第39話 本拠地へ
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「それで、全員殺しちゃったの?」
「まさか。殺すはずないじゃないですか」
魔人崇拝組織である『降魔救罪』のメンバーであるジーナス達を退けたユースティアは起きて来たルーナルにその事を伝えた。
「それじゃあどこにいるんだい?」
「ここです。ここ」
ユースティアは自身の影を指さして言う。
「……影の中?」
「えぇ。前に調べてもらった腕輪があったでしょう? その腕輪の能力を少し再現してみようかと思いまして」
「えーと……あの腕輪、相当な生贄とかの代償に発動させるものだったはずなんだけど」
「えぇ。ですから魔力で無理やり代用しました。さすがに大きなものを作ることはできませんでしたけど、小部屋ぐらいは作れます。今はそこで全員眠ってもらってます」
「なんていうか本当に……聖女というか、君は規格外だね。呆れるよ」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「まぁいいさ。だからこそやりがいがある。面白いというものさ」
ルーナルはいつか発明でユースティアを超えるという目標を持っている。だからこそユースティアの超人的な能力を見るたびに開発者としてのやる気を掻き立てられるのだ。
「どうぞ頑張ってください。超えられる気は一切ありませんけど」
「その余裕……いつか必ず崩してみせるよ。まぁ、今はそれはどうでもよくて。とにかく助かったよ。これでこれから安心して眠れるというものさ」
「このぐらいで揺らぐような人じゃないでしょうに」
「そんなことはないさ。私だって人なんだから怖いものは怖いさ」
「そういうことにしておきます」
「本音だというのに。それじゃあ速くロドルに戻るといい。やることがあるんだろう」
「はい……と、言いたいところですが、まだ少しやることが残ってます」
「やること? 襲撃者は片付けたんだろう?」
「はい。でもそれはルーナルの所に来た襲撃者を片付けただけです。根本的な解決にはなっていません」
「つまり?」
「組織自体を叩き潰します」
「わお、思い切ったね」
「知ってしまった以上、無視はできませんから。それに魔人崇拝の組織が目障りなのは事実ですし。幸いにして話し合いで組織の本拠地の場所は教えてくれましたから。今から落としに行こうと思います」
「さすがだねぇ。行動が早い。でもその情報に信憑性はあるのかい? 嘘の可能性は?」
「大丈夫ですよ。私に嘘はつけませんから。今まで襲撃してきたのは全て同じ組織で間違いないですね」
「あぁ。間違いないよ。同じ手紙に、同じ模様が描かれているからね」
「では間違いないでしょう。もう二度と活動なんてできないように……終わらせてあげましょう」
「あぁ、彼らも不運だね」
「不運? 幸運の間違いでしょう。これ以上間違いを犯すことがなくなるんですから。では行ってきますね。夕食と朝食、ごちそうさまでした。美味しかったです」
「こちらこそ。君のおかげで助かったよ。それだけは本当だ。感謝している」
ルーナルからの感謝の言葉を背に、ユースティアはルーナル邸から飛び立つ。向かうのはジーナス達『降魔救罪』の本拠地だ。しかしそこはロドルとは逆の方向にある。距離もかなりある。急がなければ今日中にロドルに戻ることも難しいだろう。
「面倒だが邪魔な存在であることに変わりはないしな。さっさと潰しておくに限る。こいつがまともに動くかどうかの検証もしておきたいし」
ルーナルから受け取ったモノクルを手の中で弄びつつ。ユースティアは『降魔救罪』の本拠地を目指した。
『降魔救罪』の本拠地は廃鉱山の中にあった。はるか昔に鉱石の堀尽くされた場所だ。今では誰も踏み入ることはなく、周辺に街も村もない。組織の隠れ家にするにはぴったりの場所だろう。
「言ってた場所はここだな。さっさと終わらせよう」
数時間かけて廃鉱山の前に着地したユースティアは手早く周囲の気配を探る。誰もいないことを確認したユースティアは廃鉱山の中へと足を踏み入れる。
「さて、この中のどこにいるかが問題だけど……殺していいなら山ごと吹き飛ばすだけだけど、流石にそこまで手荒な手段を取るわけにもいかないか。たとえ相手が狂人集団だとしてもな。まったく面倒だ」
何も考えなくていいなら廃鉱山ごと消し飛ばすのが一番簡単で確実性も高い。しかしそれをすれば必ず殺すことになる。ユースティアとしてはそれは避けたかった。
理由はいくつかあるが、最も大きい理由は他の魔人崇拝の組織をあぶり出すためだ。魔人崇拝の組織は『降魔救罪』だけではない。その組織としての横の繋がりをユースティアは調べたかったのだ。
「面倒で仕方ない。でも、いつまでもこの国にのさばられるほうがもっと面倒だ。さっさと終わらせてさっさとロドルに戻る。それだけだ」
しかし、廃鉱山の中を進んでも人の気配を感じることはなく、それらしい建物を見つけることもできなかった。
「もっと奥にいる? 偽の情報だったってことは考えにくいし……もう一回あいつたたき起こして話を——いや違うな。この感覚……【幻覚魔法】か」
【幻覚魔法】はその名の通り、幻を見せる魔法だ。建物を隠したり、自分の姿を隠したりするのに用いられる。【幻覚魔法】は効果が大きいだけに非情に高度な技術と才能を要求される。だが身に着けてしまえばこれほど便利な魔法もない。
「こざかしい隠し方をしてるな……でも、気付けばそれまでだ」
ユースティアがパンッと手を打つとまるで霧が晴れていくように廃鉱山全体を包んでいた幻術が消えていく。
それと同時に、それまで隠されていた建物や人の気配をユースティアは捉える。
「なるほど。思ったよりも多いか。向こうもこっちに気づいただろうし。正面から殴りこませてもらおうか」
ユースティアは【罪姫】を取り出し遠慮することなく進む。それから少し進むと慌てふためく『降魔救罪』の構成員を発見することができた。
「みーつけた」
しかしすぐには攻撃を仕掛けず、ユースティアは【悪魔の瞳】を確認する。その瞳は依然として閉じられたままで、咎人の存在は感じられなかった。
「ま、これは予想通りだな。本題はこっちだ」
ルーナルから貰った【悪魔の心眼】を身に着けるユースティア。そしてスイッチを押すと、視界が一変する。
その目に映るのは罪そのものだ。人の中にある罪を多い少ない関係なく、全てを見ることができた。
「なるほど。これがイミテルの見ていた世界か」
黒く染まりかけている人間。ほとんど染まっていない人間。その全てが見える。
「便利だけど。気持ちのいいものじゃない」
ユースティアも触れれば罪を持っているかどうかはわかる。逆に言ってしまえばユースティアですら触れなければわからないものを見ることができるイミテルの瞳はまさしく特異なものだろう。
「とりあえず見えることはわかった。これで調べたいことは調べれる。後は潰すだけ」
ユースティアの存在に気付いた構成員が襲いかかって来る。襲いかかって来た端から昏倒させていくユースティアは、それと同時にその人の中にある罪を抜き取った。それは優しさではない。魔人化することが目的の魔人崇拝者達にとって、貯めた罪を抜き取られるというのは何よりも辛い罰なのだ。
ルーナル邸を襲撃してきたジーナス達もすでにユースティアの手で罪を浄化されている。
「まさしく入れ食いってね。あんまり美味しくないけど」
そして建物へとたどり着いたユースティアは、そこで奇妙なことに気づく。それは建物周辺が静か過ぎることだ。
「逃げた? いやでもそんな気配は感じなかった。また【幻覚魔法】で隠されてる様子でもない」
怪訝に思いつつもユースティアは建物の扉を開け放つ。
「っ! これは……」
そこに転がっていたのは『降魔救罪』の構成員達の死体だった。
「全員一撃? しかもこの切り口……かなりの手練れ。一体誰が——っ!」
ユースティアが死体のことを観察していると、建物の奥から悲鳴が聞こえてくる。それに気づいたユースティアは走って声のした方へと向かう。
蹴破るようにして扉を開け放つと、そこにいたのはユースティアと同じくらいの年齢の少年だった。その足元には倒れている男と、初老の男性。
「お、おいお前! 私を助け——き、貴様はっ!?」
部屋に入って来た存在に気づいた男は慌てて助けを求めるが、それがユースティアだと気付くと愕然とした表情へと変化する。
「あーもう、ピィピィうるせぇんだよ。さっさと死んでろ」
「ひ、た、助け——」
少年は持っていた剣を振りあげ、躊躇なく振り下ろす。それで終わるはずだった男の命。しかし、そうはならなかった。
他でもない、ユースティアの手によって防がれたから。
「おいてめぇ、何邪魔してやがんだ」
「今すぐにこの人を殺されるのは困るんですよ」
「お前俺が誰だかわかってんのか?」
「さぁ? あいにくと存じ上げませんが」
「ちっ。いいぜ。だったら教えてやる」
少年は一瞬苛立った表情をしながらもユースティアに向けて名乗りをあげる。
「断罪教の聖騎士、第十二席《瞬撃》のレオンだ」
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