第11話 サレンの事情
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
「今日の昼食はレインが作ってくれたんですよ」
「え、お兄ちゃんが作ってくれたですか?」
「はい。うちには常駐のコックがいませんから。今日は都合がつかなかったので俺が用意しました。あまり料理が得意とは言えないのでお口に合うかわかりませんが」
「そんなことないです! とっても美味しそうです!」
「そう言っていただけるとありがたいですね」
本当の所を言うならば、コックは都合がつかなかったのではなくそもそも休みだ。ユースティアが休みの日に雇っている使用人が家にやって来ることはない。ユースティアは使用人の顔など知りもしないだろう。
普段はコックが作り置きしておいた料理を食べるが、休みの日はレインが用意するか外食することが多い。
「私はレインの作る料理は好きですよ。レインの作る料理は……優しい味がします」
ニコリと優しい笑顔でユースティアは言うがその言葉がどこまで本気かはレインにはわからない。
今回レインが作ったのはオムレツだ。卵が余っていたから作っただけの特別でもなんでもない普通の料理だ。
「それじゃあ食べましょうか。レインも座ってください」
「いいのですか?」
「えぇ。サレンも構わないでしょう?」
「もちろんです! むしろお兄ちゃんも一緒に食べたいです!」
「というわけです。客人の言うことは聞くべきでしょう?」
「はぁ、わかりました。そういうことなら俺もご一緒させていただきます」
ユースティアに言われてレインも席について食事が始まる。レインの作った料理を一口食べたサレンはパァッと目を輝かせる。
「すっごく美味しいです!」
「そ、そんなに目を輝かせるほどでは……普通の料理ですよ?」
「でもでも、この料理からはお兄ちゃんの優しさが伝わってくるです。ユースティアさんの言う優しい味がわかったのです!」
「そうでしょう。わかってくれてよかったです」
「優しい味?」
レインは自分の作ったオムレツを一口食べるが、優しい味と言われてもいまいちピンとこない。しかしユースティアとサレンはその優しい味がわかっているようで二人してしきりに頷いている。
「普通の味しかしませんけど」
「そういうことではありませんよレイン」
「そういうことじゃないのです。きっとお兄ちゃんにはわからないのです」
「???」
「そもそもサレンはなかなか温かいご飯を食べれないのです。温かいご飯を食べるのが久しぶりなのです」
「そうなんですか?」
「はいです。いつもは使用人の方と一緒にいるですけど、毒の危険があるからといつも検査された食事しか出してもらえないのです。サレンはまだ【解毒魔法】を使えないので」
「なるほど……そういうことですか。確かに私も昔はそうでしたね」
「ユースティアさんもそうだったですか?」
「はい。流石の私も昔は毒をどうしようもありませんでしたから」
「昔は?」
「えぇ。今はもう毒耐性を身につけたのでどうということはありませんけど」
「毒に対する耐性って……そんなに簡単に身につけられるものなのです?」
「簡単かどうかは知りませんけど……方法は単純ですよ。レインでも誰でもできます」
「俺でもですか?」
「はい。まず、毒の入った小瓶を用意して、それを少量水の中に入れて飲んでから——」
「ちょっと待ってください」
「どうしました?」
「……飲むんですか?」
「はい」
「毒入りの水を?」
「はい。と言っても少量ですよ? あ、この時用意する毒はできれば致死性のあるものがいいですね。そうすると後が楽になります。万が一のために解毒剤も用意しておくことも忘れずに。飲んで死にかける。これを毎日繰り返すだけの簡単な作業です」
「「…………」」
「どうしました二人とも、変な顔して」
「それ誰でもできる方法じゃありません」
「サレン頑張って【解毒魔法】覚えるのです……」
「え? え? ダメですかこの方法。私これで【解毒魔法】無しでも大丈夫なほどに毒耐性を身につけたんですけど。ダメなんですか?」
「サレンにはそんな勇気ないです……」
「俺もさすがに……」
「えぇ……おかしいですね。この方法カルラには好評だったのに……」
理解できないという表情をするユースティアに思わず呆れるレインとサレンなのであった。
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その後、食事を終え一段落着いたユースティア達はいよいよ本題へと入ることになった。
「それでは、お腹も落ち着きましたし今日の本題に入りましょう。と言っても知らないのはレインだけですけど」
「まだ話してなかったです?」
「えぇ。今日サレンが来るのでその時で大丈夫かと思いまして」
絶対嘘だとレインは思った。ユースティアのことだから単純に忘れていただけだと。そういうことを平気でするのがユースティアだ。
「なら改めて最初から話すです。サレンはダバラル州を担当しているですが、そのダバラル州にある村の一つで、最近妙な噂があるのです。それが聖女のような御業を使う少女がいる……という噂なのです」
「聖女のような御業?」
「はいです。その人はサレン達のように罪を浄化する力を持っている、と言われているのです。一度贖罪官を向かわせたですが、確かに罪を浄化したとのことなのです」
「それじゃあその人は新しい聖女ってことですか?」
「それがそうとも言い切れない……らしいのです」
「らしい?」
「聖女が罪を浄化する方法は【魂源魔法】です。これはレインも知ってますね?」
「はい」
「これは極論ですが【魂源魔法】を使えれば聖女、使えなければ聖女ではないとも言えます。しかしその少女は【魂源魔法】を使わなかった。つまり聖女ではない、と考えることができます」
「聖女じゃないのに罪を浄化って……そんなこと可能なんですか?」
「不可能です。【魂源魔法】以外に罪を浄化する方法はない。と、言いたい所ですがサレンの話が本当ならば可能なのでしょう」
「それじゃあ」
「えぇ。放置することはできません。ですので調べに行きます」
「ここに来たっていうことはユースティア様が行くってことですか?」
「そういうことです」
「本当ならサレン一人で行くべきなのです。でも、まだサレンではまだ力不足だと判断されたのです。今は状況も状況ですし。」
「サレンはまだ聖女になって日が浅いので。正しい判断ができるか否かと問われれば否と言わざるをえませんから。そこで私が聖女会合の話合いの結果私が一緒に行くことになったんです」
「なるほど……って、それじゃあもしかしてまた出張ですか?」
「そういうことになります。ナミルに続いてになってはしまいますけど」
「あぅ、ごめんなさいです。サレンがもっとしっかりしてればよかったですけど……不甲斐ないです」
「あ、いえそんな。サレン様が謝ることでは。俺は全然大丈夫ですし」
「今回、サレンに私の家まで来てもらったのはその予定を詰めるためです。私の予定も調整しなければいけませんから」
「そうですね。予定されていたものがいくつかありますから。大きな予定が無かったのが幸いですね」
「向かうのはダバラル州南西にある村、ロドルですぅ。今回が私も一緒に行って、勉強させてもらうのです」
「できる限り早急に発ちます。明後日には行けるように調整しておいてください」
「わかりました。その方向で調整しておきます」
「さぁ、鬼が出るか蛇が出るか。何が待っているでしょうね」
そう言ってユースティアは不敵に笑うのだった。
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