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罪喰らいの聖女  作者: ジータ
第二章 最強聖女と偽りの聖女
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第6話 発明家ルーナル

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 サレンからの報告を最後に、聖女会合を終了したユースティア達は部屋を出て揃って歩いていた。


「うーん、疲れたー。今日はいつもより長かったしねー」

「ん、疲れた」

「カルラは途中から眠たそうでしたね」

「眠たそうじゃない。眠かった」

「聖女としての意識が足りませんわよ。むしろ今までが短すぎたくらいですわ」

「あれ以上長いとか……勘弁」

「サレンも少し疲れたです……」

「揃いも揃って……足りませんわ——ん? あの方、あなたの従者ではありません?」


 先頭を歩いていたミューラが視線に気づき、ユースティアに向けて言う。その先にいたのはミューラの言う通り従者であるレインだった。


「えぇ、そうです。よくわかりましたね」

「バカにしてますの? もう何度か会ってますもの。いくらなんでも覚えますわ。確か名前は……レノン?」

「レインです」

「も、もちろん覚えてましたわ! ただ言い間違えただけです! それに妬ましいですわ……わたくしだってまだ従者を選んでないというのに、あなただけ従者がいるなんて」

「それなら従者を選べばいいだけでは?」

「わたくしに相応しい人がいないだけですわ!」

「あはは、ミューラの従者になるって大変そー」

「そんなことはありませんわ」

「えー、じゃあミューラが思う従者の最低条件みたいなの教えてよ」

「本当に大したものではありませんわよ? 最低限の教養を持っていること。人前に出るに相応しい恰好をできること。性別は問いませんわね。わたくしに相応しいのであれば男の方でも女の方でも構いませんわ。もちろん平民か貴族かも関係ありません」

「それだけ? もっと厳しいかと思ってたんだけど。そんな条件なら満たしてる人いっぱいいそうだし」

「えぇ。この条件でしたら満たしている人はいましたわ。でも、最後の一つを満たせませんでしたの」

「最後の一つ?」

「わたくしを満足させるほどの強さを有していること。これが絶対の条件ですわ。せめて本気とは言わずとも、半分程度の力は引き出して欲しいものですわ」

「……それ無理じゃん」

「ですから困っているのですわ」

「私はレインを従者にしてみせる」

「それ私の前で言いますか?」

「本気だもの」

「カルラは相変わらずだねー。サレンは? 従者どうするとか決めてる?」

「サ、サレンはまだですぅ。で、でもせっかくなら優しい人を従者にしたいです」

「甘いですわよサレンさん。従者はもっとしっかりした基準で選ばなければ」

「あぅ、ご、ごめんなさいです……あ、でもそれならユースティアさんはどういう基準であの方を選んだんですか?」

「え? 私がレインを選んだ理由……ですか?」

「そういえば聞いたことありませんでしたわね。あの方強いんですの?」

「特別強い……ということはないですけど。でも……そうですね。私がレインを従者に選んだのは……」


 質問したサレンとミューラだけでなく、カルラも興味あり気にユースティアに視線を送る。


「秘密です」

「もう! ずるいですわよ! もったいぶらずに教えてくださいまし!」

「ダメです。これは私だけの秘密ですから」

「むぅ……ズルい」

「わ、私も知りたかったですぅ……」

「皆さんも従者を選ぶ時が来ればわかると思いますよ。それではレインを待たせているようなので私はこれで。サレン、先ほども言った通りまた明日私の家まで来てくださいね」

「わ、わかったです」


 結局最後までユースティアはレインを従者に選んだ理由を語らず、ミューラ達の元を離れてレインの元へと向かった。そのまま短く言葉を交わすと、並んで去っていく。

 それがミューラにはとても自然で、そうあることが当たり前であるかのように見えてしまった。


「妬ましいですわね……本当に」

「ミューラ何してるの? 早く行こー」

「わかってますわ」

「サレンお菓子食べたいですぅ」

「食堂に行けば何か貰えるんじゃない」





□■□■□■□■□■□■□■□■□


 買い物を終えたレインが贖罪教本部に戻って来るとちょうど聖女会合も終わった所だったようで、全員揃って歩いている所だった。聖女が全員揃って歩いていると、その迫力はなかなかのものだ。

 神々しい、というべきなのだろうか。いつも一緒にいるはずのユースティアでさえ別の次元の存在に見えてしまう。軽々しく声をかけることなどとてもできそうにない。

 下手に近づけばまた他の贖罪官達から顰蹙をもらいそうだとレインが頭を悩ませていると、先頭を歩いていたミューラと視線が合った。


「? 何話してるんだ?」


 さすがに距離があったので何を話しているかまでは聞こえなかったが、ユースティア達は何やらわいわいと盛り上がっている。しかしそれもすぐに終わり、ユースティアだけが離れてレインに近づいて来る。


「すいません、待たせてしまいましたか?」

「いえ、俺もちょうど今着いたところだったので。何の話してたんですか?」

「……レインには秘密です」

「なんですかそれ……」

「こちらにも色々とあるんですよ。さぁ、それじゃあ行きましょうか。ルーナルの所へ」

「……いよいよですか」

「そんなに気を張ることはないでしょう……とは、私も言えないですね」


 贖罪教本部を出たレインとユースティアはそのままの足でルーナルの家へと向かう。ルーナルの家は帝都にあるのだが、帝都の中でも人の少ない区画に家を構えていた。ルーナルの発明に巻き込まれて被害を受ける人を出さないための処置だ。

 馬車に乗ってルーナルの家の前までやってきたレインは思わずごくりと喉を鳴らす。そこに聳え立つルーナルの家。ユースティアの家よりも大きい。しかしそれもそのはずだ。ルーナルの家は発明所も兼ねているのだから。


「今回は何もない……のか?」

「そんなわけないだろ。あいつが何もしてないはずがない」

「だよなぁ……」


 ルーナルは訪問者に対して必ず何か仕掛けてくる。前回レイン達が訪問した際には門に近づくなり魔導人形の群れが襲いかかってきたのだ。しかもその強さは驚異的でユースティアが【罪姫(アトメント)】を使用するほどだった


「前回みたいなのは勘弁だぞ……」


 恐る恐るレインが門に近づくと、門の所に小さなボタンのようなものが置いてあった。それは前回までは無かったもので、近くには『用がある人は押してねー』と書いてあった。


「これ……押すのか? 嫌な予感しかしないんだけど……いやでも押すしかないか」


 門は固く閉ざされていて開く気配がない。意を決してレインはボタンを押す。何が起こるかと身構えるレインだが、ボタンは何の反応もしない。


「? なんだ。何も起きな——」

「レインッ!」

「へ?」


 レインが気を抜いたその瞬間、レインの立っていた地面がカッと光を放ち、レインは凄まじい轟音と共に光に飲み込まれる。

 突然のことに全く反応できなかったレイン。しかし、光りがおさまった後レインの体には傷一つ無かった。何が起きたのかわからなかったレインだが、周囲を見回して愕然とする。


「な、なんだこれ!」


 舗装された道路は完全に破壊され、見るも無残な姿へと変貌していた。


「って、なんで俺無傷なんだ?」


 道路を完全に破壊するほどの爆発でレインが無傷であるはずがなかった。レインは反応すらできなかったのだから。


「アハハハハッ! いやー、流石。すごい爆発だ」

「っ! ルーナルさん!」


 レインが呆然としていると、門が開いてその奥からルーナルが姿を現す。長い薄緑の髪はボサボサでまとめられておらず、着ている服も至る所が汚れている。よく見れば美人なのだが、そんな恰好のせいで損をしているタイプだ。年齢はレイン達よりも一つ上の18歳。まだうら若き発明家だ。


「魔力に反応して【爆炎魔法】が発動する仕掛けを作ったんだけどね。レインが魔力を封印に使ってることを忘れてたよ。あれのせいで反応しなかったんだ。だからまぁ手動で起爆したんだが……この規模は少し予想外だったかな? 込める魔力が多すぎた」

「ルーナル、私がいなかったらどうするつもりだったんですか」

「それは愚問だぞ。今日はお前達以外に来客の予定はなかったし、ここに近づく住民もいない。そしてユースティアがいて万が一が起こるはずもない。これは私なりの信頼さ。事実、期待通り君はレインを守った。お前達は傷一つなく、そして私は実験ができて満足。それでいいじゃないか」

「あなたという人は……」

「魔力反応は直前まで出ないように隠していたはずなんだがね。ユースティア、君は魔力を感知するとほぼ同時にレインに【防護魔法】を使った。流石の一言さ。並みの人間では反応もできずに爆発に呑まれるだけだ。次はもっといい仕掛けを用意しておくよ」

「別に望んでませんから。しないでください」

「そう冷たいことを言うな。これも私の楽しみなんだ。さぁ二人とも中に入るといい。茶くらいは出そうじゃないか」


 これこそが発明家ルーナル。ユースティアでも手を焼く、奇人天才発明家だった。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

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それではまた次回もよろしくお願いします!

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