第23話 イミテルの力
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
ユースティア達の前に並べられた三人。一人目は八百屋の前にいた女性であるアイダ。魚やの店主ヘイジ。そして三人の中で一番若そうな大通りを歩いていた少女マンディだ。
三人はなぜ自分が連れて来られたかわかっていないようで、不審そうな表情をしている。
「ったくなんなんだ。おれぁまだ仕事の途中だぞ」
「私も買い物が……」
「早く帰りたいんだけど」
帝都や主要都市では有名なユースティア達聖女だが、流石に都市から遠く離れた村ではユースティア達の名しか知らないという人は多かった。
映像の記録媒体が稀少なゆえに仕方のないことではあるのだが。皇帝の顔すら知らずに一生を終える人も少なくないのだから。
「お時間をいただいてすみません。私は贖罪教の聖女、ユースティアと申します。こちらは同じ聖女であるサレンです」
「よろしくです!」
「「「っ!?」」」
ユースティアが名乗った途端に三人の顔色が変わる。しかしそれも仕方のないことだ。目の前にいるのがまさしく天上の存在である聖女だとわかったのだから。顔は知らずとも名は知っている。この三人もそうだった。
ユースティアの名を聞いた途端に態度が変化する。
「そう固くならないでください。あなた達にはお願いがあるのです」
「お願い? そりゃいったいなんのことだ……ですか?」
「イミテルさんのことについては知っていますか?」
「そりゃまぁ、この狭い村の中だし。有名ですけど……それが?」
「私達はイミテルさんの力を調べるためにこの村に来ました。そして今イミテルさんにあなた達を見てもらった所、罪を抱えている反応がありました」
「はぁ!? そりゃつまりおれ達が罪を犯してるってことですかい! そりゃねぇぜ。少なくともおれは人様に顔向けできなくなるようなことはしてねぇ!」
「私だってそうです!」
「いくら聖女様の言葉でも、急にそんなこと言われても……」
案の定というべきか。急に罪を抱えていると言われた三人はそんなわけがないと口々に怒りだす。
「落ち着いてください。あなた達が罪を犯したとは言っていません。罪というのは日常生活を送る中でも蓄積されていくものなのです。例えば嫉妬や、劣等感。他者への怒り。理由は様々ですが、罪を全く保有していない人はこの世界にはいません。ただ、あなた方が他の方より多く罪を保有しているのも事実。何か心当たりはありませんか?」
そう言われて三人はさっと表情を変える。ユースティアの言うことにどこか心当たりがあったのだろう。罪悪感もまた罪を成長させる一つの要素となるのだから。
「それは……」
「…………」
「ちょっとだけある……かもしれません」
「別にあなた方を責めるつもりはありません。それは誰もがもつ至極当然の感情。ただ、そのまま放置していて良いものでもありません。そこで、イミテルさんの力です。彼女の力があればあなた方か抱える罪を浄化できるかもしれないのです。協力してくださいませんか」
「……聖女様がそこまで言うなら」
「わかりました」
「危なくはないんですよね?」
「それは大丈夫です。私がいますから」
その言葉はなによりも雄弁に三人に対して安堵を与えるものだった。三人はユースティアの言葉を信じ、言われるがままにイミテルの前に並ぶ。
「それじゃあイミテルさん、お願いします」
「わかりました」
イミテルは三人の前に並ぶとまずは魚屋の店主であるヘイジの前に立つ。イミテルは集中するために目を閉じ、自身の腕に意識を集中させる。
その様子をユースティアはジッと見つめていた。イミテルが集中していくほどに次第に腕が黒く染まっていく。それはあまりにも異様な雰囲気を醸し出していて、呑み込まれるような迫力があった。
「いきます」
右腕が黒く染まり切ったイミテルは目を開くと、無造作にヘイジに向けて手を伸ばす。そしてその腕はヘイジの体に触れたかと思うと、ゆっくり沈みこんでいく。
「ひっ……」
「動かないでください」
思わず逃げそうになったヘイジだが、なぜか体は凍り付いてしまったかのように動けない。イミテルは素早く罪の塊を掴むと、そのまま一気に腕を引き抜く。かかった時間は一瞬だった。しかし、その一瞬でヘイジは体力を全て持っていかれたのではないかと思うほど疲弊しきっていた。
膝から崩れ落ちたヘイジを一瞥しつつ、イミテルは取り出した罪の塊をユースティアに差し出す。
「終わりました」
「……なるほど。確かにそれは罪の塊ですね。小さいけれど、確かな罪の塊です」
取り出されて目にすればユースティアにもわかる。イミテルがヘイジから取り出したのは罪の塊だということが。咎人のものほど大きくはなかったが、確かな罪の塊だった。
ユースティアは荒い息を吐くヘイジをチラリと見て言う。
「いつも相手はこれぐらい疲弊するんですか?」
「いえ。でも、相手が私の力を拒絶しているとこうなります」
「……なるほど」
ヘイジの中にあったイミテルへの抵抗心。それが原因だとイミテルは言う。それはユースティアにも納得できる話だった。ユースティアの使う『罪喰らい』の【魂源魔法】も同じだ。相手がユースティアのことを拒絶すれば同じようなことになる。
ユースティアがジッと考えながら罪の塊を見つめていると、その罪の塊はフッと溶けるようにしてイミテルの中に消えていく。
「……いつも最後はこうなります」
「なるほど。体調に変化は?」
「今は特にありません」
「あなたはどうですか?」
「お、おれですかい? ……異様に疲れたってこと以外は別に……ただ体に手を入れられるってのは気持ちのいいもんじゃねぇ」
「特に異常は無しと。それじゃあイミテルさん、他のお二人にもお願いできますか?」
「わかりました」
「わ、私達も……ですか?」
「正直今の見ちゃうと気が引けるんですけど」
「大丈夫です。この方もこの通り——」
目にも止まらぬ【回復魔法】をヘイジにかけるユースティア。急に体力が回復したヘイジは驚きながらも立ち上がる。
「すぐに元気になりますから」
そうして結局アイダとマンディはユースティアの圧に押されてイミテルの処置を受けることになった二人。ヘイジの様子を見て心配していた二人だったが、特に問題が起きることはなく、ヘイジの時と同様に処置自体は一瞬で終わった。
「協力していただいてありがとうございました」
「は、はぁ……別におれ達が何をしたってわけでもねぇんで感謝されるのも変な感じですけど」
「もう帰って大丈夫なんですか?」
「はい。もう大丈夫ですよ。もしこの後何か異変があれば私達の泊まっている宿か、村長宅に来てください」
そうしてヘイジ達と別れたユースティア達は村長宅へと戻りイミテルの力について一度考察することとなった。
「三度あなたの力を見せていただきました。あなたに罪が視えるというのも、その罪を取り出せると言うのも間違いではありませんでした」
「やっぱりあれは罪なんですね」
「はい。それは間違いありません。ですが、あなたの力は私達聖女の使う力とは全く別物です。少なくとも【魂源魔法】ではありませんでした」
「【魂源魔法】?」
「はい。それが私達の罪の浄化方法です。あなたの使った力とは異なりますが……すること自体は酷似しています。ただ私達の場合は——イミテルさん?」
「魂源……魔法……」
ユースティアは話している途中にイミテルの様子がおかしいことに気づいた。しかしイミテルはユースティアのその言葉に答えることはなかった。性格にはできなかった。
「はぁ……はぁはぁ……」
過呼吸になり胸を手で押さえるイミテル。普通ではないイミテルの様子にユースティア達も慌てだす。
「イミテルさん、大丈夫ですか! イミテルさんっ!」
そしてそのままイミテルは意識を失った。
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