第27話 魔導通信機
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
『クハハハハハッ! それでレインと喧嘩して逃げ出したのかい?』
「……別に逃げ出したわけじゃありません」
部屋に戻ったユースティアはルーナルへ魔導通信機を使って連絡していた。最初はイミテルのことについて意見を求めるつもりだったのだが、その過程でポロっとレインのことを漏らしてしまいルーナルに追及されていた。
『いいや違うね。君は逃げたんだ。レインと向き合うことからね。いやはや、世界最強の聖女様も男のこととなるとまるで子供のようじゃないか』
「……怒りますよ」
『怒ればいいさ。君がその場で怒ろうと、離れた地にいる私までその怒りが届くことはない。それに怒るということは図星ってことじゃあないか』
「くっ……」
『まぁ君の言うことも間違ってはいないさ。聖女は多くの力を持っているが、万能ではない。できることには限りがある。そうでなければ私のような存在は不要になってしまうしね。だが、そうであったとしても言葉を尽くすことはできたはずだ。違うかい?』
「…………」
『君に何ができて、何ができないのか。なぜできないのか。それをちゃんと伝えていればまた話は変わっただろうに。聞いてるかい?』
「聞いてます。あなたから説教されているという事実に屈辱を感じています」
『アハハハッ! なら私からこういうことを言われるほど軽率な行動をしたことを悔やむんだね。いい教訓になったじゃないか。ついでになぜ君がそんなことをしたのかについて教えてあげようじゃないか』
「なぜって……私はただ事実をレインに伝えただけです。言い方は少し良くなかったかもしれませんが」
『いいや違うね。単純なことだよ。君は嫉妬したんだよ。そのイミテルという少女にね』
「……はい?」
『レインが自分のこと以外を気にかけているのが気に食わなかったんだろう。自分のモノなのにという子供じみた独占欲さ。可愛いねキミも』
「私は嫉妬なんてしてません!」
『君が否定したところでそれが真実さ。レインが関わらなければ君は冷静でいられるのにね。レインが関わった途端に君は判断力を失う。よくない所だ』
「そんなこと……私はいつだって冷静です」
『冷静というのは私のような人のことを言うのさ。君はまだ感情に振り回される小娘さ』
「年齢が二つしか違わないあなたに小娘なんて言われたくないですけど」
『二つも、違うのさ。十代における二歳差の大きさを知るといいよ。それがわからないうちはまだまだ子供だね』
「くっ……」
『君が言葉を尽くさなかったのはイミテルに嫉妬をしていたから。あなたは私のモノのはずなのに、どうして私じゃなく他の女のことを意識しているのってね。それが気に食わなかったから君はレインにきつく当たった。そしてこうして今後悔してるわけさ。私に思わず愚痴を言ってしまうほどにね。いやぁ初々しいじゃないか。恋する乙女だねぇ』
「こっ!? ち、違います! 私は別にレインに恋してなんて」
『へぇ、じゃあ嫌いなのかい?』
「嫌い……ではないですけど」
『なら好きなんじゃないか』
「どうして選択肢が二つしかないんですか! その理論で行くとあなただってレインのこと好きなんじゃないんですか」
『ふむ……確かに。好きだね。私はレインのことを愛しているとも』
「はいぃ!? そ、そんな……そんなのダメです!」
『くくく……冗談だよ。さすがにそこまでの好意は持っていないさ。別に嫌いではないけどね。でも君は別にレインのことが好きなわけじゃないんだろう? だったら私がレインのことを好きでも、誰がレインのことを好きでも……そして、レインが誰のことを意識しようとね。人の心を縛りたいというのは横暴さ』
「…………」
『ま、こんな言葉で納得できるほど君が素直な性格じゃないのは知ってるさ。私から言えるのはさっさと仲直りしておくように、ということくらいさ。素直に謝ってね』
「……それができれば苦労しません」
『ふふ、だろうね。君はそういう性格だ』
「……私のことは今はいいんです。あなたに連絡したのはこの話をするためではないんですから」
『おっと、そうだった。君の魔力を無駄にしないためにも本題に入ろう』
魔導通信機は遠方にいる相手とも話すことができる優れもの。ルーナルの発明品の中でもトップクラスの代物だ。しかし世に出回らないのには理由がある。その理由の一つは値段。稀少な鉱石を使っているということもあって、目が飛び出るほどに値段が高い。そしてもう一つ、最たる理由となっているのが魔力効率の悪さだ。異常なほど魔力を使うのだ。そのせいでユースティアのような余りある魔力を保有する人にしか使えないのだ。そして、ユースティアの魔力も膨大であれど無限ではない。余計な話をしている余裕は無かった。
『それで、そのイミテルという少女の力について私の意見を聞きたいんだったね』
「はい」
『そうは言ってもねぇ。聞いたのは君の話だけだし、直接見てデータを取らないことにはなんとも言えないよ』
「逆に言えば、直接見てデータを取れればわかると?」
『おいおい、私を無理やりそっちに連れていこうだなんて考えないでくれたまえよ。私はこの家から出るつもりは毛頭無いからね』
「引きこもりですね」
『なんとでも言うがいいさ。私は外が嫌いなんだ。ここから出るくらいなら死んでやる』
「はぁ……わかりました。では質問にだけ答えてください」
『いいだろう』
「イミテルさんの力は作られたものであると思いますか?」
『作られたもの? その聖女もどきの力がかい? そうだねぇ……なんとも言えないけれど』
「では質問を変えます。作ることは可能ですか?」
『私が聖女に似た力を作れるかどうか。その答えは簡単だね。不可能だ』
「無理……ですか」
『私には、という話だけどね』
「どういうことですか?」
『件の人物……この腕輪を作った人物なら可能かもしれない。悔しいことに人体を使った開発にかけては向こうの方が数段上だろうしねぇ』
「珍しいですね。あなたがそういうことを言うなんて」
『私だって事実は事実として受け入れるさ。聖女の力は特殊なものではあるけれど、結局は人の力だ。炎の魔法の適性を持つ人、雷の魔法の適性を持つ人、それと同じようなものさ。ただたまたま君達に【魂源魔法】という魔法の適性があった。それだけの話。なら疑似的にならば作り出せるかもしれない。炎や雷の魔法が道具で再現できるように。人体を道具に【魂源魔法】を再現する。そんなことを考えてもおかしくないさ』
「……人を使って私達の力を再現したと」
『あぁ。だが一つ君の話を聞いていて思ったことがある。その少女の力は本当に君達の力を再現したものなのかな?』
「違うんですか?」
『いや、あくまで可能性の話だよ。相手の思考をトレースしてみたのさ。そのイミテルという少女が、この腕輪を作った人物に作られたと仮定して話すよ』
そう言うとルーナルはごほん、と一度咳払いして話し始める。
『あぁ聖女という存在は本当に目障りだ。人類の希望だかなんだか知らないが、あんな存在がいるからいつまで経っても魔人にとっての理想郷は完成しない。人間のような下等生物が図に乗るんだ。だが聖女だってただの人間。厄介なのはあの【魂源魔法】だけだ。あの力を模倣できれば……いや、人間の力を模倣するなど魔人の名折れ。魔人に相応しい力を作ろう。そうだな、例えば……罪を植え付ける力、なんていうのはどうだろうか。罪を取り除く力に対して罪を植え付ける力。うん、コンセプトとしては相応しい。この力を人間に植え付けて実験してみよう——こんな感じかな。どうだい、私の話は』
「あまりに突飛過ぎてなんとも……」
『はは、そうだね。でも全てがあり得ない話じゃないとは思ってるよ』
「そうですけど。でもそんなことしなくても魔人はただいるだけで罪を振りまいて……」
その瞬間だった。ユースティアの脳裏に閃きが走ったのは。
『何か思いついたのかな?』
「……少し思いついたことを聞いてもらっていいですか?」
『あぁ。いいよ。聞こうじゃあないか』
「もしも——」
そしてユースティアは、思いついた話をルーナルに聞かせた。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
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それではまた次回もよろしくお願いします!




