第13話 ロゼ・ティーチャル
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列車に乗ってから数時間後、レインとユースティアはサレンと合流する予定のダバラル駅へと到着していた。
「いくら専用列車で幾分マシとはいえ、長時間乗り続けると疲れるな。今度列車の中にベッドでも入れるべきか?」
「本格的に寝る気かよ」
「それもありだ。あぁくそ、途中で変な寝方したせいで体が痛い……」
凝り固まった体をほぐすように動かすユースティア。レインも長時間座ったままだったせいで疲れていた。
「ふぅ……よし、それじゃあサレンと合流するか」
「そうだな。着く時間は事前に伝えてあったから、もう居てもおかしくないんだけど」
レインがキョロキョロと周囲を見まわしていると、遠くからレインのことを呼ぶ声が聞こえた。
「お兄ちゃーーーーーんっ!」
タタタッと走って駆け寄ってきたサレンはそのままの勢いでレインに飛びつく。
「会いたかったですぅ!」
「はぐぁっ!」
かなりの勢いで抱き着かれたレインはこけないように踏ん張るので精一杯だったが、サレンはそのことに気づかずグリグリとお腹にこすりつける。
サレンはレインが想像していたよりもずっと力が強く、内臓が圧迫されているのをレインは感じていた。
「えへへ、会いたかったですぅ」
「そ、そうですか……あ、あの。少し離れていただけると助かるのですが……」
「? どうしてです?」
「いやその、苦し——」
「サレン様っ!」
「ひぅっ」
レインの声を遮るように響くサレンを一喝する声。その声を聞いたサレンはビクッと体を竦ませレインから離れる。助かった、と安堵の息を吐くレインとは対照的にサレンは顔を青くしている。そしてそれは、レインの近くにいたユースティアも同様だった。
「い、今の声……もしかして……」
ユースティアは恐る恐るといった様子で声のした方向に目を向ける。つられてレインもその方向を見ると、サレンの走って来た方向から凛とした立ち姿の美しい女性が近づいて来る。
「サレン様、そのようなはしたない行為を、ましてや殿方に向かってするなど淑女としてあるまじき行為ですよ」
「ご、ごめんなさいです……」
「謝罪をするときは目を逸らさない。背筋を伸ばし、相手のことをちゃんと見て誠意をもって言葉を伝える。いつも言っているはずですが」
「はいですぅ……」
「え、えっと……あなたは?」
どこか冷たい雰囲気を放つ女性の迫力に呑まれていたレインは恐る恐る言葉を絞りだす。
「他人に自己紹介を促す際はまず自分から。これもまた基本であると私は考えていますが……あなたはどうお思いですか?」
「あ、すいません。えっと俺……じゃなくて、私はユースティア様の従者をしているレイン・リオルデルです。よろしくお願いします」
「なるほど、あなたがユースティア様の……私はサレン様の使用人兼教育係を務めていますロゼ・ティーチャルです。以後、お見知りおきを」
「よろしくお願いします」
「ユースティア様の従者であるリオルデルさんがここにおられるということは、ユースティア様もこちらにおられるはずですが?」
「えっとはい。ユースティア様はここに……ってあれ?」
つい一瞬前まで近くにいたはずのユースティアの姿が消えていた。どこに行ったのかと一瞬焦ったレインだったが、その姿はすぐに見つかった。限界まで気配を消し、少しずつ離れようとしていたのだ。
「お久しぶりですねユースティア様」
「っ! え、えぇ。そうですね。お久しぶりですロゼ」
「そんなに気配を消してどちらへ行かれようというので?」
「別にどこかに行こうとしていたわけではないですよ。気配を消すのは癖のようになってしまっていまして。すみません」
「そうですか。なら良いのですが。気配を消しすぎるのは人を驚かせる原因にもなってしまいますので、平時は控えた方が良いと思いますよ」
「そうですね。気をつけます。今回はロゼがサレンの付き人ですか?」
「はい。他の方は予定がつかなかったので、私が同行することになりました。久しぶりにユースティア様にも会いたかったので、ちょうど良い機会かとも思いまして」
「そうでしたか。私も久しぶりにロゼに会えて嬉しいですよ」
「そういう割には顔が引きつっていますが……最近の風評を聞いてもう大丈夫かと思っていたのですが、まだまだ感情管理が甘いですね。私が今回同行したのにはもう一つ理由があります」
「もう一つ……ですか?」
「はい。あなたの従者を直接この目で確認することです。聖女の従者を務めるに相応しい人かどうか。私には見定める義務があります」
そう言ってロゼはレインに視線を向ける。その瞳はどこまでも真っすぐで、レインのことを見定めようとしているのがわかった。
「まぁしかしそれは今回の任務の中で見定めるとしましょう。それよりも早くロドルへ移動しましょう。時間は有限です。有効的に使わなければいけませんから。行きましょうサレン様」
「わかったです」
ピシッと背筋を伸ばした姿勢のまま、サレンを連れて歩き出すロゼ。少しロゼから距離が空いた途端にユースティアはため息を吐く。
「まさかロゼが来るなんて……帰りたい。すっごく帰りたい」
「えっと、今の人が昔ティアの所にいた?」
「あぁそうだ。見ての通りの超がつくほど固い奴だよ。久しぶりに会ったけど全然変わってない」
「ティアがあそこまで苦手そうにするなんて……よっぽどなんだな」
「色々あったんだ」
過去を思い出して苦虫を噛み潰したような表情をするユースティア。
「まぁ、普通にしてたら大丈夫だとは思うけど。気をつけろよレイン。下手なことしたらすぐ言われるからな」
「まぁ、普通にしてたら大丈夫だとは思うけど。気をつけろよレイン。下手なことしたらすぐ言われるからな」
「気をつけろって言われてもどうしたらいいかわからないけど。まぁ気を付けるよ」
ユースティアでも恐れるロゼ。そんな人の存在に一抹の不安を覚えながらサレン達の後を追いかけるのだった。
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ダバラルからさらに列車を乗り継いで数時間の位置にロドルはあった。そこは東大陸にほど近い場所にある村だった。
「ロドルは知っての通り魔人の支配地である東大陸と近い場所にあります。結界があるとはいえ、非常に危険な場所であることには変わりありません」
「なんでそんな場所に村があるんですか?」
「様々な事情があると言ってしまうのは簡単ですが……単純に言えば元から住んでいた人々が移住を嫌がったのです。昔から住んでいた土地を離れたくないと。そうしてできあがったのが今のロドルです。魔族による大規模侵攻もありませんでしたから。危機意識も昔に比べて低下したのでしょう」
「なるほど」
「しかし今回の一件はそのロドルで起きていることです。最悪、魔人が関与している可能性もあるということだけ頭の隅に置いておいてください」
「わかりました」
「すでにロドルの村長には我々が向かうことを伝えてあります。着く頃には夕刻になっているでしょうが……ロドルにつき次第、件の少女に会いに行きましょう。それでいいですか?」
「私は問題ありません」
「俺もです」
「サレンはよくわからないのでお任せするですぅ」
「はぁ、サレン様。よくわからないではなく、考えるのです。他人任せではいつまで経っても成長は望めませんよ。私はあくまで使用人の立場。決めるべき立場にあるのはサレン様なのですから」
「あぅ……」
「今回の任務の中でサレン様が少しでも成長されることを私は期待していますよ。あなたもまた聖女に選ばれた存在。必ずできるはずなのですから」
ロゼの言葉に少し不安気な表情をするサレンを見て、ユースティアが声を掛ける。
「大丈夫ですよサレン。今回は私もいますから。何かあれば頼ってください」
「ありがとうですユースティアさん。でもでも、サレンは聖女として成長したいので、一生懸命頑張るですよ!」
それからさらに時は過ぎ、夕方になってレインとユースティア達はロドルへと到着するのだった。
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