やるんです」
「あぅ……わかったです」
「あ、あの、私も一緒に——」
「不許可です」
「でも!」
「はっきり申し上げましょう。あなたにできることは何もありません。魔人の目的があなたであると予測できる以上、あなたが動き回るのは愚策。そしてあなた自身に身を守れる実力があるかと言われればないと断言できます。つまり、端的に言えば邪魔です」
「っ……」
「あのロゼ? さすがに言い過ぎじゃ……」
「私は事実を告げただけです。この現状においては下手に動かれる方が迷惑ということもあるのですよ。重ねて言います。あなたは動かないでください。後で護衛を連れてきますので、この宿で大人しくしておいてください」
「……わかりました」
ロゼの冷たい瞳にイミテルはがっくりと項垂れる。
「……行きましょうサレン様。行動は迅速に。これが鉄則です」
「あ、はいです」
項垂れたままのイミテルのことを気にしつつ、サレン達はレインを探すために宿を出発するのだった。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!
Twitterのフォローなんかもしてくれると嬉しいです。
それではまた次回もよろしくお願いします!




