第22話 視る力
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食事を終えたユースティア達は予定通りイミテルのいる村長宅へとやってきていた。
やって来たユースティア達を昨日と同様快く迎えたウダンとマヅマは客室へと案内する。それから少しして、ウダンに連れられてイミテルが客室へと入って来た。
「……おはようございます」
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
「えっと……はい。まぁ……大丈夫です」
ユースティアの言葉を聞いてイミテルは一瞬だけレインに視線を送る。その視線にレインは一瞬ドキリとしたが、極力表情には出さなかった。イミテルもわざわざレインのことを持ち出すつもりは無いようですぐにレインから視線を外し、ユースティアにその視線を戻す。
「昨日はちょっとだけ寝るのが遅くなってしまいましたけど。体調には何の問題もありません」
「そうですか。なら良かったです。今日は何か予定はありましたか?」
「いえ特には」
「いつもは何をして過ごしてるんですか?」
「お店の手伝いをしたりしてます。特に決まった場所はないですけど。後は狩りを手伝ったり」
「狩り? 狩りができるんですか?」
「できる……というか、どこに獣がいるかなんとなくわかるので」
「それは……なかなか便利な特技ですね」
「そうなんです。イミテルのこの特技にはずいぶん助けられてまして。二日前には畑を荒らしていた大猪もを狩ってくれたんです」
「大猪を。それはすごいですね」
「たまたまうまくいっただけです」
「狩りが得意だなんてすごいのです。お姉さんはもしかしたら記憶を無くす前は狩人だったかもしれないですね」
「記憶を無くす前……」
「サレン様」
「あ、ごめんなさいです……」
記憶を無くしているイミテルへの配慮が足りないとロゼにたしなめられるサレン。
「いえ、気にしないでください」
「でも、それなら力はどういう時に使っているんですか?」
「お店の手伝いをしている時に。見えたら使う様にしてます。その人が望んだら、ですけど。中には怒る人もいるので」
「なるほど……そうでしょうね」
もし自分の中に罪があると言われればいい気分はしないだろう。何もしていないのに疑われているようなものだ。罪は大きな罪を犯せば一気に蓄積されるというだけで、日常普通に生活しているだけでも少しずつ溜まっていくものだ。嫉妬や怒りの感情を全く感じない人間などいないのだから。
しかし多くの一般人にその認識はない。罪を持っている=咎人という認識だ。自分も内に罪を秘めていることなど知らない。普通であれば知らなくても問題はない。表層化しなければ、無いのと同じなのだから。
しかしイミテルの持つ目は、表層化する前の罪を見抜いてしまう。だからこそ起きる問題だ。
「えっと……それで、私は今日はどうしたら?」
「自由に過ごしていただいて構いません。ですが、少し確認したいことがあるので外に出ていただいていいですか?」
「はい。大丈夫です」
「それではウダンさん。イミテルさんをお借りしますね」
「どうぞどうぞ。イミテル、失礼のないようにな」
「わかりました」
ウダンとマヅマは心配そうな表情をしながらもイミテルのことを送り出す。村長宅から出たユースティア達はイミテルを連れて人通りの多い場所へと向かう。
村の人たちはイミテルの姿を見るやいなや視線を逸らしてそそくさと離れていく。全員がそうというわけではないが、多くの人はイミテルのことを避けているようだ。
そんな様子に少しだけユースティアは不愉快そうな顔をする。それはレイン達も同じだった。しかし当のイミテルは慣れているのかあまり反応を示さない。
「あまり気分の良いものではありませんね」
「……いつものことですよ。皆、記憶が無くて変な力を持っている私のことを怖がってるんです。仕方のないことだと思います。ウダンさんとマヅマさんが優しすぎるだけです」
村長が面倒を見ている手前、あまり表立って言うことはないがそれでも他の村人達があまりイミテルのことを良く思っていないのは明白だった。
「こういうのは……気分が悪い」
誰にも聞こえないほど小さな声で呟き、ユースティアは表情を歪める。
「え?」
「……なんでもありませんよ。私達はあなたの味方ですよ」
「ありがとう……ございます」
「ところで、あなたに一つお願いがあるのですがいいですか?」
「はい。なんですか」
「この大通りにいる人たちを視て欲しいのです」
「視る?」
「あなたが罪があると判断した人と、その理由を教えてください」
「わかりました」
特に断る理由がないイミテルはユースティアに言われた通りに通りにいる人を一人残らず視た。
『視る』と意識することでイミテルの視界は変化した。人の持つ罪がその視界に写るようになる。多くの人は黒い靄があるだけだ。しかしその中に数人、靄が一つの塊となろうとしている人がいる。それがイミテルが罪を持っていると判断する基準だ。
「八百屋の前にいる人、魚屋の店主それから……あそこの女性もそうです」
「今あげた三人の中に罪を視たということですね」
「はい。そうです」
「ありがとうございます。ロゼ、お願いできますか」
「かしこまりました」
そう言ってロゼはイミテルが挙げた三人に近づき、何事かを話し始める。その間にユースティアは手に持っていた【悪魔の瞳】を確認する。しかし【悪魔の瞳】は閉じたままで、全く反応を示していない。
「こっちの反応はある意味予想通りですかね。咎人というわけではありませんから。【悪魔の瞳】が反応しないのも納得です」
「はえー、そういう風にして確認してたですね」
「望みは薄いと思ってましたけどね。これが探せるのはあくまで咎人だけですから」
「その道具は?」
「これは私達が咎人を探す際に使う道具ですよ。【悪魔の瞳】と言って、重宝しています」
「そんな道具があるんですね」
「でもでも、お姉さんの力が本物ならお姉さんの目の方がずっとすごいのです」
「そうなんですか?」
「私もお姉さんみたいな特技が欲しいです! お兄ちゃんもそう思わないですか?」
「お兄ちゃん?」
「お兄ちゃんです!」
そう言ってサレンはレインの腕を取る。イミテルは目をぱちくりとさせてレインとサレンを交互に見る。
「兄妹……なんですか?」
「そうです!」
「違います。サレン様、適当なことを言わないでください」
「よくわからないんですけど……つまりレイン君は聖女様にお兄ちゃんと呼ばせる変態ということですか?」
イミテルの言葉に一瞬ユースティアがピクリと反応を見せるが、レインはそのことに気づかない。
「違うから!」
「ジョークです」
「お姉さんもジョークとか言うんですねー」
「意外ですか?」
「あんまりそういうこと言う人には見えなかったです」
「レイン、あの——」
「? なんですかユースティア様」
「あなたイミテルさんと……いえ、後で構いません」
何かを言いかけたユースティアだったが、ロゼがイミテルの言った三人を連れてきているのを見て言うのを止める。
「連れてきました」
「ありがとうロゼ。それでは、検証を始めるとしましょうか」
そう言ってユースティアはロゼが連れて来た三人を並べる。
「えっと……これはどういう状況なんでしょうか」
「おれぁまだ仕事が残ってんだがよう。早く済ましてくれや」
「あなた……ウダンさんの所にいる人よね」
連れて来られた三人は訳がわからないという顔をしている。
「すみません。すぐに終わらせますので。イミテルさん、いいですか。今日の本題です。あなたの力を……見せていただけますか」
「……わかりました」
そう言ってイミテルは三人の前に立つのだった。
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