第14話 出会い
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
ロドルに着いたのは当初の予定通り夕方になってからだった。帝都から長時間移動してきたレインとユースティアは流石に疲労を隠せなくなっていた。
「さすがにここまでの移動は少し堪えますね」
「列車から馬車ですしね。列車はまだ寛げましたけど、馬車は座っているしかないですし」
聖女専用列車が用意してある列車とは違い、馬車は座っていることしかできない。それでも普通の馬車よりは広いのだが。
「ユースティア様、疲れているのはわかりますが聖女として相応しい立ち振る舞いを。ここは誰の目もない場所ではありません。常に民衆と光たれ。そう昔教えたはずですが」
疲労を滲ませるユースティアに対してロゼは聖女としての在り方を説いた。
「えぇ。もちろんわかっています。すみませんロゼ。先輩である私がこのような姿を見せてはいけませんね。気を付けます」
「いえ、わかっていただければいいのです。リオルデルさん、あなたもですよ」
「は、はいっ!」
まさか矛先が向いてくると思っていなかったレインは驚いて声が上ずってします。相も変わらず怜悧さを感じさせる瞳でレインのことをまっすぐに見据える。
「従者とは主に付き従うもの。まして聖女様の従者となれば、その苦労は並大抵のものではないありません。この程度の移動で音をあげるなど情けないですよ」
「すみません……」
「それに本来なら私がユースティア様に言ったことは、あなたが言わなければいけないことです。わかっていますか」
「えぇと……はい。そうですね。すみません」
「今必要なのは謝罪ではなく行動。今後は従者として相応しい行動をとるよう心がけてください」
「わかりました」
「ロゼ。言いたいことはわかりますがそのあたりで。時間は有限、なのでしょう」
「……そうですね。その通りです。注意は後でもできますから。言いたいことはまだありますが、今はこのあたりにしておきましょう。件の少女は村長宅に住んでいるそうです。このまま向かいましょう。案内します」
事前に村長の家の場所は調べていたのか、ロゼは先導して歩き出す。ロゼの視線が外れたことで、レインはホッと息を吐く。相当緊張していたようで体まで強張っていたことにレインは気付いた。
(視線と言葉だけであの迫力とか……やばいなあの人。ティアが苦手だって言うのもなんとなくわかるかも)
「大丈夫ですかお兄ちゃん」
説教されていたレインのことを心配したサレンがススっと近づいてきて気遣うような視線をレインに向ける。
「えぇ大丈夫ですよ」
「その、ロゼは少し厳しいですけど、それだけじゃないです。優しい所もあるですよ……少しは。お菓子作ってくれたりするです」
レインとロゼが不仲になってしまうことを危惧したのか、必死にロゼのフォローをしようとするサレン。フォローの言葉が少しずれているのもまたサレンらしいとレインは苦笑する。
「もちろんわかっていますよ。ティーチャルさんが厳しいだけの方ではないということは。あの言葉も俺のことを思ってのことだと理解していますから」
「ならいいです。きっとロゼに色々言われると思うですけど、あんまり気にしちゃダメですよ。それじゃあ行くです。あんまり遅くなるとロゼがまた怒るです」
「そうですね。行きましょう」
レインの言葉でサレンは安心したのか、走ってロゼの後を追いかける。
「ロゼはいつもああいう感じだ。なんとなくわかっただろ」
「なんとくな。さっきは助かったよ。助けてくれたんだろ」
「勘違いするなバカ。時間を無駄にしたくなかっただけだ」
「はいはい。そういうことにしとくよ」
「いいから行くぞ。サレンじゃないけど、遅れるとロゼがうるさい」
そして、ロゼのあとを追ってロドルに入ったレインは思わず目を見張る。危険な地にある村、と聞かされていたせいか勝手に寒村のようなものを想像していたのだがロドルの中は予想に反してしっかりと整備されていた。
村というよりは街に近い、というのがロドルを見たレインの第一印象だった。
「意外ですか? 村並みがしっかりしていることが」
「えぇまぁ、少し……失礼かもしれないですけど」
「事前の情報収集が足りませんね。ロドルに来ることがわかっていたならば調べることはできたはずですが。まぁいいでしょう。ロドルが発展しているのには理由があります。先ほどもいいましたが、ロドルは東大陸にほど近い村。危険な位置にある村です。結界の綻びも報告されることがある昨今、いつ魔人の襲撃を受けてもおかしくありません。だからこそダバラルはロドルの守りを固めることにしました。住民を守るという目的はもちろん、異変が起きた際にすぐに気づくために」
「それってつまり……」
「えぇ、言い方を悪くするならば有事の際に時間を稼ぐための盾、とも言えます。そのためにこの村は整備されているのです」
「…………」
「気に食わないとお思いかもしれませんが、これもまた必要なことなのです。私達が守らなければいけないのは人類そのものなのですから。今回、少女の存在に気付くことができたのもこのロドルと蜜に連絡を取っていたからこそです」
ロゼの言い分はわかる。しかしだからと言って納得できるかといえばそれは別の話だ。まるでこの村の人々を生贄にすると言わんばかりの言葉。かつて魔人の襲撃で家族と友人を失ったレインがそれを認められるはずがない。
「もちろん、ただの盾にするつもりはありません。そのために贖罪教はこの村に他よりも多くの人員を割いていますから。さぁ、話はここまでです。ここが村長の家です」
話しているうちにレイン達は村長の家へとたどり着いた。村長宅は周囲の家よりも少し大きい程度の普通の民家だった。ロゼが家の扉をノックすると、中から現れたのは初老の女性だった。
「贖罪教の者ですが」
「あぁ、あなたたちが。どうぞどうぞ。なんにもない所ですが。お父さん! 贖罪教の方たちが来たよ!」
女性に案内されてレイン達は家の中へと入る。それと同時に初老の男性が顔をのぞかせる。
「おぉこれはこれは。こんな辺鄙な場所までよくお越しくださいました。私がこの村の村長のウダンです。こっちは妻のマヅホです」
「どうも~」
「初めまして、私はユースティアです。贖罪教の聖女をしております」
「は、初めまして。サレンなのです。ユースティアさんと同じ贖罪教の聖女です」
「えぇもちろん知っていますとも。お二人のご高名はかねがね聞いております。聖女様がおられるからこそ私どもも安心してくらせるのですから」
「そういっていただけると嬉しいです」
「えへへ、照れくさいのです」
「では、私どもも自己紹介を。私はロゼ・ティーチャル。サレン様の使用人をしております」
「俺はレイン・リオルデルです。ユースティア様の従者をしています」
「これはどうもご丁寧に。皆様が来られたのは、私どもの家で預かっているイミテルに会うため、と聞いておるのですが……間違いないですかな?」
「そのイミテル、という方が噂の少女なのですか?」
「えぇ。私どもが偶然拾った少女にございます。身寄りもなく、困っておったようなので家で面倒を見ることにしたのです」
「なるほど……それで、その少女はどこに?」
「それが、まだ帰ってきてないんです。もうすぐ帰ってくると思うんですけど」
マヅホがそう言うと同時に、家の扉が開かれる。そこに立っていたのは、息をのむほどに美しい少女だった。長い銀色に翡翠の瞳。白磁のような肌には汚れ一つない。身長はユースティアと同じくらいか。静かな雰囲気をまとうその少女に、レイン達は呑まれてた。
「ただいま戻りました。えっと……この方達は?」
これがレイン達とイミテルの出会いだった。
予約投稿したと思ったらできてなかった件。
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