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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第12話 ユースティアの苦手な人

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 そして二日後、ユースティアとレインはロドルへと向かうため列車に乗っていた。今回はナミルへ向かった時とは違い、聖女専用列車のなかにはレインとユースティアしかいない。なので、ユースティアは全力でだらけきっていた。


「……レイン。飲み物とって」

「はいはい。っていうか、少しは自分で動けよ」

「やだ」

「やだじゃねぇよ。子供か」

「子供でいることでレインを動かせるなら私は子供でいい」

「変な言い訳すんな。ほら、水」

「……ジュースは?」

「用意してない。お前あったらあっただけ飲むからな。今回は水だけにしとけ」

「ケチ」


 口では文句を言いつつもユースティアは水を受け取る。水を飲みながら流れゆく景色を眺める。


「はぁ、最近出張が多すぎる」

「確かに。ここ一、二ヶ月くらいは結構帝都を出ること多いな。他の人も多いのか?」

「仕事大好き人間のミューラは帝国内だけじゃなく王国でもどこでも行ってるけど、フェリアル達はそうじゃない。基本的には自分の担当してる州内だけだ。まぁ、ミューラを含めても私が一番出張回数多いけどな」

「へぇ、そうだったのか。なんでだ?」

「帝都は安全だからな」

「安全?」

「帝都は守りが固い。贖罪教も、断罪教も本部が置いてあるからな。断罪教なんか常に本部に聖騎士を配置してるくらいだ。魔物が出ようが魔人が出ようがすぐに対処できる。他の州はそういうわけじゃないからな。どうしても助けが必要になることが多い。その時に動かしやすいのが私ってわけだ」

「なるほどなー、そういうことか」

「っていうか、逆になんで今まで気にしてなかったんだ。今までだって普通に何度も出張はあっただろ」

「まぁそうだけど。そういうもんなのかなぁってくらだよ。他の人のスケジュール管理してたらわかったかもしれないけど、初めてがお前だったんだからしょうがないだろ」

「……なるほど。そう言われればそうか。私しか知らないんだったな。私しか経験が無かったなお前は」

「変な言い方するな」

「まぁ、帝都にしても他の所に行ってもすることは変わらないからな。どうでもいいんだかが。それに今回はいつもと違うし、多少は楽しみにしてる」

「聖女みたいな力を使う女の子……か。いったいどんな子なんだろうな」

「む。気になるのか?」

「まぁそりゃ気になるよ」

「ふん。この浮気者め」

「なんでそうなるんだよ!」

「新しい女の情報を手に入れれば州を跨いででも直接会いに行く。性欲魔人め」

「いわれなき汚名を着せるな! ただ単純にどんな力持ってるか気になるってだけだよ!」

「どーだか。どうせ可愛い女だったらすぐに鼻の下伸ばす癖に」

「そ、そんなこと……ねーよ」

「その間に本音が如実に現れてるな」

「うぐ」


 そんなことないと言い切りたかったレインだが、レインも17歳の健全な男だ。可愛い女の子を見れば鼻の下を伸ばさないとも言い切れない。そんなレインを見てユースティアは呆れたようにため息を吐き、レインに聞こえない程度の小さな声で呟く。


「お前は私だけ見てればいいのに」

「なんか言ったか?」

「……サレンはどうしてるだろうなって言ったんだよ」

「あぁ、あの子か……サレン様って聖女になってまだ短いんだろ?」

「そうだな。ちょうど一年くらいだ」

「ティアから見てどうなんだ?」

「もちろん才能はある。聖女に選ばれるくらいだからな。ただ、まだ精神が幼い。だからつけ込まれやすい」

「つけこまれやすい?」

「あぁ。私にすり寄ろうとする奴が多いのは知ってるだろ?」

「まぁ確かに多いな」

「あのドルツェンもそうだ。求めてるのは聖女の持つ力。聖女が味方に付くことの大きさは誰でもわかるからな。私含めて他の聖女はそのことを理解してる。だからむやみに人を近づけない。従者も安易に選ばない。でもサレンは違う。まだその辺りのことをちゃんと理解してないからな。その隙を狙って近づこうとする奴もいるだろう。サレンは金にも目がないしな。付け入る隙も多いと思われやすいだろう」

「大丈夫なのか?」

「なんだ、サレンのことが心配か? おにーちゃん」

「その呼び方は止めろ!」

「まぁサレンなら大丈夫だ。そのためにつけてる使用人もいるしな」

「え、そうなのか?」

「あぁ。レインはあったことないだろうけどな。カレンの友人で厳しいことで有名な人だ。私も一時世話になったことがある」

「その人が今はサレン様の使用人をしてるのか?」

「サレンに変な奴が近づかないようにな。ちなみに私は苦手だ。できれば会いたくない」

「へぇ、珍しいな。お前がそこまで言う人なんて」

「……色々とあったからな」

「ティアが苦手な人か。逆にちょっと会ってみたいな」

「私はお断りだ。いや待てよ。もしかして今回の任務についてきてたり……いやそんなはず。でもないとは言い切れない……今からでも逃げるか」

「そんなに嫌なのか」

「レインも会えばわかる。とにかく、その人が近くにいる限りサレンに下心もって近づける人はいないだろう。もし今回の任務についてきてたら私は逃げる」

「おいおい……」


 ユースティアにそれほど言わせるとはどんな人なのか、レインとしてはかなり気になったがユースティアは思い出したくもないのかブルっと身を震わせてそっぽを向く。


「サレンとはダバラルで合流する予定だったな」

「あぁ。そうだけど」

「なら近づいたら起こせ。それまで寝る」

「はいはい。わかったよ」


 言うやいなやユースティアは小さな寝息を立てて眠り始める。窓の外は少しずつ景色が変わり始め、帝都を離れていく。列車はレイン達を連れて、ダバラルへと向かうのだった。






□■□■□■□■□■□■□■□■□


 それは、少女の見ている夢だった。

「ふんふんふ~ん♪ あはは、よーし完成です。やったね私! 頑張ったね私!」


 上機嫌に鼻歌を歌う白衣の女性。そんな彼女のことを少女はただぼんやりと見つめていた。思考が上手くまとまらない。自分が誰なのか、ここがどこなのか、何もわからない。ぼうっとした瞳で女性のことを見上げると、ニッコリと笑う女性と目が合う。


「やぁ、お目覚めかな×××。気分はどう?」

「……気分?」

「うーん、まだ目が覚めたばっかりで意識がはっきりしてないのかな。まぁいいや。おめでとう。君が初めての完成品だよ。一応、だけどね」

「???」

「わけがわからないって顔だね。まぁそれも仕方ないか。君は多くの犠牲の上に生まれた存在。私の自信作だよ」

「自信作……」

「んー、いまいちはっきりしてないなー。なんででしょうかねー? バイタル的には何も問題ないはずなのに。それとも、もともとこういう感じの子だったのかな? 被検体の情報なんて知らないですし。まぁ、こういう子だったということにしましょう。さ、それじゃあ実験を始めましょう。もう動けるはずですよ。まずは私の言う通りに動いてくださいね」


 女性に言われるがままに少女は起き上がり、言われるがままに体を動かす。女性は何やら計測してるようだったが、少女には何をしているのかまるでわからなかった。


「基本動作は問題なし。まぁそこは弄ってないし当然か。これを握ってもらえますか?」

「…………」


 渡されたのは手のひらほどの大きさの鉄の塊。それを少女は言われるがままに握りしめる。するとどうだろうか、鉄の塊はあっという間にひしゃげ、砕け散った。


「あちゃ、握力設定間違ったかな? うーん……まぁこれは後で適当に調整しておきましょう。さぁ次はいよいよ本題ですよー」


 女性が近くに置いてあった檻に被せられていた布を取り去る。するとそこにいたのは虚ろな目をした男性だった。茫洋とした瞳で虚空を見つめている。しかしその男性は女性を視界に写した瞬間、人が変わったかのように怯え始め逃げようとする。だがそこは狭い檻の中。逃げる場所などあるはずがない。


「さぁさぁ実験本番です。あなたの力の使い方は……わかってますよね?」

「…………」


 女性に促されるままに少女は男性の入った檻の前に立つ。そしてそのまま無造作に手を伸ばし——。


「っ!!!」


 そこで少女は目を覚ます。

 額を汗で濡らしながら、少女はベッドから体を起こす。


「ゆ……め……? 今のは……私の……記憶?」


 バクバクと脈打つ心臓を抑えながら、少女は呼吸を整える。


「誰か……誰か私を……」


 そんな少女の呟きは、誰にも聞こえることなく消えていった。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!



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