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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第18話 イミテルとの語らい 前編

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 レインがイミテルと出会う数時間前のこと。

夕食を終えたレイン達は次の日の予定を確認した後、移動の疲れを癒すために早々解散となった。

ユースティアとサレンが同室になったことを少しだけ心配していたレインだが、ユースティアとサレンも少しは打ち解けているようで和気あいあいと話していた。そうなると今度はうちとけ過ぎてサレンが余計なことを言わないかということが心配だが、それはレインではどうしようもないことだ。心配するだけ無駄というものだろう。そこまでは良かったのだ。しかしレインが部屋に戻った時にその問題は起こった。


「それではお風呂に入ってから寝るとしましょうか」

「あ、はい。そうですね……って、え?」

「どうかしましたか?」

「…………」


 そう、レインは失念していたのだ。ロゼと同室であるということは部屋の中にある風呂を共有するということ。同じ部屋で寝るということを。否、失念していたというよりも意識しないようにしていたというのが正しい。


「? 急に固まってしまいましたが……まぁいいでしょう。先にお風呂いただきますね」


 固まってしまったレインのことを無視してロゼは風呂へと向かう。それから少しして、ハッと我に返ったレインは動揺し始める。今までの人生でユースティア以外の女性と同室になったことなど無かった。そんなレインがロゼのような美しい女性と同室になってしまったのだ。健全な十七歳の少年として、緊張するなという方が無茶だろう。

 シャワーの音が聞こえたレインはいよいよ緊張が限界に達する。湧き上がる煩悩を打ち消そうと必死になるレインだったが、どれも効果をなさない。このままでは耐えられなくなると思ったレインは気付けば部屋を飛び出していた。

 まだ体力が残っているから煩悩が湧いて来るのだと。限界まで疲れ切ればそんな煩悩は湧いてこないはずだと思ったレインは運動することにした。

 夜になり、人気の少なくなった村の中をひた走るレイン。普段から鍛えていることもあって普通に運動しているだけではそうそう息が切れることはない。魔力が使えないレインは人よりも体力をつけていなければまともに戦うことすらできないのだ。ただ走っているのにも飽きていたレインはそこに動きも加え始める。魔物との戦いを想定した動きだ。仮想の敵を頭に思い浮かべ、動き続ける。最初はただ適当に疲れるまで動くだけのつもりだったレインだが、気付けば本気になっていた。

 そうして動き続けること数時間。気付けば月が空高く昇る時間へと差し掛かっていた。


「やば流石にやり過ぎたかな。ティーチャルさんにも何も言わずに出てきちゃったし……さすがに怒られるかな」


 せめて書き置きくらいは残しておくべきだったかもしれないと後悔しながら、レインは宿へ向かう。しかしその道中でレインはそれまで感じなかった人の気配を感じた。まさかこんな夜更けに人がいるとは思っていなかったレインは不審人物かもしれないと若干警戒しながら慎重に進む。気付かれないようにと音を殺して歩いていたレインだったが、足もとに落ちていた枝に気づかず踏んでしまい、音を立ててしまう。


「……誰?」


 自分の不注意さを呪うレインだが、そこに立っている人を見て驚く。それは今日出会ったばかりの少女、イミテルだった。月光に照らされるイミテルは出会った時以上に幻想的な雰囲気を醸し出していた。


「え、あ……イミテル……さん?」


 雰囲気に呑まれていたレインはなんとか名前を絞り出すが、イミテルはレインのことを覚えていなかったようで怪訝そうな顔をする。


「あなたは……誰?」


 本気でわからないという顔をするイミテルに拍子抜けするレインだが、覚えてないのも無理はないと思い直す。村長宅でイミテルと話したのは主にユースティアだけで、その隣にいたのはサレンだ。レインとロゼは後ろに控えていただけなので覚えていなくても無理はない。そこでレインは改めて自己紹介することにした。


「えぇと。レインです。レイン・リオルデル。ユースティア様の……聖女様の従者をしています」


 少し考え込む仕草をするイミテル。しばらく記憶を探ったイミテルはようやくレインのことを思い出したのかポン、と手を叩く。


「あぁ、そういえばあなたみたいな人がいた……気がします」

「気がするって……」

「人を覚えるのはあまり得意じゃないですから。まぁ、自分の記憶すら忘れるのに、人のことを覚えられるわけないですよね」

「…………」

「ジョークですよ?」


 ブラックジョーク過ぎるだろ! と突っ込みたくなる気持ちをグッと堪えるレイン。しかしイミテルは全く気にしていないようでのほほんとした顔をしている。


「えっと、それでイミテルさんはどうしてここに? もうだいぶ夜も遅いと思うんですけど。危ないですよ?」

「危ない?」

「ほら、夜は不審な人とかいるかもしれないですし。暗闇に乗じて、みたいな感じで」

「私にとってはあなたが現状一番不審な人ですけど。逃げた方がいいですか?」

「い、いや俺はイミテルさんをどうにかしようなんてことは全く考えてませんよ!」

「わかってますよ。ジョークです、ジョーク」

「……好きなんですね、冗談言うの」

「こうでもしないと話難いかな、と思ったので。ほら、私って表情が豊かってわけじゃないですから。ジョークを言って場を和ませようって考えたんです」

「なるほど……」

「まぁ、大体はあなたみたいな反応ですけど。なんででしょう?」

「いや、それは無表情だからでは? ジョークを言うならもっとわかりやすくないと誰にも伝わらないですよ。声色とか表情とか、工夫できる所はいっぱいあると思いますけど」

「っ!?」


 その発想は無かったとばかりに愕然とした表情をするイミテル。


「なるほど、声色と表情。それが私に足りないものでしたか」

「あ、すいません。なんか偉そうなこと言っちゃって」

「そうですね。ほぼ初対面でそこまで言われるとは思ってませんでした。少し傷ついたかもしれません」

「……えぇと、それもジョークですか?」

「はい。ジョークです。やっと伝わりましたね。あなたの言う通り声色と表情を変えてみた成果がさっそく表れたようです」

「いや表れてねーよ! わかりずらすぎだろ! 一瞬マジかと思って焦ったわ!」


 レインの我慢が限界に達した。


「はっ! あ、いや、その……すみません。言い過ぎました」

「? 別にいいですよ。気にしてませんから。むしろそれがあなたの素であるというならば、それで構いません。あなたが私に気を使う理由はないですから」

「いいんですか……じゃなくて、いいのか?」

「もちろんです。それと私のことはイミテルで構いません。さんづけは不要です」

「じゃあ俺もレインでいいよ」

「そういえばそんな名前でしたね」

「もう忘れてたのかよ、早すぎだろ!」

「ジョークです。いくら記憶を無くしているとはいえ、そんなにすぐ忘れるようなことはありません」

「だから冗談と本気かわかりづらいんだって……」

「むぅ、ジョークとは難しいものですね」

「表情をなんとかするだけでいいと思うんだけどな」

「……こうですか? ニコッ」

「言ってるだけじゃねーか」

「表情がダメなら言葉で表現しようかと」

「逆にこえーよ」

「しかし私の表情はずっとこうですから。きっと記憶を無くす前からこうだったのでしょう」

「記憶がない……か。簡単に言うことじゃないけど、大変だよな」

「……ちょうど良いですね。こうしてあったのも何かの縁かもしれません。少し私の話を聞いてくれませんか?」


 そう言ってイミテルは語りだした。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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