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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第9話 ルーナル邸からの帰り道

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

「というわけで、私の話は以上だ。あぁ、ちなみにその『罪丸』は試作品だ。だから金は請求しない。安心してくれたまえ」

「当たり前です。効果も不明なモノに金を払ったりはしません」

「手厳しいねぇ。とにかく、私の要件は今ので終わりだ。君達からなにかあるかな?」

「レイン、何かありますか?」

「とくには」

「あぁそうだ。レインには私の可愛い子供である《紅蓮・双牙》の使用感を教えて欲しいね。整備した後、違和感がないかどうかをね。今回は魔術回路まで弄ったからね。もしかしたら何か不具合が出ないとも限らない」

「わかりました。また後で確認しときます」

「ユースティアは?」

「私は……そうですね。少しだけ話があります」

「ほう。聞こうじゃないか」

「その前に……レイン、席を外してくれますか?」

「? わかりました」

「内緒話というわけか。いいだろう。レイン君、それなら待っている間、魔導人形を相手に銃の性能を試すといい。二つとなりの部屋に試射場がある。そこに魔導人形も置いてある。実戦仕様になっているからね。そのデータも取らせてくれると助かる」

「俺程度でどんなデータが取れるかわからないですけど……」


 部屋を出たレインはそのまま二つ隣の部屋へと向かった。

 そして、レインがいなくなったのを確認したユースティアはルーナルへと向きなおる。


「それじゃあ君の話を聞こうじゃないか」

「あの罪丸……私の血を使いましたね?」

「おぉ、ご明察。君の血を使わせてもらったよ。聖女の血を使った特別な薬だ。高価なんてものじゃあないね」

「茶化さないでください」

「何を怒っているんだい?」

「あなたは私の血がどういうものか知っているでしょう」

「あぁ、もちろん知っているとも」

「だったらっ!」

「だから使った。その方が面白い、だろう」

「あなたは……」

「いいねぇ、本気の怒りの表情だ。久しぶりに見た」

「何を考えているんですか……あんなものを作って、レインを私の事情に巻き込むつもりですか?」

「ククク……アハハハハハハハハッッ!」

「何がおかしいんですか」

「これが笑わずにいられるわけがないだろう。レインを巻き込むつもり? あぁそうだね。巻き込むつもりさ。そもそも、君が従者に選んだ時点で巻き込まないという選択肢はないんだよ」

「…………」

「君の秘密も、いつまでも隠し通せるものだと思わない方がいい。誰かの口からバレるのが嫌なら、自分の口からしっかりと伝えていくことだね」

「私は……」

「怖いかい? 真実を伝えるのが」

「……私に怖いモノなんてありません」

「クハハハハッ、とてもそう思っているとは思えない表情だね。彼を失うのが怖いか……聖女様も一人の乙女ということだ」

「っ……」

「そう怖い顔をしないでくれ。別に馬鹿にしてるわけじゃない。君に大事な人ができるというのは良いことだと思うよ」

「……レインは別に……そういうのでは……」

「自分の心を偽るものじゃあないよ。それで他の誰かにレインを取られるようなことになったらどうするんだい?」


 その言葉を聞いて、ユースティアは明らかに不機嫌そうな顔をする。


「むっ……レ、レインは私の従者です。他の誰かの所に行ったりなんてしません!」

「それは君の願望だろう。現実を見るべきだ。レインが従者だからと甘えてはいないかい? 無理難題をしつけていないかい?」

「うぐっ……」

「レインにだって選ぶ権利はある。もしこれからも一緒にいたいなら、レインに浮気されないように必死につなぎ止めておくことだね。話はそれだけかな?」

「……はい」

「だったらちょうどいい頃合いだ。レイン君も試射が終わった頃だろう。迎え行くとしようじゃないか」





□■□■□■□■□■□■□■□■□


 整備された《紅蓮・双牙》の試射を終えたレインは、迎えに来たユースティアと帰路に着いた。

 そのルーナル邸からの帰り道、レインは馬車の中で最後に渡された『罪丸』のことを考えていた。


「……なぁティア」

「なんだ?」

「これ……お前はどう思う?」

「それは使えるかどうかの話か? それとも使っていいのか悪いのかの話か?」

「両方だよ」

「なら私の答えは一つだ。知らん」

「知らんって……」

「知らないものは知らない。作ったのはルーナルだ。私にわかるわけないだろ。効果だってどうせまともに試せてないだろうしな」

「なんでだ?」

「なんでだって……当たり前だろ。その『罪丸』とやらはお前の魔人化を引き起こすために作られたものだ。そして、お前以外にそんな厄介なモノを抱えてるやつはいない。それでどうやって試せるっていうんだ」

「あ……そりゃそうか」

「少し考えればわかるだろこの馬鹿め」

「え、じゃあこれ……ルーナルさんが言ってた通りの効果かどうかもわからないってことか?」

「そういうことだ。お前以外の奴が飲んでも咎人堕ちするだけだろうしな。まぁあいつがそう言った以上、それなりの効果ではあるんだろうが。それも絶対じゃない」

「……マジか」

「結局のところ、レインがどうしたいかだ。それを信用して使うのも、使わずに捨てるのも自由だ。私は何も言わない。賛成も、反対もしない」

「…………」


 ユースティアはそう言ってレインのことを突き放す。しかしレインにもわかっていたことだ。結局は自分で判断するしかないことなのだ。レインの『魔人化』は諸刃の剣。強さと引き換えに危険を犯すことになる。それでも強さが必要になる場面は確実に来る。だがそれでも使用することに忌避感を覚えるのはレインが魔人のことを憎んでいるからだ。それだけじゃない。もし魔人化したまま戻れなくなったらという恐怖がずっとレインには付きまとっていた。

 そんなレインの様子を見ていたユースティアがポツリと口を開く。


「あんまり考え込みすぎるなよ」

「え?」

「どうせ考えたって結論なんかでないんだ。それにお前はもしもの状況になったら後先考えずに動く大馬鹿だ。真面目に考えるだけ無駄だ。手札が一つ増えた程度に思ってればいい。それに……それに、もしお前に何かあっても……私が救ってやる」

「ティア……」

「そんな当たり前のことを言わせるなこのバカ、馬鹿、大馬鹿め」


 そう言ってユースティアはそっぽを向く。その耳が赤くなっていたのはレインの見間違いではないだろう。


「そうだな。その通りだ……ありがとな、ティア」

「……ふん」



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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