第46話 緊急連絡
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シオンとの戦いの最中、突如魔導通信機の音が鳴り響く。それは緊急事態が起こったことを示す音でもある。ユースティアはシオンからの攻撃を避けつつ通信に出る。
「はい、ユースティアです。どうかしましたか」
『あ、ユースティアさん。えっとですね——』
サレンの切羽詰まった声が通信機を通して聞こえてくる。その様子からも何か大事が起こったことがわかる。すると、声の主がサレンからロゼへと代わり、状況を伝えてくる。
『緊急事態ですユースティア様。魔獣が現れました。魔人もともにいる可能性が非常に高いと私達は睨んでいます』
「え、魔人が? ……そちらの状況は?」
予想外の報告、というわけではなかった。確証はなかったものの、イミテルのことを疑うと決めた時に可能性の一つとして考慮していたことだ。だからこそ急いで帝都に戻ったのだ。
『特に大きな問題は起きていません。イミテルさんもこちらで一応保護しています』
「そうですね。それがいいでしょう。そのまま一緒にいてください。確認しますが、魔人の姿を直接見たわけではないのですね」
イミテルを保護していると聞いてユースティアとしては一安心だ。サレンもロゼもいれば魔人もそう簡単には手出しはできないはずだとユースティアは考えている。問題があるとすれば今のユースティアの状況だけだ。
『はいです。見てはないですけど、あの魔獣は確実に誰かに飼われているものだったと思うです』
「なるほど……魔人も確実にあなた達が存在に気付いたことを理解しているでしょう。無茶な行動にうって出る可能性もあります。警戒は怠らないように」
『それはもちろんですが……ユースティア様はいつ頃お戻りになられますか』
「それが……少し問題が起きまして。今日中にそちらに戻るのは無理そうです」
シオンの攻撃を避けながらユースティアは考える。シオンに勝つ方法ではなく、この場を切り抜ける方法を。
すでにかなりの長時間シオンと戦闘している。そして後どれだけの時間がかかるかわからなかった。
『そうですか……』
「明日には必ず戻ります。それまでは不要な行動をしないように。もし私の予想が正しければ、魔人の狙いは確実のイミテルさんです」
『やはりそうですか。でもどうして』
「それは……」
「どこを見てるのさっ!」
ユースティアの意識が自分から逸れていると感じたシオンは嫉妬の感情を隠そうともせずユースティアに斬りかかる。
「っぅ!」
『ユースティア様?』
怒りの感情を乗せたシオンの猛攻にユースティアは一度意識をシオンに向けざるを得なくなる。
「はぁ……本当に我儘な人ですね」
あえてユースティアは自分自身ではなく、聖女ユースティアとしてシオンと接する。そうすることが一番シオンの神経を逆なでするということがわかっていたから。
「っ……ボクのことを見ろ!!」
「残念だけど、それどころじゃなくなったので」
シオンの攻撃を躱したユースティアはシオンから距離を取るように動きつつ、サレン達へと話を続ける。
「くっ。いいですか。私の予想が正しければ彼女は罪を……」
しかしその途中で雑音が入り、ユースティアは途中で言葉を止める。シオンの方に目をやれば、巨大な魔力波を飛ばしてユースティアの通信の妨害をしていた。
「サレン、ロゼ、聞こえてますか」
『すみませんユースティア様、雑音が酷くて聞き取れません』
「サレン、ロゼ!」
「無駄だよっ!」
耳につけていた魔導通信機をシオンが切り飛ばす。それにより完全にサレン達との通信は切れてしまう。
「やってくれましたね」
「君が悪いよ。ボクのことを見てくれないから」
「すみませんが、あなたの相手をしている余裕は無くなりました」
「へぇ、だからってはいそうですかって帰すと思う? 悪いけどまだまだボクに付き合ってもらうからね」
「はぁ、そういう所が気持ち悪いんですよ。あなたは」
ため息を吐いたユースティアは一段解除していた【失楽聖女】と【聖天明星】に制限をかける。剣、銃、そして服が元に戻る。黒く染まりかけていた羽も白へと戻った。
「どういうつもりだい」
「どういうつもりも何も。こっちの方が戦いやすいと判断したまでです。制限解除した状態は少々燃費も悪いので。口で言ってもあなたが納得しないことはわかってますから」
「そうだね。納得なんてしない。せっかくこうして君と戦う機会を得たんだ。絶対に逃すものか」
獲物を狙う野生動物のようにシオンの目がギラリと光る。逃げに徹するということも考えたユースティアだったが、シオンの様子を見てそれは難しいと諦める。何より、ユースティアの意地がそれを許さなかった。
「この手はできれば使いたくなかったんですけどね」
「へぇ、次はどんな手を見せて見せてくれるのかな——ふっ」
一気にユースティアとの距離を詰めるシオン。ユースティアはその攻撃先を予測して空を滑るようにして避ける。そしてシオンから距離を取り山の中を縦横無尽に飛び回る。
「そうやって逃げるのが新しい手かい?」
シオンの言葉にユースティアは何も答えず、目的のものを探して飛び回る。
(シオンの意識はこっちに向いてる。その間に全部回収する)
残っていた木を巧妙に利用し、シオンはユースティアを追撃する。足場が無ければ魔力を使って足場を作り、決して逃すものかと食らいつく。その執念深さにはユースティアも舌を巻くしかない。
シオンの追撃を躱し、もしくは迎撃しユースティアは時間を稼ぎつつユースティアは山の中を飛び回り、目標の回収を急ぐ。
そしてユースティアとシオンは気付けば一番最初に戦っていた『降魔救罪』の本部の場所へと戻って来ていた。
「ここでラスト」
「もう追いかけっこは終わりかな?」
「えぇ、終わりです。そして同様に、あなたとの戦いも」
「?」
「『影落とし』」
ユースティアが手を向けた先にいたのは、捕らえていた『降魔救罪』のリーダーと思しき人物。足元の影が伸び、ずぶりと影の中に沈みこんでいく。男は必死に暴れるがそれでどうにかなるものでもない。完全に影の中へと沈んだのを確認したユースティアは、そのまま高く空へと飛び上がる。眼下にある全てを見下すように。
「私が最強と呼ばれる所以を、あなたに教えてあげましょう」
ただならぬ雰囲気を感じ取ったシオンは空を見上げて愕然とその目を見開く。
「これは……」
そこにあったのは太陽だった。正確には、太陽のように煌々と輝く炎の塊。そこから感じられるのは息が詰まるほどの魔力量。何十人、何百人分にも匹敵する魔力量だ。
「生きてる人は全て回収しました。つまり、これでようやく私は何にも気がねすることなく攻撃ができる」
「はは……これが、これが君の本気」
離れていても感じる熱量に、シオンは初めて冷や汗を流す。ユースティアは山の中を走り回り、人を回収する最中にもこの魔法をずっと練り上げていたのだ。
「【太陽魔法】——『赫灼焔球』」
巨大な焔球がシオンに襲いかかる。圧倒的な破壊の塊だ。シオンがどれだけ速かろうと逃げ場などない。しかしそれでもシオンは笑みを浮かべた。
「最高だ。最高だよティア!」
「何度でも言いますが、あなたにティアと呼ばれる筋合いはありませんよ」
「『帝剣技——魔斬翔』!」
真っ向から挑むシオン。しかし、あっという間にシオンは焔球の中へと飲み込まれてしまう。
「塵一つ残さず消えなさい」
そして次の瞬間、世界は白く爆発した。その爆発は木も、建物も、何もかも。全てを呑み込んで破壊の限りを尽くす。そしてハルバルト帝国の地図上から廃鉱山が一つ完全に消え去った。
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