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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第16話 昔のユースティアを知る人

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 宿に着いたレイン達はそれぞれの部屋で荷ほどきをしていた。ロゼと同室になったレインは若干緊張しながらロゼの様子を伺っていた。出会ってからの僅かな時間でロゼの厳しさは嫌というほど身に染みている。どんな行動がロゼの琴線に触れるかわからない以上、一つ一つの行動に気を配らなければいけないのだから。

 そんなレインの様子に気が付いたのか、ロゼは軽く嘆息して言う。


「はぁ、そこまで警戒されると流石の私も傷つくのですが」

「あ、すみません」

「まぁ、そういうあなたの気持ちもわかりますが、さすがに休憩すべき部屋の中でまで口うるさく言うつもりはありませんよ」

「え、そうなんですか?」

「もちろんです。ずっと気が張り詰めたままでは疲れますからね。私だってそんな風にずっと気を張ったままでは疲れますから」


 確かに先ほどまでとは違ってロゼの雰囲気はどこか柔らかくなっていた。厳しくするつもりはないというのは本当なのだろう。


「夕食までまだ時間があります。それまで少し話しませんか?」

「? わかりました」

「そう固くならないでください。本当にただの雑談ですから」


 それまでとは違う少しだけ優しい笑顔でロゼは言う。ベッドの縁に座ったロゼはレインにまっすぐ視線を向ける。


「元々あなたの話はカレンから聞いていました」

「カレン姉……じゃなくて、カレンさんから?」

「えぇ。私とカレンが友人関係なのは知っていましたか?」

「ユースティア様からそういう話は少しだけ……あまり深くは聞いてません」

「そうですか。簡単に言うなら、私とカレンは同期だったんです。贖罪教の幼年学校の頃からの。カレンはあの通り、教皇であるダレン様の孫娘であるというにも関わらずその立場に奢ることなく優しく接する人でしたから。融通が効かず、人と壁を作りがちだった私とも距離を置くことなく接してくれたのはカレンだけでした」

「そんなに昔からだったんですね」

「えぇ。幼なじみです。あなたとユースティア様もそうでしょう」

「そう……なるんですかね」

「ユースティア様もあなたには相当心を許していると、カレンから聞きましたよ」

「それは……どうなんですかね?」

「でもあなたはユースティア様の本性を知っているのでしょう? あの方の隠すこと無き本音を」

「え、って言うことはつまり……」

「えぇ。私も知っています。というよりも、私がユースティア様の性格を矯正しましたから」

「え、えぇ!?」


 ロゼから知らされる驚愕の事実だった。それはつまり、表のユースティアを作りあげたのはロゼだということなのだから。世間に広く受け入れられるユースティアの土台の生みの親。それがまさかロゼだとは思いもしなかった。


「驚きましたか?」

「えっと……はい。え、本当にティーチャルさんがユースティア様の性格を矯正したんですか?」


 ユースティアの我の強さは誰よりも従者であるレインが知っている。それを矯正するなど、どんな手段を使えばそんなことができるのか想像もできない。


「出会った当初のユースティア様はそれは酷いものでした。まるでこの世の全てを憎むかのような……そんな目をしていました。私はもちろん、カレンにも、ダレン様にも。あの当時のユースティア様は人の形をした獣でしたね。獣より力を持っているという点を加味すればより厄介ではありましたが」

「えっと、ユースティア様がダレン様に拾われたのって五歳の頃ですよね? その頃からそんなに強かったんですか?」

「えぇ。強かったですよ。強くなければ、彼女は生きれませんでしたから……もしかしてまだ何も聞いていないのですか?」

「出会う前のことは何も……聞いてほしくなさそうだったので、こちらから聞いたことは一度も」

「そうでしたか……では少し余計なことを言ってしまったかもしれないですね。私がユースティア様の使用人をしていたことは?」

「あ、それは聞きました。それも詳しくは聞いてないですけど」

「当時はユースティア様の世話をできる人がいませんでしたから。私が請け負うことになったんです。そうなればすることは一つです。狂犬すら忠犬に。しつけのしの字も知らないようなユースティア様と全力でぶつかり合いました。気を抜けば仕掛けてくる彼女を叩きのめし、根気強く、常に傍に侍って。言葉遣いから作法から、できうる限りを叩きこんだのです」


 事もなげに言っているが、ロゼのしたことはある種偉業だ。あのユースティアを叩き伏せることができる人がいたという事実がレインには驚きだった。


「昔のユースティア様は今ほど強くはありませんでしたからね。そうして一年が経つ頃にはだいぶ落ち着きましたし。あなたがユースティア様と出会ったのは私が使用人の立場を離れてからなので知らないのも無理はないですが」


 ロゼの言う通り、レインの知るユースティアは多少粗暴ではあったが、狂犬というほどではなかった。


「ユースティア様の傍を離れてから心配していたのですまた性格が戻ってしまわないかと。しかしそれは杞憂でした。あなたのおかげです」

「俺の?」

「えぇ。あなたと出会ってユースティア様は変わったと、カレンは言っていました。そしてそれは良い変化だとも」

「そう言われても……俺は特に何をしたってことはないと思うんですけど」

「自覚はなくとも、あなたの何かがユースティア様を変えたのは事実です。それは誇ってもよいことですよ」

「俺からしたらあのユースティア様を矯正できたティーチャルさんの方がすごいと思いますけど」

「……まぁ、あの頃は私も若かったですから」


 今も十分に若いのでは? と言いかけてレインはその言葉を呑み込む。女性に年齢の話はタブーだとレインは経験上知っている。


「しかし、それはそれです。あなたがユースティア様の従者に相応しいかどうかとは別の話。カレンにも言いましたが、いくらユースティア様があなたのことを信用しているとはいえ、それだけで務まるほど従者というのは優しくありませんから。時には強い言葉で主を諫めることも必要なのです。それがあなたにできていますか?」

「えっと……」

「ユースティア様は聡明なお方です。その目は常に進むべき未来を見据えている。しかしだからと言って間違わないわけではないということを忘れないでください」

「……はい」

「あ、すみません。ただの雑談だと言ったのに、また説教のようなことをしてしまいました。私もまだまだですね」

「いえ、そんなことは。ティーチャルさんの言うことは最もですから。ユースティア様の従者として認められるよう、頑張ります」

「そう言っていただけると助かります」


 そう言った後、ロゼは迷うような表情を見せ、しかし意を決したように口を開いた。


「ユースティア様はまだあなたに全てを話しているわけではないのでしょう。しかしそれはあなたを信用していないからではありません。むしろその逆。あなたを信用しているからこそ話せない。でもきっといつか、あなたにも話してくれる日が来るはずです。私から言えることはただ一つ、これはお願いです」

「お願い?」

「受け入れてあげてください。あの方の全てを。私は、今はサレン様の使用人で、あの方の傍にいることはできませんから」

「ティーチャルさん……わかりましたって言うのは変かもしれないですけど……ちゃんと向き合います。もしその時が来たら、きっと」

「……ありがとうございます」


 そう言ってロゼは優しい笑顔を浮かべるのだった。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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